【作品情報】
原題:The Shining
製作:1980年/119分/アメリカ
監督:スタンリー・キューブリック
出演:ジャック・ニコルソン/シェリー・デュヴァル/スキャットマン・クローザース
ジャンル:オカルト?サイコ?意味深ホラー
(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)
【ざっくりあらすじ】
コロラド州のロッキー山脈にある、オーバールック・ホテル。
降雪量がエグいため、冬の間は封鎖されちゃうホテルの冬期管理人に選ばれたのは、作家志望のジャックだった。
雪に閉ざされる5ヶ月間、家族とホテルに滞在してのんびり新作を書き上げるぜ!と当初は意気揚々なジャック。
しかしホテルに滞在して1ヶ月経った頃には、豪華な内装のロビーで壁とキャッチボールをしたり、庭園の模型をガン見してはニタニタ笑うといった奇行が目立つように。
実はこのホテル、ネイティブ・アメリカンの墓場の上に建てたという立地がクソ過ぎる代物だった。
それ、『ポルターガイスト』で観たヤツー!
おまけに以前に管理人を務めたグレーディーという男性も、ホテル滞在中に発狂して家族を惨殺&自分も猟銃で自殺していたり。
そんなわけで前例に漏れず狂い始めたジャック。
そしてジャックと同じ屋根の下で暮らす羽目となっている妻ウェンディと息子ダニーは、この陽キャな狂人から逃げ切れるのか。
【登場人物】
ジャック:
ヤバさに比例してヒゲが伸びる。
原作ではアルコール依存症だったことがフォーカスされるけれど、映画ではただの酒好きなだけのオッサンっぽい。
死に顔が映画史上に残るファニーさ。
あれを拝むために、この映画を観てますねん。
ウェンディ:
なんとも気弱そうなジャックの妻。オシャレさん。
武器としてバットを携行しているものの、持ち方がちょっと変。
ただジャックをぶん殴る時だけはしっかり握っているので、殺る気の高さが伺える。
ちなみに冒頭で読んでいる本は『ライ麦畑でつかまえて』でした。
ダニー:
人差し指に秘密の友達を宿す、ジャックとウェンディの子。
成長するとユアン・マクレガー似になるという、『ポケモン』のケロマツみたいな将来性の塊。
彼がホテルを三輪車で爆走するシーン、むっちゃ真似したい。大きい建物内を自転車で走り回るのが、小さい頃からの夢なんです。
ハロラン:
原作ではもうちょい見せ場があるけれど、映画ではアイスクリームと移動手段提供おじさんでしかない。
実質『ロックマン』の炊飯器――もといエディーとどっこいである。不憫。
237号室の幽霊:
個人的に1番好きなキャラ。
ショタボーイは早々に追い返し、美女に扮してジャックの唇を狙う全裸のババアの霊。
笑い声が豪快で、いっそ気持ちがいい。
が、このババアを含め、幽霊たちが何者なのかは基本的に一切不明。誰なんだよコイツ!
【感想など】
あなたの『シャイニング』はどこから?
私は映画から。
――というわけで、処女シャイニングを映画版に捧げた者です。
原作者のスティーヴン・キング氏が映画を観て激怒し、公開時はお客さんからも賛否両論だったことでも有名なド名作ホラー。
最近だと『レディ・プレイヤー1』にも登場しましたし、私も大好きなユアン・マクレガーさん主演で『ドクター・スリープ』という続編も作られましたよね。あれはあれで、割と好きです。『X-MEN』っぽいし。
上記の激おこ逸話は有名なので今更、かもですが。
なんでキング氏が激怒したかというと、日本のマンガ作品等の実写化でも起こりがちな「監督、重要なのはそこじゃねぇんだよ!」な物語の核の捉え間違えが発生したためかと。
要はあるべきシーンを伐採して、ないシーンを植えちゃったわけですね。
そして収穫されるのは、原作ファンが見たこともない謎野菜……という、国を問わず発生する悲劇であります。
私が読んだ限り、原作では父ジャックと息子ダニーのダブル主人公体制な印象でした。
邪悪なホテルに超能力を狙われるダニー少年と、ホテルに操られながらも息子と妻を救おうともがくジャックの苦悩を描いた、家族愛に満ちたホラーです。エモい!
で、映画の方はというと、主人公はジャックのみです。息子の超能力も、「なんかそういう不思議な力があるんよー」ぐらいのノリで、ホテルからも狙われていません。むしろ邪険にされています。
またジャックもホテルに抗うことなくウキウキで狂っていきますし、なんだったら狂う前から家族に対して塩対応です。つまり徹頭徹尾ヤバいオッサンの話です。
……いやまあ、キング氏が怒る気持ちもむっちゃ分かる。
学生時代に遅まきながら原作を読んで、そう感じたものです。
だって目ぇバッキバキのジャック・ニコルソンさんがパパ役という時点で、取り返しのつかなさを感じますもの。
ただキューブリック監督のえげつないところは、そんなやりたい放題をしたにもかかわらず、映画自体はド名作だということ。
もちろんキング氏の原作も名作なのですが、別方向に突っ走った挙句に映画版も名作なので、ただの観客としては
「一粒で二度おいしい、それが『シャイニング』という作品」
という結論に落ち着きました。
(もっとも、そのおかげでキング氏が余計に怒ったとも言えるのだけど)
執拗にシンメトリーの画にこだわったり、俳優をいじめ抜いてハロラン役のクローザースさんを泣かせ、ウェンディ役のデュヴァルさんの鬼気迫る表情 (斧でドアをかち割るシーンとか、ウェンディの顔の方が怖いよね)を引き出した、とかいう逸話もあるキューブリック監督。
作中に出て来る迷路で、スタッフともども遭難しかけたことがあるキューブリック監督。
個人的には監督にまつわるエピソード込みで、滋味深い映画だと思っております。
説明を極力省き、匂わせる程度の不気味なシーンがアラザンのように散りばめられた、考察系ホラーな要素も好きだったりします。
おかげであれこれと想像を巡らせてしまい、今も年1回のペースで観ています。
なお泣いたクローザースさんを励ましたのは、作中で彼をぶっ殺したニコルソンさんだとか。なんだそのほっこりエピソード。
なお原作は映画版よりもハッピーエンドです。ハロランさんもぶっ殺されません。
ただ超長編のため、手に取るには勇気と暇が要る代物だったりしますので。
キング氏自らが脚本を手掛けた、ドラマ版から入ることもついでオススメいたします。
こちらも90分×3話とやや長尺ではありますが、親子愛が丁寧に描かれていて良作でした。ぜひぜひ。