【作品情報】
原題:Misery
製作:1990年/108分/アメリカ
監督:ロブ・ライナー
出演:ジェームズ・カーン/キャシー・ベイツ/リチャード・ファーンズワース
ジャンル:バイオレンスラブコメ?いいえ、サイコホラーです
(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)
【ざっくりあらすじ】
ミザリーという女性が主人公を務める、ロマンス小説で人気作家となったポール・シェルダン。
しかし本人は
「俺、ロマンスおじさんで終わりたくないんだよ!」
と嘆いており、ミザリーを殺してシリーズを締めくくることにした。
そして雪深い田舎町のホテルで新作を書き終えて出版社へ向かう途中、吹雪によって自動車事故を起こしてしまった。
事故現場に居合わせた、元看護師のアニーというおばさんに助けてもらったポール。両足ベッキベキ+右腕脱臼という重傷だった彼を、献身的に看病してくれるアニー。
なんでもミザリーシリーズの大ファンだという。
また彼女によると雪で道路が通行止めになっており、電話も通じないため病院にも連れていけないらしい――のだが、なんか様子がおかしい。というかアニーが情緒不安定。
それでもポールのプレイボーイ仕草のおかげで、ギリギリ平穏な同居生活を送っていた2人だったが。
アニーが街でミザリーの最終巻を買った結果、そのギリギリチョップな崖っぷちの平穏さが一気に瓦解した。
「どうしてミザリーが死ぬのよ!人殺しー!」
と、アニーはラストにブチ切れて、ポールにDVを敢行。
ってか雪で道路封鎖されてたんじゃなかったのかい!嘘つきめ!
もはや嘘を隠す気もなくなったアニーは
「私が納得する続編を書け。ミザリーを生き返らせて、イチャイチャ・ラブラブ・ハッピーエンドにしろ」
とポールを恐喝。新作の原稿も、哀れBBQセットの餌食に。
自力では歩くことも叶わないポールだったが、アニーの命令にニコニコ従うフリをしながら脱出の機会を虎視眈々と伺っていた。
ミザリーを殺したい作者 VS ミザリーを生き返らせたいファンの残虐ファイトが、ここに開幕する。
【登場人物】
ポール:
ミザリーシリーズによってロマンスの神様と化している人気作家。どう見ても50代だけど、まだ45歳らしい。
本人は恋愛もの以外も書きたいらしく、さっさとミザリーを葬りたかった模様。彼のモデルはコナン・ドイル氏だろうか。
また典型的ヤンデレ彼女なアニーをおおむね上手く転がしており、おそらくモテ男。そしておそらく離婚歴アリの子持ち。
アニー:
可愛い動物 (特にブタさん)を愛する、心優しき小児科の元看護師長――と思ったら大間違いなのさ!厄介ファンの権化だよ!
ポールとの会話中に「証言台に立った時も云々」と言い出した時に「コイツ、前科持ちか?」と思ったら、想像してた以上にヤバかった。
ちなみに頭蓋骨がとっても頑丈。パズーの親戚かな?
バスター:
こんな田舎町の保安官で終わるには惜しい、と思わずにはいられない超有能おじいちゃん。もはや名探偵なんよ。
しかもオシャレで足も長いし、今も奥さんとのラブラブ喧嘩ップルぶりを見せている。
ただホラー映画で有能な脇役は、だいたい……ね、うん……うん。
【感想など】
母から「結末は全然覚えてないけど、面白いから観るべき」とふんわり猛プッシュされつつ、なんでかPrime Videoの不具合で観れないことが2度続き、3度目の正直でようやく視聴できました。やったぜ。
それにしてもすげぇや、スティーヴン・キング御大……メンヘラやヤンデレという概念が生まれる約15年前に、この激ヤバモンスターを創造していたなんて……人間への観察力がえげつない。
そしてとんでもなく面白い。結末を覚えてなくても、我が子に勧めるだけあるわ。
ただ予想外だったのが、映画の空気感というか温度感。
ハンマーを構えるおっかないキャシー・ベイツさんの場面写真から、視聴前は
「密室空間でヤベェファンに監禁された小説家が、恐怖に震え続ける陰鬱ホラーかな」
と思っていたら。
主人公のポール、全然震えないの。西野カナさんの対義語じゃん。
足が両方折れてて片腕も脱臼直後だというのに脱走を試みるし、脱走がバレて足を追加骨折させられても、アニーに中指を立てて反抗するの。ふてぶてしい!
そして終始一貫して小粋なジョークを放ち、アニーを手玉に取ろうとモテ男ムーヴも続けるの。
おまけに最後は足が動かないまま、腕だけでアニーと血みどろプロレスも繰り広げて……メンタルが鋼ェ!
どれだけ骨が折れようとも、闘争心だけは不屈。こやつ、ジョースター家の末裔か。
個人的には理想的なホラー映画の主人公だと思います。
つよつよ精神力な主人公、もっと増えろ。大好き。
そんなわけで当初思い浮かべていたよりも常に温度感高めで、ポールも「こなくそぉ!」と一切めげないので、一周回って笑えました。コイツは絶対に無駄死にしないな、とも思えたし。
ラストではさすがに心身に深い傷が残った様子だったけど、俺たちのポールさんなら立ち直るに違いない。明鏡止水の境地に至るであろう、ポールさんの後日談も観たい次第。
――冷静に考えると、アニーとは別ベクトルで彼も異常なのかも。
『貞子VS伽椰子』の26年前に、「化け物には化け物をぶつける」理論を打ち立てている映画でもありますね。
主演2人の怪演ならびに顔芸も素晴らしく、シームレスにブチ切れるキャシー・ベイツさんと見事な八の字眉になるジェームズ・カーンさんは一見の価値ありです。ってか値千金。
そんな彼らの、アクセルベタ踏みなラブコメ7割:殺し合い3割風味なサイコホラーとなっていますので、応援上映とかでも観てみたい。