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『悪魔と夜ふかし』

【作品情報】

原題:Late Night with the Devil

製作:2023年/93分/オーストラリア

監督:コリン・ケアンズ/キャメロン・ケアンズ

出演:デビッド・ダストマルチャン/ローラ・ゴードン/フェイザル・バジ

ジャンル:露悪TVショー風ホラー

(参考サイト:映画.com https://eiga.com/movie/101477/)



【ざっくりあらすじ】

時は1977年――

長年視聴率2位の立ち位置から抜け出せず、その後はズルズルと落ち目コースを辿っている深夜のトーク番組「ナイト・オウルズ」。


司会者のジャックは起死回生として、ハロウィン・シーズンに合わせたオカルト企画をぶち立てた。

それはゲストに霊能力者・アンチオカルトおじさん・超心理学者・悪魔憑き少女を呼ぶというもの。陰属性のアベンジャーズかよ。


トップバッターである霊能力者のクリストゥスのパフォーマンスはなかなか好評だったけれど、彼は最後に“ミニー”なる霊と遭遇した。

奇しくもそれは、1年前に死んだジャックの愛妻・マデリンの愛称だった。


その後も怪奇現象は連発し、悪魔憑き少女のリリーはホーミーみたいな声で喋りながら宙に浮かぶ始末。

「こんなんトリックっすよ!催眠術っすよ!」

とアンチオカルトおじさんことヘイグが主張し、検証のため先ほど収録した映像を皆でプレイバックすることに。


しかし、これが悪かった。

完全に要らんことをした連中に、怪奇現象が容赦なく襲い掛かる。

これ、生放送番組でしてよー!



【登場人物】

ジャック:

ラジオのパーソナリティ上がりの「ナイト・オウルズ」の名物司会。小粋なジョークでお茶の間を楽しませる、イケメン風のおじさん。

とはいえいつも、微妙にトップに上り詰められない引き立て役ポジ。

1年前に最愛の奥さんを喪い、その後は視聴率もガタ落ちで切羽詰まっているご様子。

ちなみにちょっと怪しいカルト教団と仲がいいらしい。不穏。


ガス:

「ナイト・オウルズ」の助手的なヒゲのおじさん。

日本のバラエティ番組に出がちな、可愛い女性タレントポジに収まっているマリオというわけです。ちなみにミミズが大嫌い。

終始ちょっと悲しそうな顔をしていて哀愁も漂っており、個人的に1番好きです。

こんなマリオですが、奥さんからは顔を褒められているらしい。


クリストゥス:

訛りが強めな霊媒師 (インチキ疑惑強め)のおじさん。

しかし番組中にミニーなるモノホンの霊と接触してからはずっとゴホゴホしてて、最終的に嘔吐キャノンと化します。ガスと並んでの可哀想枠。

クリストゥスが何したって言うんや!

(答え:詐欺行為)


ヘイグ:

元マジシャンの、霊能力者のトリック絶対暴きたいおじさん。今作のヘイト担当。

細かに茶々を入れて来るため、観客からも (恐らく)悪魔からも「素人は黙っとれ」と思われていた。

ただ催眠術の腕前は凄い。

にしてもこの映画、おじさん率高いなぁ……プロデューサーもおじさんだし……


ジューン:

超心理学の博士。

ジャックに露骨に惚れているお姉さんでもあるので、いわゆるチョロインも兼任。

リリーの保護者だが恋に狂った挙句、テレビ局という道徳心欠如空間にホイホイ彼女を連れて来たうっかり屋さん。


リリー:

集団自殺を試みた悪魔教団の元生贄にして、ただ1人の生存者。

悪魔が降臨する前は、ちょっぴり中二病をこじらせた自意識過剰だけど可愛い女の子。

カメラ目線に並々ならぬこだわりがある。

なお、色々あって最終的に帯電する。詳しくは観て。


マデリン:

ジャックの亡き奥様。

昨年、煙草も吸ってないのに肺ガンを患って儚くなった。

喫煙者っぽい旦那の副流煙が原因と、普通は思いますやん……?



【感想など】

1970年代に放送されていた深夜番組の、曰くつき最終回の映像を初公開――というテイの本作。

最初は制作会社のロゴ映像が多すぎて

「おいおいおいおい、本編はまだなのか? いや、本編は用意されているんだろうな?」

って思わず岸辺露伴ちゃんになりかけたのですが。


いざ本編が始まると、オシャレで不穏な映像にギュンギュン引き込まれました。

いいですよね、ファウンド・フッテージ。見てはならぬ秘密を垣間見た気がして、ドキドキしちゃう。


それにしても、徹頭徹尾救いがないです。

なさすぎて清々しい。いっそ笑える。


これはもう地獄です。生きてる内に拝める地獄です。

もしくは「好奇心は猫を殺す」の見本図です。ファーッ!


いやいや、ジャックの気持ちも分かるんよ?

いつまで経っても視聴率王という地位をもぎ取れず、常に2番手に甘んじてる悔しさもさ。

「俺だって、やれば出来るんや!」と奮起する気持ちもさ。

でも、周りに無理を強いたらあかん! 他人ひと様に迷惑をかけるな!


昨今のポリコレに配慮し過ぎるあまり、毒にも薬にもならない作品作りに情熱を注ぐ羽目となる風潮には疑問を抱いているのですが。

ただこの、70年代の倫理観ゼロっぷりを観ていると、

「とはいえ配慮も要るよな……」

とも思えたり。やっぱりバランスって大事ね。冒険心も配慮も、両方大事。マジで。


あとこの映画、随所に小ネタというか仕掛けも多いですよね?

番組が始まった直後から、ジャックの後ろで怪しい黒い影がモゾモゾと歩いていたり。

他にも、妙な白い煙?が彼の顔に被さっていたり。


思い返すとこういった仕掛けを全部、ジャック周りで見かけた気がして……オアァァァ……


また画面のサイズも、ご丁寧に「ビデオカメラで撮影=正方形」「ビデオカメラを通していない=横長長方形」で仕分けされていて。

終盤、この2つの画面幅が入り乱れて出て来るので、注目して観ていると当時の視聴者が観ていた映像と、ジャックが襲われた幻覚の違いに気付けて面白かったです。

「うわぁ……」感が増します。


そんなこんなで小ネタ探しのために周回プレイをしたくなる、奇妙で面白い映画でした。

救いはないけど心底同情・共感出来る登場人物も少ないので、周回のしやすさに貢献してくれています。

また映像や演出がレトロにオシャレなので、小ネタ抜きにしても楽しいです。


終始スタジオ内部で完結しているミニマムさも、個人的に好き!

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