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『ひみつのなっちゃん。』

【作品情報】

製作:2023年/97分/日本

監督:田中和次朗

出演: 滝藤賢一/渡部秀/前野朋哉

ジャンル:オフビートなロードムービーコメディ

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

昼は化粧品会社の経理、夜はドラァグクイーンとして活躍する (ただし1年ほどお休み中)バージンはある日、恩人かつ友人で元ドラァグクイーンのなっちゃんが死んだことを知らされる。


なっちゃんが営んでいた食事処の従業員で、もちろんドラァグクイーンでもあるモリリンに訃報を知らされたバージンだったが、彼女と思い出話をしている時にふと気づいた。

「秘密主義のなっちゃんは、たぶん家族にもカミングアウトしていないのでは?」

オネエタレントとして活躍しているズブ子も巻き込み、3人でなっちゃんの自宅にこっそり侵入した。オネエバレ確約アイテムを、ご遺族が見つける前に隠匿しようと目論む。


が、そこでなっちゃんのご母堂と鉢合わせてしまった。

岐阜に在住のなっちゃんママはだいぶ天然で、ちょいちょい様子がおかしい3人をなっちゃんのルームシェア相手だと信じて疑わず、

「息子の葬儀に、ぜひ来てね。ちょうどお祭りもあるんよー」

と、のほほんと誘う始末。


「行ったら絶対オネエとバレるだろ。特にズブ子」

と3人は迷うも、恩人の葬儀――つまり最後のショーを見送るべく、バージンが運転する車でなっちゃんの故郷である岐阜県 郡上八幡へと旅立った。


絶対に、なっちゃんママと葬儀参列者にはオネエバレをしない、という決意を胸に。


しかし途中のサービスエリアで、ズブ子の顔が割れた。秒殺だった。

先行き不安しかねぇ!



【登場人物】

バージン:

オネエ界隈以外でも手に職を持っている、恐ろしくスタイルのいいお洒落系オネエ。

なっちゃんとはお揃いのコンパクトを持つ、師弟でありマブダチ同士。

なお会社では普通にオネエバレしている模様。

そして同僚とガールズトークで盛り上がっている。

会社員として働いているためか、3人の中でも一番トラブル耐性があるみたい。おかげで何かあるたび、割と矢面に立たされがち。


モリリン:

なっちゃんの店で働いていた、美形のオネエ。可愛い。

かなり抑圧的な両親の下で育ったらしく、ちょっと情緒が不安定。あと脇の処理も甘い。

そして男性の好みが自分に似ていたので「分かるぜモリリン……」となった。


ズブ子:

名前からも分かる通り、色物枠のオネエ。本作随一のトラブルメーカーでもある。

道中でも何かをやらかしては、残る2人を怒らせる or 呆れさせている。

また構ってちゃんでもあり、だいぶ面倒くさい性格。そのため2人から無視もされがち。

なお本人は結構タフなメンタルの持ち主らしく、泣いたと思った次の瞬間にはケロっとしている。恐らくズブ子の「ズブ」は「図太い」のズブ。



【感想など】

自分たちが「普通でない」と自覚のあるオネエな3人組の、恩人のお葬式に臨むまでのロードムービーなのですが。


それ以外の登場人物も、割と「普通でない」です。

途中でズブ子と喧嘩して一人取り残されたバージンに、いきなり「仲間だろう!」と特撮ヒーローのような熱弁を振るうスーパーの店員とか。


ズブ子が甲高い悲鳴を上げて逃げてるのに、熊だと信じて猟銃片手に執拗に追う旅館のオッサンとか。

全体的に、出て来る人がことごとくちょっと変。

そもそもなっちゃんのお母さんも、割と変わってるという。


自分も幼稚園の頃から「依馬さんは……うん、割と変わってますね」と、懇談等で担任の言葉を濁らせてきた変人なため、クレイジーまで行かずともズレた人がいっぱいいるのは、正直居心地がよかったです。


ただ実際、全てが平均値の人間なんているのかよという話なんです。

性的嗜好や趣味、はたまた日々のルーチン等々……それらがオール平均の人って、一周回って異常者な気がします。たぶん国で保護なり監視するべき。


もちろん外見上の趣味が多数派から外れてるオネエさんズが、目を引いてしまうのは仕方ないのでしょうが。

でも、パッと見は多数派を装ってる人間だって一皮剥けば、どこかしら少数派な部分があって当然なんだから、見た目ぐらい好きにしたらええんじゃい!とか思ったり。


そもそも異装してる方より、人込みで傘を後ろに突き出すように持ってるオッサンの方が、比べるもなく迷惑千万ですし。あいつら、どうかしてるぜ。


ただこの映画、そういったLGBTQの方々が抱える問題についても、ゆるーく描いてくれるに留まっています。

3人に奇異の目を向ける人はいないし、道中のサービスエリアでバージンを笑ってるっぽい2人組が出て来るけど、それもすぐに勘違いであることが分かる仕様ですし。

優しい世界です、マジで。


基本は変人だらけのコメディなので、そこだけ重苦しく描かれても温度差で風邪引いちゃうのですが。

そういうシリアスなお話をお求めの方からは「キレイに描きすぎ!」とかなるのかも。

でもその辺は、毅然としつつも周囲の視線に過敏に反応しちゃう、バージンの姿が補完してくれてるということで!


個人的にはLGBTQとか関係なく「うるせぇ3人組がワーギャーしつつも、なんやかんやで旅をエンジョイして、最後は無事に恩人をお見送り」な模様が楽しかったので満足です。

お葬式での、なっちゃんママの弔辞のシーンなんて泣けました。


そもそもこの映画を観たかったのも、主演の滝藤さんが好きだからなので。

フェミニンなブラウス姿の滝藤さんも、スタイル抜群で素敵でした。腰の位置高ッ! 締まった足もいい!


ただ滝藤さんのドレス姿が、冒頭しか楽しめなかったのだけは本当に残念ー!

エンドロールでもいいから、ショーのシーンを見せてほしかったー!

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