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『ロスト・キング 500年越しの運命』

【作品情報】

原題:The Lost King

製作:2022年/108分/イギリス

監督:スティーヴン・フリアーズ

出演:サリー・ホーキンス/スティーヴ・クーガン/ハリー・ロイド

ジャンル:ドラマティック推し活ライフ

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

職場では薄毛の上司から軽んじられ、厄介な持病にも悩まされ、元夫と息子2人を挟んでのギクシャク生活にグッタリのフィリッパ。


そんな彼女はある日、長男と一緒に観に行ったシェイクスピアの戯曲「リチャード三世」の舞台にて、運命の出会いを果たす。

生まれつきの身体障害によって周囲から嫌われ、冷酷非道な人間になってしまったリチャード3世の不遇っぷりに、

「分かる〜!」

と思い切り共感しちゃったのだ。


その夜から度々リチャード3世の幻または霊にストーキングされるようになり、とうとうリチャード3世沼にハマるフィリッパ。霊の粘り勝ちである。

しかし世間での彼の評価は、敵対していたテューダー朝のネガキャンの甲斐もあって「甥を殺して王位を奪った鬼畜野郎」である。

推し活はイバラの道だ。


それでもフィリッパはせっせと関連本を集め、彼の功績や逸話を調べていく。

またリチャード3世を推す同士とのオフ会にも馳せ参じ、そこで彼の墓がどこにあるのか現在も不明なのだと知った。


フィリッパはリチャード3世が埋葬されたと言われている修道院跡地を見つけ、彼の王位簒奪者という汚名をそそぐことを決意。

在野の歴史研究家に片っ端から取材を行い、古い歴史資料も漁りまくる。


そしてリチャード3世の霊に導かれるようにして、福祉施設の駐車場へとたどり着いた。ここに修道院があったに違いない――そう囁くのよ、推しのゴーストが。


熱烈プレゼンにより考古学者のバックリーの協力を得、彼が勤めるレスター大学からの資金援助も受けて駐車場の発掘作業を開始することに。

が、途中で資金援助を打ち切られてしまう。ファーック!これがアカハラか!


だが、推しに沼った戦士はこんなものでは終わらない。

リチャード3世に狂っている間に、なんでか関係が修復された元夫のジョンや息子の協力を得、更にはクラウドファンディングで集められた世界中の同担からの資金援助によって発掘作業を無事再開できたのだ。


そして彼女が駐車場へと導かれた時、彼の気配を感じた場所から人骨の一部が見つかった。

だがバックリーや大学の面々は、この骨はリチャード3世でなく修道士の骨だと主張。追加発掘を超渋る。

金出してるのはフィリッパネキやぞ!スポンサー様のご機嫌ぐらい取れや!



【登場人物】

フィリッパ:

筋痛性脳脊髄炎という厄介な難病に悩まされるマダム。なんでも疲労感や脱力感で日常生活を送るのも困難になるそうで……ひぇぇぇ……お労しや……

作中でもグッタリしていることが多いけれど、リチャード3世が絡むと行動力が半端ない。

最初は自身なさげなオドオド喋りだけど、段々ガン詰め出来るようになり、権威主義のファッキン・レスター大学の連中にも啖呵を切れるまでに進化する。

なお彼女お手製のレモンケーキはとっても美味しいみたい。食べたい。


リチャード3世:

フィリッパが沼った悲劇の国王であり、ケツアゴのイケメン。

日本では美貌の両性具有扱いも受けてるよね。

……まあ、アーサー王も美少女化しちゃう国なので……はい。

作中ではフィリッパの前に度々ってか、ほぼ常時現れており、おひとり様であちこち飛び回る彼女の相棒も兼任。

フィリッパのプレゼンテーションによると、印刷技術を支援したり「疑わしきは罰せず」の理念を打ち立てたり、むちゃくちゃ凄い人だった模様。そりゃ美人にもなるし、ネガキャン食らうわけだ。


ジョン:

フィリッパの元夫だけど、割とフィリッパ宅に入り浸っている。

本人はお肉大好きマンだが、出会い系で知り合った魚介類大好きのサラと途中までお試し交際中。

最初はリチャード狂いの元妻にドン引きだったけど、最終的にはこっそりクラウドファンディングにも参加してくれたり、愛が深い。


バックリー:

肉々しい考古学者。

アマチュア研究者のフィリッパを内心見下しつつも、自分もレスター大学からクビにされる寸前のため、彼女の発掘作戦に乗っかることに。

なおこいつのファーストネームもリチャードで、レスター大学にはもう1人リチャードがいる。リチャード3世を推す物語で、まさかの2連続リチャード被り……個人的に一番「ああ、実話だねぇ」と思ったところです。



【感想など】

Q:推しの墓参りをしたいのに、埋葬場所が分かりません。どうすればいいでしょう?

A:墓の場所を特定しろ!


――ということで、推しに沼って狂い抜いた末に歴史的発見までしちゃった、在野の研究者の実話を映画化した本作。

『ナショナルジオグラフィック』だかでお墓発見の記事を読んで以来、映画もずっと気になっておりました。リチャード3世をご存知でなくても、推しに狂った経験をお持ちの方は必見です。


もちろん実話をベースにしているので、世間の荒波に揉まれまくっての「腹立つぅぅぅー!」な出来事も多々あって。

特にレスター大学、マジ許すまじ。

資金提供も打ち切った挙句に、騙し討ちでお墓発見の手柄を横取りするという暴挙をかましています。こなくそー!


ビックリするぐらい悪辣に描かれているので「レスター大学に訴えられたりしてないのか?」と薄っすら不安になりましたが、こうして他国でも普通に上映・配信されてるので大丈夫みたいですね。

つまり横取りは事実なのかね、レスター大学よ……引くわぁ……


ただフィリッパはあくまでリチャード3世強火勢であり、彼女の最終目的は推しの墓参り&「簒奪者」という不当な肩書きを払しょくすること。

そう、一途なオタクは推しでの金儲けなんて度外視なんです。むしろお布施したいんです。尽くしたいんです。


そんなわけで自分はレスター大学から功績を簒奪されてしまったけれど、彼女も連中を切り捨て、講演という名の布教活動を続ける姿は溌剌としてとっても素敵でした。

沼ったついでに家族との絆も深まり同士もいっぱい出来たので、結果オーライでございますね。カッケー!


しかし推しというか好きな存在への愛情って、国を問わずとんでもねぇ原動力になるのね……もうさ、世界中の人間が誰か/何かを推すことで、世界平和も夢じゃないのでは?

私も引き続き、猫とヨッシーちゃんと蒼紫様に狂っていようと思います。

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