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第44話バンとマリーとリーファちゃん04

翌朝。

いつもの通りに稽古をしようと裏庭にでる。

すると、そこにはローゼリアがいた。

いつもの執事服を簡素にした感じの女性用スーツのようなものではなく、騎士の訓練着のようなものを着て、手には木剣を持っている。

「おはよう」

私が挨拶をすると、ローゼリアは、

「おはようございます!本日はよろしくお願いいたします!」

といつものように元気に挨拶をしてくれた。

「ああ、たいしたもんじゃないが、とりあえず見ていてくれ。いつもやってるのは型の稽古だ。私の師匠曰く、型にはすべての基本がつまっているらしい。だから、目の前に相手がいることを想像して集中力を高め、刀を振る。ただそれだけを毎日繰り返すんだ」

と言って、いつもどんな稽古をしているのかを説明する。

「なるほど。標的の丸太などは使わないのですね」

そう質問してくるローゼリアに私は、

「ああ、私の場合は重みで押しつぶすように剣を叩きつけるんじゃなく、斬ることに主眼を置いているからな。丸太があるとその感覚がつかみづらくなって逆効果なんだ」

と刀と剣の違いを頭に入れながらそう説明した。

私のそんな説明にローゼリアはうなずきながらも、次に、

「なるほど、参考になります。…あと、変わった形の木剣ですが、それはバンドール様がお考えになったものですか?」

と私の刀に興味を示してくる。

「いや、これは師匠にもらったものだ。刀と呼んでいる。実物は片刃だが反りが合って強靭で折れにくい。さっきも言ったように斬ることに特化した得物だな」

と私が説明するとローゼリアはまた、なるほどと言って私が手にしている木刀をまじまじと見つめてきた。

「まぁ、とりあえず見てくれ。その方が早い」

私はそう言ってさっそくいつもの稽古を始める。

いつものようにまずは丹田に気をため、ゆっくりと呼吸を整えると、目を閉じ、目に魔獣の気配を想像しながらまずはゆっくりとかつ正確に刀を振った。

そして、徐々に魔獣の数を増やし、体捌きを入れながらより実践的な動きへと移行する。

そして、最後に裂ぱくの気合を込めて、必殺の一撃を繰り出すと残心を取って型を終えた。

その間15分ほどだろうか。

集中しているとどうも時間の感覚がおかしくなるから正確にはわからないが、おそらくそんなものだろう。

いつもはそれを2,3度繰り返すが、やはり今日もうまく集中できない。

(これでは何度繰り返しても意味がないな。やはりもう一度基礎から作り直そう。でなければ、とてもじゃないが他人に見せられたものじゃない)

そう思ってとりあえず、後ろで見ていたローゼリアを振り返る。

するとそこには、あっけにとられたような顔でまじまじと私を見つめるローゼリアの姿があった。

「すまんな。まだ病み上がりでどうにも調子が出ない。やはりこんな体たらくじゃなんの参考にもならなかっただろう」

私がそう言うとローゼリアは、はっとしたような顔で、

「い、いえ!素晴らしいものを見せていただきました!」

と言うローゼリアに、私はまた、今日は本調子では無かったと伝える。

すると、ローゼリアは、

「本調子でなくて、あの凄まじい集中を…」

と、おそらく最初に私が丹田で気を練り集中を高めていたことに対する驚きを口にした。

そんな質問に私は、

「ああ、あれはたいしたことじゃないぞ。ほら、最近リーファ先生がマリーに施してる治療があるだろ?あれと似たようなものだ」

と答える。

「あれ…ですか?」

と、ぽかんとするローゼリアに、私は、軽くうなずき、

「ああ、そうだ。たしか、リーファ先生はちょっと変わった形の魔力操作だと言っていたが、私にはよくわからんとにかく気を練るんだ」

と答えるが、ローゼリアは頭に疑問符を浮かべながら、

「な、なるほど…?」

と言いながらも首を傾げた。

「まぁ、最初はわかりづらいかもしれんが、訓練次第でおそらく誰でもできるようになるぞ?」

と私が言うと、ローゼリアは、

「ほ、本当ですか!?」

と、やや大袈裟に驚く。

私はそんなローゼリアの裏表の無さそうな表情を微笑ましく思いながら、

「ああ。まぁいきなりは難しいかもしれないが、まずは丹田、へそのした辺りだな、その辺りに魔力を集中させる感覚をつかむことと、あとはできれば毎日型の稽古を繰り返すことだ。そうすればそのうちできるようになる」

と教えてやった。

「ありがとうございます。やってみます!」

そう言って、ローゼリアは剣を構えようとしたが、私は気になって、

「おい、時間はいいのか?」

と聞く。

すると、

「あっ!そうでした。そろそろ朝食の準備をしないと…。また、伺ってもかまいませんでしょうか?その時にはぜひ少し御指南を」

と言って、ローゼリアは頭を下げてきた。

「ああ、かまわんぞ。いつでもくるといい」

「ありがとうございます。では失礼いたします」

ローゼリアは再び深々と礼をすると、急いで離れの方へと向かっていく。

(なんとも真っ直ぐな子だ)

そう思っ私は少し笑みをこぼすが、再び木刀を構えるとまた、基本の型を一から確認するように振り始めた。

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