何度か野宿をしながらお城へと向かった。
移動中は今までの日々が嘘のように何の憂いもなく進むことができた。それはこの子達がとても頼りになるから。みんな強いから安心して眠れる。
そんな子達が何人もいるのだから、本当に心強い。
スーちゃんももちろん一緒。地面で跳ねたり話したりしなければ音はしないし、お願いを守って隠れてくれている。お利口さんだ。
だからか、今のところは勇蔵様たちが気づいていない。恐らくだけれど。そんな素振りがないから、ってだけだからそこまで自信はないんだけれど。それでも、今のところ言及はされていない。
「もうあと僅かですよ、姫様。そろそろ見えてくるはずです」
ミーティアちゃんが隣に寄って話しかけてくれる。これまでの疲労は顔色からはとても見えない。むしろどこか揚々としている気がするわ。
──若いっていいわねぇ、なんてほのぼのとしてしまう。いっそ輝いて見えるもの。
「勇者。あぁ、じゃなくて……ユゾー? 無事に着いたらアタシたちはどうするつもりかも話し合わないといけないわね」
「……ああ、そうだね」
「魔王を倒すのが旅の主題だと聞いたが。何を話し合う気だ?」
「姫様を救い出し、無事お届けする事が王国騎士としての使命です」
「……ってコもいるから。色々と話し合わないといけないのよぉ」
目の前で会話が飛び交う。
四人が旅を始めた目的は分かれているみたい。私が捕らわれている間に起こった事は私では詳しくはわからない。
口を挟まずに聞いていると、同じく話に入れないでいるブラッド様が目に入った。静かに耳を傾けて何かを凝視している。視線の先を辿ってみると、レイラ様がいた。正確にはレイラ様の耳に注がれている。
レイラ様の耳は横に長くて先がやや尖っている。映画にでも出てきそうな特別な耳。
初めて見るから気になっているのかしら。そうだとしたら、好奇心溢れる子供みたいで微笑ましい。
「あと、肝心の魔王の居場所も未だにわかっていない」
「ここまで判然としないままですからね。一体どこにいるのか」
当のレイラ様は、最初に話に入ってからは話を聞くだけに徹している。矢庭に、レイラ様が顔を上げた。遠くを見つめて、眉間に皺を寄せる。
「近くにはいそうだな」
そう呟いた理由だと思われる眼界を、つられるようにして見れば、黒煙が立ち上っていた。今私達が向かっている方角から──アレキサンドリアから、天に向かって煙が高く上がっている。ボヤ程度の火ではない事は誰の目にも明らかで。何が起きているのか想像に易かった。
「アレキサンドリアが……!」
「急ぎましょう」
「姫様、お手を!」
「え、ええ」
ミーティアちゃんが片手を手の近くに差し出してくれて、反射的に体がミーティアちゃんの手に手を乗せる。他の人達が走り出す中、手を握られて、先を行くミーティアちゃんに続いた。