目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第40話村長、熱を出す04

~~村長視点に戻ります~~

調子を取り戻したとはいえ、まだ安静だと言われている私は今日も、ベットの上でルビーやサファイアとじゃれている。

するとそこへ、おそらくマリーの診察を終えたのであろうリーファ先生がやってきた。

私が、

「やぁ。お疲れ様だな」

と声を掛けると、

「ああ。ちょっと話があるんだがいいかい?」

と言う。

(はて。なんだろうか?)

と思いつつも、私が、

「ああ。構わんが…」

と言うとリーファ先生は、ルビーとサファイアをに向かって軽く撫でてやりながら、

「これからバン君と診察を兼ねて話があるんだ、少し長くなると思うから、ドーラさんにおやつをもらって食べてくるといい」

と言い、2人が、

「きゃん!」(わかった!)

「にぃ!」(おやつー!)

と言ってトタトタと走って出て行くと、さっそく私の横に腰掛た。

「やぁ、すまんね。家族団らんを邪魔して」

と苦笑しながら言うリーファ先生に、私は、

「いや、別にいいさ。それより話ってのは?」

と聞く。

すると、リーファ先生は、

「ああ、うんそうだね。ちょっと君の昔話を聞きたいんだ」

と言った。

「…というと?」

と、私が頭に疑問符を浮かべながら聞き返すと、リーファ先生は、

「うん。君の修行…といっていいのかな?その身体強化みたいなやつを会得するのにどんな訓練をしたのかを教えてほしくてね。きっとそれがマリー…マルグレーテ嬢の治療に役立つと思うんだ」

と言う。

リーファ先生の顔はこれまでになく真剣だ。

私は、これはきっとなにか重大な意味があることなのだろうと思いつつも、

「…うーん…」

と言ってうなってしまった。

訓練と言っても、集中して刀を振れ、とか目の前の敵を想像して型に打ち込めとかそう言う事ばかり言われていたような気がするし、実際にそれだけしかやっていない。

だから私は、

「そう言われてもなぁ…。実は、そんなに特別なことはしてない。ただ、とにかく集中して刀を振り続けろと言われただけだった」

と正直に答える。

そんな答えに対してリーファ先生は、少し考え込み、

「…そうか。しかし、その集中って部分でなにかコツみたいなことを教わらなかったかい?」

とさらに質問してきた。

私は、

「うーん…」

と言って再びうなりながら昔の記憶を丹念に思い返してみる。

すると、

(ああ、そう言えば…。あれは、訓練を始めたばかりのころだ。師匠が気を溜める手本を見せてくれたな。そして、やってみろと言われて…当然うまくできなくて…何度か繰り返して…)

と、なんとなく、そんな記憶が思い起こされ、

「そういえば、最初は師匠に少し手伝ってもらいながら気を溜める感覚を覚えていって、そのうち段々とコツがつかめるようになったんだった…」

私がそう答えると、

「それだよ!で、どんな感じでやっていたんだい?」

と言ってリーファ先生が珍しく興奮したように息せき切ってそう聞いてきた。

そんなリーファ先生の様子に、私は少し驚いて少ししどろもどろになりながらも、

「ああ…、たしか、最初は背中のあたりに手を当てられて…そのうち胸のあたりが温かくなるのを感じたら…えっと…、ああ、そうそう、その次は向かい合わせになって手のひらを合わせて呼吸を合わせたりしてたな…。といっても、一日にほんの数分だったし、ひと月、いや10日くらいしかやらなかったんじゃないか?そのくらいでコツがつかめたから、あとは自分で工夫しながらやって、それを見てもらっていたって感じだ」

と伝える。

すると、リーファ先生は私にぐっと顔を近づけて、

「なるほど…よし、さっそくそれをマリーにもやってみよう!いや、それはまずいか…。うん、そうだな。まずは私に教えてくれ。どんなものなのか知りたい!」

と目をキラキラさせながらそう言い、そんなリーファ先生に私は妙にドギマギしながらも、

「あ、ああ」

とたどたどしくそう答えた。

「よし、どうすればいい?えっと、まずは背中だったな。よし、触ってくれ!」

と言って、リーファ先生は勢いよくシャツをまくろうとする。

私はまたドギマギして、

「いやいや、服の上からだ!」

と言って止めた。

「そうなのかい?まぁ、いい。とりあえずやってくれ」

と言って、リーファ先生は素直に私に背中を向ける。

私はなぜか少し緊張して、恐る恐るリーファ先生の背中に手を当て、

「まずは、息を整えてへその下辺りに気…魔力が集中させてみてくれ」

と言うと、リーファ先生はすぐに息を整え、魔力を集中させ始めた。

驚くことに、私にもそれがはっきりと分かる。

リーファ先生の背中から私の手に肌のそれとは違う温もりが伝わってきて、まるで私の手が内側から温めているような感じがした。

私が、

「さすがだな…。そのままその気を全身に行き渡らせるように少しずつ解き放っていくんだ。そうだな、胸の奥からじんわりと全身に広がるような感覚って言ったらわかるか?」

と言うと、リーファ先生は、

「ああ、なんとなく…。でもちょっと難しいな…。よし、しばらく集中するから、君も手伝ってくれ。おそらくお互いの呼吸を合わせたほうが上手くいくはずだ」

と言って目を閉じる。

私もそれに合わせて目を閉じ、いつものように丹田に気をためると、リーファ先生の魔力を感じるように集中していった。

すると、いつものように時間がゆっくりと流れるような感覚に陥る。

そして、目の前に無数の線が絡み合って、その中を青白い何かが流れているのが見えてきた。

(…なんだこれは?)

私が一瞬、そう疑問に思うと、それはぼんやりとして消えていく。

(いかん!集中を切らすな…。よくわからんが、このまま集中してこの青白い線をたどっていくのが正解だ)

直感的にそう思った私は再び集中力を増し、目の前に見えるその青白い線に全神経を集中してその中を巡る光の粒のようなものをたどっていくことをイメージした。

やがて、その流れの全体像が見えてくる。

すると、その流れの一部が、詰まっているというか滞っているのが見えた。

(…なんだ?よくわからんが、ここで流れがとどまったり遅くなったりしてはいかんような気がする)

私はまた直観的にそう思ってその部分に集中する。

そうしていると、やがてその部分も他の所と同じように流れ始めた。

(よし。あとはこの流れをさらにたどって行けば…)

そう思ったところで、

「…くん…、ンくん…、バン君!」

というリーファ先生の声が聞こえて、ふっと集中が切れた。

現実に引き戻され、目の前を見ると、リーファ先生は汗だくで息を切らしている。

「おい、大丈夫か?なにがあった!?」

私が慌ててそう聞くと、

「…おいおい…。君は…いつも…、こんなことを…やって…いるのかい?」

と時々ぜぇぜぇと言いながら、リーファ先生がそう聞いてきたが、

「ん?」

私は全く意味が分からず、思わず首をかしげてしまった。

「いや、すごいよバン君!すごい魔力循環だね。私よりよほど上手い…。確かにかなり体に負担がかかったが、妙に体がすっきりしている…うん、具体的に言うと肩が軽いね。一体をしたんだい?」

と、リーファ先生が聞いてくるが、私はまた困ってしまう。

何しろ感覚的にやっていることを言語化するのは難しい。

しかし私は、なんとか言葉を選びながら、

「えっと、集中してるとだな…そのなんというか、そのうち青白い線がいっぱい見えた。で、その線の中を流れているものがあって、その流れを良くして辿って行った方がいいような気がしたんだ。で、それをやっていたら、流れが滞っているようなところがあったから、それをちゃんと流した方がいいような気がしてな?それをやったんだが…いかんかったか?」

と見たまま、というよりも感じたままを伝えた。

すると、リーファ先生は、

「いや、素晴らしい!素晴らしいよ、バン君。これは想像以上だ。よし、次は…。いや、今日はもうやめておこう。さすがに身が持たん。よし、明日からも少しずつ練習していこう。おそらく私も2,3日でコツがつかめるだろうからね。明日からもよろしく頼むよ!」

と興奮したようにそう言って、リーファ先生は部屋を出ていこうとする。

しかしそこで慌てて私の方へ振り返り、

「ああ、薬は後で届けるよ。ともかく今日安静にしておくように」

と言って、今度こそ部屋を出て行った。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?