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7-3




 相好を崩す女性と別れて、途方に暮れる。どうしようかしら。今はアレキサンドリア領なのだし、向かいたい気も。いえ――



「勇者様と、合流しないと」

「アリー?」



 マントの下から声をかけられる。周囲を見て、路地へと入った。静かにする約束を破ってでもスーちゃんが何か言いたそうだったから。



「どうしたの?」

「アリー、勇者に会う?」

「そうよ」

「勇者に会う、ダメ! アリー、危険!」

「……大丈夫よ。会ったら帰るだけだから」



 スーちゃんは一生懸命危険を訴えている。お友達を無くしたんだもの。スーちゃんがそう思うのも仕方がないわ。

 手のひらで撫でれば、手にぴたりとくっついた。怒っているという訳ではなくて、心配してくれているみたい。



「いつの日か、平和になって皆で遊びたいわね」

「……みんな、遊ぶ?」

「そうよ。スーちゃんや、他のスライムの子達も一緒よ」

「仲間、一緒? 遊ぶー!」

「今のうちに何をするか考えておかないとね」



 あやとりやお手玉は難しいし、独楽はあるか怪しいし。いえ、たくさん居るならボールを投げ合うだけでも楽しいかもしれないわ。

 スライム達がボールを投げ合って遊ぶ光景は想像するだけでも可愛らしいわね。

 大勢のスライムが跳ねてボールを投げて――――ああ、アルラウネの子がイタズラを!

 そうだわ。想像の通り、あの子が来るなら地面にお絵描きとかもいいわね。他のスライム達には退屈かしら。実現する時が近付いたら考えないと。

 今は、元気になったこの子ね。勇者様御一行は見付からないし、先にこの子にご褒美をあげなくっちゃ。



 再び肩で静かに待機し始めたスーちゃんから手を離して路地から出る。案内板を見ながら一つのお店に入った。店の棚や台の上には商品が置かれている。スーちゃんがよく食べていた種もいくつか売っていた。どれも金一枚で、ルトナークにあったお店よりも安いわ。



「どうしようかしら……。風足の種?」



 見たことのない物もあるわ。スーちゃんに訊くわけにはいかない。ご褒美のおやつなのだし、もう買ってしまいましょう。風足の種も含めて種や木の実を買った。金貨が全て無くなってしまったけれど。

 人通りがある場所から離れて、人気のない場所に足を運ぶ。案内板も立てられていない場所。人工的ではない光と、今は使われていなさそうな古びた建物しかない。

 建物の裏に回れば、草の絨毯がある。建物のところにもあって、伸び放題になっているわ。これなら大丈夫そうね。

 雑草の上に座って、両手でスーちゃんを膝に降ろす。買ったものを早速与えた。



「たくさんお食べ」

「種、食べる!」

「それほど数がある訳ではないけれど、好きなだけ食べてね」



 全て一度にではなく、一つずつ体内に取り込んで消化している。何か他にもご褒美になるものがあったらいいのだけど。今の状態では出来ない事が多いわね。

 それにしても結局これはなんなのかしら。金貨で買うもので、けれど種や木の実。嗜好品なのかしら。



「お城に帰ったら、色々と調べないとね」



 食べているスーちゃんを撫でる。スーちゃんは最後の一つを食べているところだった。カスもなく綺麗に全て食べ終わるとピョンピョンといつも通り跳ね始めた。


 スーちゃんは嫌がるだろうけれど、合流しない訳にはいかないわ。



 ──勇者様達は今一体どちらに……?






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