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『ラストマイル』

【作品情報】

製作:2024年/128分/日本

監督:塚原あゆ子

出演:満島ひかり/岡田将生/ディーン・フジオカ

ジャンル:世知辛サスペンス (エンタメ風味)

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

2023年のブラックフライデー初日――


どう見てもAmazonがモデルなDAILY FASTデリファスという、世界最大手ショッピングサイトの西武蔵野ロジスティクスセンター (でっけぇ倉庫的なの)に新しいセンター長として、福岡支店から舟渡ふなどエレナという女性がやって来た。


社員の入れ替わりがとにかく激しいため、入社2年目でセンター最古参になっちゃった部下の梨本孔なしもとこうは、なんかチャラいしファーストネーム呼びを強要するエレナに出会い頭から辟易気味。


初日から温度差でギクシャク待ったなしな二人の元に、刑事がやって来る。

なんでもこの西武蔵野のセンターから出荷された商品が、客宅で相次いで爆発するという事件が起きているらしい。

彼らに捜査協力を求められるも、エレナは「出荷止めたらどんだけ損害出ると思ってんだい! こちとらブラックフライデー真っ只中なんだYO!」と超非協力的。

結果、捜査令状まで出される羽目となり、センターには警察が常駐する羽目に。


出荷の遅れのしわ寄せは、デリファスお抱えのひつじ急便にも波及してしまい、関東局局長の八木やぎは四方八方からせっつかれてぐったり疲弊状態。


そんなゴタゴタの最中、エレナはとあるウェブページで「DAILY FAUST」なるデリファスにクリソツな怪しいCMを見つけた。

そのCMはまるで、今回の連続爆破事件を予告するような内容だった。

孔はこのことをすぐに警察へ伝えようとするも、エレナはそれを断固拒否。この態度に、孔は不信感を覚えた。


一方の警察も怪しいCMの存在に気付き、制作を請け負った広告会社を探し当てた。そこに残っていたCM制作料の支払い情報から、デリファスの元社員である山崎やまさきという男性にたどり着く。

「こいつが犯人やって!」と山崎の居場所を探したところ、彼は5年前に西武蔵野のセンターで飛び降り自殺を試みており、その後まもなく植物人間となっていたことが判明。

つまり現在も意識不明の寝たきり状態なのだ。犯行は不可能である。


彼は意識を失う前に、デリファスを訴えない旨の誓約書を交わしていた。

大怪我を負った人間になんちゅうことを、と思うけれど「本社がアメリカなんで、そちらのスタイルにのっとってますねん」ということらしい。世知辛ぇ……

なおこの誓約書があったため、彼の親も恋人も、デリファスを訴えることが出来なかったという。


そして彼名義で現在も借りられているマンションには、女性が出入りしていると発覚した。

警察から女性の存在に心当たりがないか、と尋ねられた孔は、エレナが山崎の在籍データを消去していたことと、また彼女の経歴に不審点があることに気付く。

彼はエレナが山崎の恋人で、デリファスへの報復のために事件を起こしているのでは?と考えた。


孔がエレナに事実を問い詰めている最中、なんと彼女がデリファスで購入したおもちゃにも爆弾が仕掛けられていると発覚。出荷データを改ざんして、倉庫から直で持って来るから……

エレナは爆弾が解除されるまでの間に孔へ、自分はメンタルがぶっ壊れて休職&復職したばかりの元アメリカ本社所属であることと、山崎の恋人と思しき女性とアメリカ在籍時代に会ったことがあると語った。

爆弾は駆けつけた警察によって無事解除され、孔とエレナはお互いに腹を割って話し合い、距離を縮める。


またエレナは、センター内の在庫を爆弾入りのものとすり替える方法に気付いた。

この方法を用いれば、センターに数百人単位で常駐している派遣社員によって犯行が可能なのだ。

在籍データから容疑者を洗い出した結果、かけいまりかという女性にたどり着いた。彼女こそが、山崎の恋人だった。


エレナはクビ覚悟で羊急便の八木と手を組み、ストライキを起こした。

物流ストップを盾に、彼女はデリファス日本法人の統括本部長である五十嵐いがらしを、交渉のテーブルまで引っ張り出した。また彼が5年前の山崎の飛び降り現場に居合わせながら、今まで何も手を打たなかった事実も糾弾する。


交渉の末、デリファスと羊急便の業務提携契約は羊急便側に有利なものへ修正出来た。

警察もストライキの間に、爆弾入りの商品を全て探し終えることに成功。

こうして事件は、無事終結となった。


――と思われたが、エレナはあることに気付いた。

最初に爆発した商品は、日本での発売開始時期を考えると筧による犯行が不可能だったのだ。

彼女が唯一見落としていた「答え」とは、一体何なのか。



【登場人物】

舟渡エレナ:

最初はだいぶウザい、会社の売り上げと株価にしか興味がないクソ管理職。

正直、CM隠匿のくだりでは本気でぶん殴りたくなりました。

が、うっかり自爆未遂を経た後、親近感や愛しさが大爆発です。抱きしめて差し上げたい……

なおウザキャラだった時代は指輪もジャラジャラで、ファッションもだいぶウザい。

その後、孔と分かり合ってからは指輪がギャンと減って、最終的にめっちゃ可愛いワンピース姿になる。ファッションとメンタルが連動している様子。


梨本孔:

ウザキャラなエレナに思い切り嫌な顔をしていた、どう見ても陰の者な自称・元サッカー部。

そして元ブラック企業社員でもあり、そこと比べると退職者続出&自殺未遂まで発生のデリファスですら天国らしい。日本の闇の体現者やん……

エレナのことは当初かたくなに「センター長」と呼んでいたけれど、彼女の本音を聞いてからはちゃっかり「エレナさん」呼びに。顔も中身も可愛い奴め。

どうか彼だけは、エレナや山崎のように追いつめられませんように。


八木:

デリファスにこき使われ、顧客から責められ、そして現場からも嫌味を言われる中間管理職な羊急便の支局長。

どんどんストレスを溜め切った結果、業務中にふて寝&寝たばこをかます。その気持ち、むちゃ分かる……私も仕事中に「このまま帰ったろか」と思ったことは数知れず。

でも最後には、超いい顔でやり切ってました。よかったねぇ。


山崎:

5年前にデリファスのセンターで飛び降りた元社員。全ての始まりの人。「ヤマキ」じゃなくて「ヤマキ」ね。

彼がとある場所に残したメッセージの意味が分かった瞬間、エレナは大笑いの末に号泣するし、観客も絶句して落ち込む羽目となります。

マジで仕事なんて、雑でいいんだから!頼む全人類、頑張りすぎるなー!

なお中村倫也さんが演じていらっしゃるんですが、現在寝たきりなのでほぼ全く喋りません。無念。


五十嵐:

山崎の飛び降り現場に居合わせ、入院中の彼に無理くり誓約書を書かせたデリファス日本法人の本部長。つまり諸悪の根源。

最初はエレナのやらかしや連続爆破事件に被害者面をしていたけど、お前が悪いんじゃろがーい!

とはいえ最終的にこの人も飛び降りそうで、また怖い。所詮は彼も中間管理職でしかないという……


佐野さの親子:

運送スタッフパートでメインを張る父と子。

即日出荷に執念を燃やすデリファスと顧客によって疲弊しまくりで、作中では八木以上に不憫 of 不憫。私も通販利用者として、本当に申し訳ない……

しかし終盤、特に息子のわたるが大金星。人知れず人助けとか、ヒーローやん。



【感想など】

もう全ての通販サイトさん、即日出荷止めようぜ!

こんな四方八方に無理強いるサービス、絶対どっかで破綻するって!SDGsじゃねぇよ!


私事ですが、某通販サイトのバックヤードで出荷管理とコールセンター業務を兼任しております。

が、運営会社が大変オソマ過ぎて、業務は増え続けるのに人手は減り続けるという地獄絵図の果てに体調を崩し、9月現在休職中です。


――もうね、主要人物全員に、ただただ共感しかねぇ……観てて何度も辛くなった。ブラックフライデーに恐怖する気持ち、私もすんごい分かります……年末商戦と書いて「地獄」と読みます。


作中でちょいちょいコミカルなシーンが挟まれるのと、最後にエレナと羊急便の皆さんがはっちゃけて一矢報いてくれたおかげで、どうにかこうにか完走出来ました。

でも私も転職した方がいいかもしんない、とか考えちゃった次第です。むしろ考えない方が無理ですやで。


なお同じ世界線の作品『アンナチュラル』と『MIU404』は未見で、「どっちかに星野源さんが出てたらしい」&「3作とも米津玄師さんが主題歌らしい」という情報しか手元にない状態で観に行きました。両作のファンである友達に誘われて、なんとなーく。


なのに共感ギュンギュンで、でも社会派モノにありがちな押しつけがましさは覚えず (代わりに遠慮のない鋭さで、色々ぶった切られて吐血しましたが)、なんやかんやでめっちゃ楽しみました。家に帰って早速『MIU404』を観るほどに。

映画内より綾野剛さんがヤバいし、星野源さんも全くの想定外で更にヤバい。あかん、こっちも超面白い。むしろド好み。


音楽や演出がオシャなため、泥臭さや湿っぽさを極限まで抑えてドライな印象を与えてくれるのも、重たい内容を適度に和らげてくれていました。

そしてエンドロールで流れる『がらくた』がまた、ブスブス刺さりました。致命傷です。

ほんとありがとうございます。


ひとまず通販サイトを利用する際には、関わって下さる全ての方に感謝し続けようと思います。

あとお急ぎで欲しいものは、実店舗に駆け込みます。


ついでに本気で転職も考えます。

転職を検討しつつ、文字書きとして生計を立てる術についても本気で調べてまいります。だって人生、一回限りですもん。

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