目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
『RUN/ラン』

【作品情報】

原題:Run

製作:2020年/90分/アメリカ

監督:アニーシュ・チャガンティ

出演:サラ・ポールソン/キーラ・アレン/パット・ヒーリー

ジャンル:仲良し親子の、ギスギス腹の探り合いスリラー

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

超々未熟児で生まれた車いす生活のクロエ (持病:不整脈・鉄過剰症・糖尿病・喘息・下半身麻痺)は母ダイアンのお世話を受けつつ、名門ワシントン大学への入学を目指すお利口さん。


糖尿病のためチョコの個数制限も受けているクロエはある日、ダイアンが持ち帰ってきたスーパーの紙袋からこっそりチョコをくすねようとする。

その時、チョコと一緒にダイアンの名前が書かれたお薬を見つけた。


チョコ目当てだったため、薬については「ふぅん」と流したクロエだったが、寝る前に母から渡されるお薬たちの中に、そいつが混じっていたのだ。


「これ、お母さんの薬じゃなかったっけ? こっそりチョコ盗んだ時に見つけたんだけど」

ピュアッピュアなクロエは自分のやらかしごと素直に尋ねるが、露骨にはぐらかされた。


この態度にクロエも疑問を持ち、夜中にこっそりPCで薬について調べようとした。

しかし生憎、ネット回線が切断されていた。


ますます疑心暗鬼となり、クロエは母が家庭菜園でハッスルしている最中に、固定電話でデタラメに番号を押す。

――何故なら彼女はスマホを持っていないし、なにより友達がいないから。手持ちの電話番号カードなんてないんだよ!


偶然出た、絶賛彼女とケンカ中の男性の相談に乗ったおかげで、例の薬について調べて貰えることに。

薬の容器に書かれていた名前は「トリゴクシン」だったが、どうやら見た目が全く異なるらしい。


ピュアガールなクロエも「おかん、なんか怪しいぞ」と疑惑を固めた。

映画館へのお出かけにかこつけて、いつもお世話になっている薬局までこっそり駆け込んだクロエは、馴染みの薬剤師に正体不明の薬を見せる。


「この薬って何なの? ママのお薬っぽいんだけど」

「あら。これ、犬用の薬よ」

薬剤師はそんな予想外の回答と共に、とんでもない薬効を伝えるのであった。


――逃げろクロエ! 頼む、逃げてくれー!



【登場人物】

クロエ:

生まれた時から病弱な、車いす暮らしの女の子。

しかし工学系に強いらしく、自室には工具がいっぱい。もちろん、マイはんだごてもお持ちである。

スマホも持っていない引きこもり生活だけど、びっくりするぐらいメンタルが強く、腕力には自信あり。

薬局に駆け込んだ時の、店内での車いすコーナリングが華麗すぎて笑っちゃった。

あとダイアンとエレベーターに乗ってるシーンで一瞬見せる、「この恨み、晴らさでおくべきか」フェイスもよかったので是非ご注目ください。乗ってすぐの辺りです。


ダイアン:

クロエのマッマ。

娘のために家庭菜園をまあまあな規模で行い、栄養たっぷりの食事を作り、そして甲斐甲斐しくリハビリにも精を出すよき母。

クロエに自ら勉強を教えているが、どうやら教員免許らしきものも持ってるっぽい。

あと、薬学にも結構詳しいようだよ。うーん、不穏!

ちなみに途中で意味ありげに、傷だらけのたくましい背中が映るのですが、その傷の由来だけは謎のままです。

……元傭兵とか?


トム:

クロエたちの家に郵便を届けてくれるおじさん。

中盤で家を抜け出したクロエと遭遇した時、この手のホラーでありがちな「主人公の主張を聞かずに、悪役の言うことをホイホイ信じる」というクソムーヴをかます……かと思ったら、本当に親身になってくれるめっちゃいい人。

いい人なばかりに、とんでもない目に遭っちゃう……嗚呼……



【感想など】

クロエ、思想がサムライ過ぎんか!?

部屋に閉じ込められた時は、大けが覚悟で階段を転がり落ちるし!

その後で自ら毒も飲むし、討ち死に上等な精神性が並みのJKじゃあない。

『ジョジョ』に出てきてもしっくり来そう……


予告編 (これがあちこちローカライズされた、妙に凝った代物でした)の時点で「おかんがヤバい」と察せますが、中盤までは「せやかてクロエの勘違いパターンも、なくはないやろ」と思っていました。


が、そんなことはなく。

普通におかんがヤバいです。思ったよりヤバかったです。


ただこの映画の真骨頂は、母に色々盛られて謀られて、圧倒的弱者に落とされているはずのクロエが、ある時は己のハンディキャップを逆手に取り、ある時は「その弱き体のどこに、それだけの膂力りょりょくが……?」といっそ感動しちゃうガッツを魅せてくれるところにあるので。

母のヤバさなど、彼女のサムライスピリットの前では添え物。あるいは前菜。


あとワシントン大学への熱意もすごいよね。

クロエのガッツの源は、だいたい志望校にあります。

これが推しへの情熱か……


ところでホラー映画に限らず、諸悪の根源はさっさと殺されて終わるパターンが多いですよね。

後顧こうこの憂いを断てるとはいえ、「あれだけ不幸をばらまいておいて、ポックリ死んで責任逃れしやがって」というモヤモヤを覚えなくもないわけで。


その点、本作につきましては最後にクロエ……いえクロエ師匠がきっちり落とし前をつけてくれます。

最後まで手抜かりなしの師匠の軌跡を、是非ご覧ください。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?