みんなを家に案内にして、一応不足が無いか中を見てもらう。
「うわー…意外と立派だね!」
「ええ。3人なら広さも十分だわ」
「なんだか温かい感じがする良いお家ね」
と言ってみんな差し当たって足りない物は無いと言ってくれたので、安心して、まずはリビングに設えてあったソファに腰を下ろした。
やがて、アンナさんがお茶の道具とお茶菓子を持ってきてくれたのでユリカちゃんとアンナさんもまじえてお茶にする。
やがて、アイカとユナがユリカちゃんと庭で遊び始め、私たちはそれを見守った。
「楽しくなりそうね」
とベルがつぶやく。
私も、
「ええ。楽しくなりそうだわ」
とつぶやき返すと、お互いに見つめ合って微笑んだ。
初夏の日差しが差し込む庭でキャッキャとはしゃぐ3人を見つめる。
すると、しばらくして、少し息を切らしながらみんなが戻って来て、
「ねぇ、バーベキューするの?」
とアイカとユリカちゃんがキラキラとした目で聞いてきた。
「あはは。そうだったわね。どうする?今夜さっそくしちゃおっか?」
という私の提案に、
「「やったー!」」
と2人から同時に賛成の声が上がる。
「あらあら。じゃぁ、さっそくお肉とお野菜の準備をしなくっちゃいけないわね」
と笑顔でアンナさんが席を立ち、
「あ、私も手伝うよ」
と言って、私たち3人はいったん家に戻ることにした。
商店街で適当に食材を買い、
「あのね、今度アイカお姉ちゃんからかけっこが上手になる方法を教えてもらうことになったんだよ」
と嬉しそうに話すユリカちゃんの手を両側から私とアンナさんが握って、いつものあぜ道を歩く。
「よかったわねぇ」
とアンナさんが言うと、
「うん!その次はユナお姉ちゃんにお人形遊びをしてもらうの」
と、もうさっそく次の約束があることを嬉しそうに話してくれた。
「あはは。それは楽しそうね」
と私が言うと、ユリカちゃんは、
「うん。ジルお姉ちゃんも一緒だよね?」
と、さもそうするのが当たり前のような感じで私に聞いてきた。
私はもちろん、
「うん。いいよ」
と答える。
するとユリカちゃんは、また、
「やったー!」
と言って、楽しそうに私たちとつないでいる手をブンブンと嬉しそうに振った。
家に戻り、アンナさんと協力して肉や野菜を切る。
ユリカちゃんもお手伝いをしたそうにしていたが、さすがに包丁は危ないので、切った肉や野菜をお皿に盛ってもらう係をお願いした。
定番の串も作る。
これはケガをしないように私が見守りながらユリカちゃんにも手伝ってもらった。
出来上がった食材の量を見て、ユリカちゃんが、
「すっごーい…」
と目を丸くする。
私がその驚きに、
「あはは。アイカがたくさん食べるから大丈夫よ」
と笑顔で答えると、ユリカちゃんは目をさらに見開いて、
「アイカお姉ちゃんってすごいんだね」
となんだか感心したようにそう言った。
「うふふ。ユリカもたくさん食べて大きくならないとね」
とアンナさんが笑う。
「うん。アイカお姉ちゃんに負けないくらい頑張る!」
と言って意気込むユリカちゃんに私は、
「あはは。アイカほどじゃなくてもいいけど、たくさん食べるのはいいことよ」
と言って笑いながら、頭を撫でてあげた。
「じゃぁ、さっそく持っていきましょうか」
というアンナさんの声で、みんなで手分けして食材を持ち家を出る。
この前とはちょっと違う「バーベキューの歌」を楽しそうに歌うユリカちゃんを先頭に、私たちはみんなの家を目指した。
みんなの家に着くと、みんなに声を掛けてさっそく焼き台の準備をする。
みんなでわいわいと炭を熾し、良い感じに網が温まってきたところでさっそく肉と野菜を焼き始めた。
「うわー…」
と興味津々で焼ける肉を見つめるユリカちゃんと、その横で同じようにウズウズとして焼き台を凝視しているアイカをみんなで微笑ましく見つめ、その時を待つ。
やがて、アンナさんが、
「あら、これなんてそろそろいいわよ」
と言って、まずはユリカちゃんに肉と野菜を取ってあげた。
すると、ユリカちゃんはさっそく食べようとしたが、ふと、私たちを見て、
「みんな一緒じゃないの?」
と聞いてくる。
そんなユリカちゃんにユナが、
「あら。ユリカちゃんはとっても優しいのね」
と言って、頭を撫でてやりながら、
「じゃぁ、みんなもそれぞれ取って」
と声を掛けた。
その声でみんな思い思いに肉や野菜を自分の皿に取る。
やがて、みんなの皿に焼けた肉や野菜が乗り、
「みんな準備はいい?」
というユナの声にうなずくと、一斉に、
「「「「「「いただきます!」」」」」」
と声をそろえてさっそくそれぞれが肉や野菜かぶりついた。
「おいひー!」
とユリカちゃんが声を上げる。
私たちもそれぞれに美味しいと言い合って、
「さぁ、じゃんじゃん焼くからじゃんじゃん食べてね」
というアンナさんの声に、
「「「「「はーい!」」」」」
とまるで子供のように返事をして、そこからはワイワイと食事を進めていった。
「なんか、お祭りみたいで楽しいね」
と言ってユリカちゃんが笑う。
「そうだね。なんかお祭りみたいだね」
と私が答えると、その横からユナが、
「お祭りって?」
と聞いてきた。
その質問に私は、
「ああ。この村の秋祭りはね、みんなで広場に集まって芋煮とかお肉を焼いたりしてみんなで宴会みたいな感じになるのよ」
と、去年のことをなんとなく思い出しながら答える。
「え?なにそれ、楽しそう!」
とアイカが一番に食いついてきた。
「うふふ。アイカにはうってつけのお祭りね」
とベルが笑い、みんなも笑う。
楽しい声が響き、チト村の穏やかな夕暮れの空に溶けていった。
翌朝。
いつものようにジミーを訪ね、
「おはよう」
「おう。みんなはどうだった?」
「気に入ってくれたみたいよ」
「そいつぁよかったな」
という会話を交わしてさっそく稽古を始める。
一通りの型を繰り返して体を温めたらさっそく手合わせ。
いつものように一本も取れず、
(惜しい所まではいくのに…)
と悔しく思いつつ、
「ねぇ」
と声を掛け、私が今悩んでいる例の聖魔法を練って一気に放つという事の練習をしてもいい場所はないかと聞いてみた。
「うーん…」
とジミーが考え込む。
(ちょっと無茶なお願いだったかしら?)
と思いつつ、一応、その答えを待っていると、ジミーは、
「ここからちょっと歩いたところの空き地なんてどうだ?ほら、ちょっと前まで大工の連中が資材置き場にしてた所だ。あそこならしばらく使う予定はないって言ってたし、大工のやつらに曲がっちまった丸太を一本もらってきて、荒縄でも巻いて立てておけばいい的になるだろう。今度頼んでおいてやるよ」
と言ってくれた。
「ありがとう。助かるわ」
と礼を言うと、ジミーは、
「なに、いいさ。ついでにちょっと整地しおいてやるよ。出来上がったら今度から稽古はそっちでやろう。ここはちょいと手狭だと思い始めてた所だしな」
と何でもないことのように言ってくれる。
私はその言葉に感謝しつつ、ついでに、
「ねぇ、その空き地ってみんなにも使ってもらっていいかな?」
と聞いてみた。
「ん?ああ、いいんじゃないか?まぁ、整地は村のおっちゃんらにも手伝ってもらわなきゃいかんから1か月はかかるが、大丈夫か?」
と言うジミーにまた軽く礼を言って稽古を終える。
私はなんともワクワクとした気持ちでアンナさんの家に戻って行った。
さっそくいつものように昼食をとると、友達と一緒に遊んでくるというユリカちゃんを見送ってそのままみんなの家に向かう。
(みんな喜んでくれるかしら?…ベルは間違いなく喜んでくれるわよね)
と、少しにやけながらあぜ道を歩く。
これからはみんなと一緒に稽古が出来ると思うと、なんとも言えず嬉しい気持ちが込み上げてきた。
(ふふっ。やっぱり仲間っていいな)
そんなことを思いながら初夏の風を背に受けて少し足を速める。
いつの間にか強くなり始めた初夏の眩い光を浴びて私はみんなの家へと急いだ。