「勇利先輩……?」
真冬に照明も暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた俺、勇利渉は、背後から突然名前を呼ばれて後ろを振り向くと、見覚えのある姿に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。
(どうして……)
声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。
「東谷……」
俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。
背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツに身を包み、落ち着いた色のブラウンカラーの髪が目鼻立ちの整った顔を引き立たせて、誰もが目を惹くルックスは最後に会った三年前となんら変わっていなかった。
そう、最後に過ごしたあの夜から空白の三年間なんて、まるでなかったかのように。