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『パディントン』

【作品情報】

原題:Paddington

製作:2014年/95分/イギリス・フランス

監督:ポール・キング

出演:ベン・ウィショー/ヒュー・ボネヴィル/サリー・ホーキンス

ジャンル:よい子は絶対マネすんなよ!なほのぼのファミリー映画

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

暗黒の地ペルーで、叔父夫妻と暮らすチビグマ君がいた。

叔父夫妻はかつて40年前にイギリス人冒険家と仲良くなり、別れ際に

「ロンドンは人も優しいし雨も多いし、いいところだよ。もしもロンドンに来たら、私の家にも必ず顔を出してくれ!」

という約束を交わしていた。


しかしある日ペルーを大地震が襲い、叔父が巻き込まれて亡くなってしまった。

叔母のルーシーは、

「私はもうババアなので、老グマホームに入ろうと思うの。でもお前は若いから、ロンドンへ行ってみなさい。そして冒険家に家を与えてもらうのですよ」

と、チビグマ君をロンドン行きの船へとこっそり乗せた。つまり密航です。


犯罪スレスレどころか犯罪ド真ん中でイギリス入りしたチビグマ君だったが、現代ロンドンっ子は超淡白。誰も彼を見ようともしない。


理想と現実の落差に打ちひしがれるチビグマ君を、ブラウン一家が目に留めた。

超が付く心配性の父ヘンリーは無視しようとするが、お人好しな母メアリーがチビグマ君の保護を提案。いや……この場合、捕獲……?


そしてチビグマ君は、彼が立ち尽くしていた駅の名前の「パディントン」で呼ばれるように。本名は、人間にはちょっと発音が難しいクマ語だから、仕方ないよね。


色々間違ったロンドン知識+野生の本能+純真無垢という恐ろしい3点セットを内に秘めしパディントンは、もちろんブラウン邸でも到着早々にやらかす。

この一晩で、ヘンリーパッパの寿命メーターは5年ぐらい減ったと思うんだ。


だが、彼が被っていた帽子――冒険家が叔父にプレゼントした思い出の品の詳細を調べるべく、アンティークショップへ向かった際に偶然スリを捕まえて、パディントンは一躍ヒーローに。


これがきっかけでブラウン一家の子供2人とも仲良くなり、最終的にヘンリーパッパともマブダチに。


だが、そんな彼の動向を追い続ける女性が、一人いた。

希少動物を違法に捕まえては剥製にしているミリセント(博物館勤務)は、パディントンも博物館に飾ろうと画策しているのだ。


どうやらパディントンと因縁があるらしいミリセントの魔の手がじわりじわりと忍び寄る中、パディントンは冒険家と出会うことが出来るのだろうか。



【登場人物】

パディントン:

叔父夫妻の教育のおかげか、ちょいちょい野生がまろび出ながらも基本はピュアで礼儀正しい良い子。

が、人間社会の常識が「マーマレードサンドは完全栄養食」「ロンドンっ子は必ず挨拶する」ぐらいしかないので、行く先々で厄災をもたらしている。あとマーマレードは飲み物だと信じている。

でも可愛いので許しちゃう。濡れたツヤツヤのお鼻が特にいい。


ヘンリー:

子供が生まれるまではワイルドバイク乗りで、二児の父となった現在は安全第一の現場猫たちの理想像みたいなおじさん。仕事もリスク管理らしい。

小さいとはいえ危険生物なパディントンを家族内で唯一警戒しているものの、なんやかんやで一番体を張って彼に協力している。

どれぐらい張ってるかというと、セクシーな女装姿を披露するレベル。Fooh!


メアリー:

帽子を被って人語を解する危険生物を家に泊まらせる、肝が据わりまくったヘンリーの妻。小説の挿絵を描くイラストレーターさんで、自室の内装も、着ているお洋服もとんでもなくお洒落。真似したいです。

家を水没されかけてもパディントンを一切責めてなかったけど、さすがにちょっとは怒った方がいいと思う。


ジュディ:

ブラウン家の長女。思春期真っ只中で、新しい学校に馴染めるかと気を揉んではカリカリしがち。口癖が「キモい」だが、無軌道紳士なパディントンの影響で両親や弟との仲も改善していく。

なお外国語の習得が得意で、最終的にクマ語も話せるようになる。

将来は言語学界のパラダイムシフト的存在になりそう。


ジョナサン:

ブラウン家の長男で、宇宙飛行士に憧れる末っ子ボーイ。

自作の改造ロケットで飛ぼうとして大怪我&入院した過去があり、それ以来ヘンリーからは知育オモチャしか与えられていない。

が、妙に頭がいいため、実験セットに入っていた硝酸カリウムと硫黄で爆弾を作っている。もはや誰もこいつを止められないぜ。


バードさん:

ブラウン家の親戚らしい、一家のお掃除を担当している老婦人。最推しです。

パディントンにトレードマークの青コートを与えた、有能お掃除マンにして酒豪。

出番は少ないけど、誰よりもクールでカッコいい。壊れたバスタブを、軽やかにひっくり返して修理し始めた瞬間に「惚れた」と思いましたもの。

かつてMI6の凄腕スパイだった、とか言われても納得しちゃう。


ミリセント:

『ミッションインポッシブル』のイーサンみたいなポージングでブラウン家に侵入する、銃の腕前にも優れた博物館職員。

そして演じているのは、イーサンの中の人の元妻なので……よくやってくれたなぁ、となんか感動。あと、ゼロ距離でガス爆発に巻き込まれてもピンピンしている、ギャグマンガ界の住人みたいな防御力の持ち主。



【感想など】

本作の続編が『マッシブ・タレント』で絶賛されていたため、とりあえず観てみたところ……こんなとんでもない映画を、子ども向け作品だと決めつけ、10年以上侮り続けていただなんて……!私のバカ!

子ども向けどころか、老若男女問わず楽しめるヤツー!


これはファミリー映画ではなく、イギリス版吉本新喜劇です。

めっちゃ金がかかってて、めっちゃお洒落な新喜劇。

敵の末路の慈悲深さにはお子さんへの配慮があるものの、パディントンがやらかす一連の騒動はベッタベタなうえに「これ、子どもが真似したら地獄絵図じゃん」なパワフルさです。


もしも私がクソガキ時代にこれを観ていたら、確実に硝酸カリウムと硫黄を手に入れようと画策したはず。私には分かる。なにせクソガキだったから。

そんなわけで、多感なクソガキを身内に持つ親への配慮はゼロです。爆弾を作ろうと企む以外にも、風呂場をプールにしようとしたり、マーマレードを瓶ごと行ったキッズも、世界中に絶対いるだろ。

ジャムって、割と高いのよ……


それでいて、人語を解するクマという異物をすぐに受け入れられない愚かな人類の姿に、多様性を認められない人々への皮肉や、教訓的なものも薄っすら描かれておりまして。

パディントンのあかんトコだけ真似たキッズの悪行に、呆然とする大人たちが

「まあ、ね、うん……でもとても、いい映画ではあったよね……」

と遠い目でギリギリ許してくれる塩梅あんばいとなっております。実にあざとい。


現時点で2は未見であるものの、1でこんだけハチャメチャに面白いので、ムーンライト☆ブロマンス映画こと『マッシブ・タレント』での絶賛具合が過大評価なわけなかろう、と思わずにはいられません。

2も拝見するのが、今から楽しみです。

とんでもなくチョイ役ではあったのですが、パディントンを雨宿りさせてあげたうえに、サンドイッチ・お菓子・お茶までサーブしてあげた近衛兵さんが再登場してくれると嬉しいなと思ったり。


ところで――なんでペルーについて語る時、誰もが必ず「暗黒の地」って枕詞を付けているの?

クマ以外に魔王とか、邪悪な竜でも住んでますのん?

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