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『ファンタスティック・プラネット』

【作品情報】

原題:La Planète sauvage

製作:1973年/72分/フランス・チェコスロバキア

監督:ルネ・ラルー

出演:ジェニファー・ドレイク/エリック・ボーギン/ジャン・トパート

ジャンル:おサイケなSFアニメーション

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

全体的に攻撃力が高そうな、明らかにヤバい野生動物や植物?どもが暮らす惑星イガム。

この星には高い知能を持つ、二つの種族があった。

全身が真っ青でヒレが生え、目だけ真っ赤なドラーグ族と、彼らの指ほどのサイズしかないがビジュアルはまんま地球人のオム族である。


ドラーグ族が高度な文明を築いているのに対し、オム族は原始的な生活を営んでおり、気まぐれにドラーグ族のペットにされたり、または害獣として駆除されたりと受難の日々。


ある日、ドラーグ族のクソガキどもに母親を殺されたオム族の男児を、ドラーグ族の県知事シンと彼の娘ティバが発見。そのまま保護ってか捕獲した。


男児を気に入ったティバは、彼に「テール」と名付けて飼うことに。

常時ティバに反抗しっぱなしのテールであったが、なんやかんやで可愛がられる。


ドラーグ族は特殊な生態をしており、瞑想と呼ばれる幽体離脱の習慣があったり、食事代わりに変な煙を吸ったりしている。怖い。

また学校へ通う代わりに、カチューシャみたいな学習装置で知識を習得していた。


テールを溺愛しているティバは、その装置でお勉強する時もテールを手の中に座らせていた。結果、テールは愛玩動物でありながら、ドラーグ族の知識をすくすくと吸収。

そしてとうとう、学習装置と共に脱走を図る。


逃げた先でテールは、野生のオム族の少女と遭遇。

彼女に案内されてたどり着いた集落で、族長らしきオッサンに気に入られたテールは、持ち逃げした学習装置で集落のメンバーの学力を向上させた。


一方のドラーグ族は、オム族殲滅派と穏健派に分かれており、殲滅派によって定期的にオム族の大規模駆除が行われていた。

テールの暮らす集落も駆除という名の大虐殺に見舞われるが、知は力と言わんばかりに反撃に打って出、駆除部隊――ではなく偶然通りがかったドラーグ族男性を虐殺。


知は暴力に通ずと、身をもって証明してくれたテールたち生き残りは、ドラーグ族のロケットの墓場 (なにそれ?)へと移住し、そこで更に文明力を高めていく。

目指すは惑星イガムに隣接する、野生の星だった。


しかし同胞を殺されたことで、ドラーグ族の反オム族感情もマシマシに。

ヤバイぞオム族。

プライムビデオでは思い切り「人間」って翻訳されちゃってたけど!若干のネタバレ!



【登場人物】

テール:

勉強がいかに大事かを、その半生を費やして体現してくれた主人公。

主人公ではあるのですが、基本的に困った顔を浮かべているだけなので、ぶっちゃけあまり印象がない。

彼を集落に迎え入れてくれた、頭にタコみたいなのを乗せた族長っぽいオッサンの方が、よっぽどキャラが立っている。

ティバに飼われていた頃は、如何いかんとも表現しがたいトンチキファッションを着せられており、「この世界では普通のセンスなのかな」と思いきや。

オム族の集落に着いた途端、思い切り笑われてたので、やっぱ人間的にはイケてないファッションで間違いないらしい。


ティバ:

テールの元飼い主の女の子。本人は無自覚だろうが、オム族の反乱の立役者でもある。

テールが逃げ出した辺りで「きっとこの後成長したテール率いるオム族と、ティバも加わったドラーグ軍との攻防とかあるんでしょ」とか考えてたら、逃げられて以降一切出番なし。うーん、淡白。

一時期は生活を共にしていた二人の、悲しい再会と別れとか、そういうエモ展開も一切なし。

上述の通りドラーグ族のビジュアルはかなりアレなのですが、お化粧を頑張ったりと年頃な一面も。

ただ彼女に限らず、ドラーグ族の女性は全員オッパイ丸出しなのが、謎。

まあオム族の女性も、片乳出しがちなのですが……双方共にありがたくないオッパイだ。


シン:

テールの飼育を認めた、オム族穏健派の県知事。

「お前の娘のせいで、エラいことになったんだぞ!」と、周りの人から責められていないかが若干心配。



【感想など】

カルト的人気を誇り、あの宮崎駿監督も「キモいけどいいね!」と称えて『風の谷のナウシカ』の作風に影響を与えた――とかなんとか言われている本作。

冒頭の、子供向けでない空気をビシビシ発する不気味な音楽の時点で、一筋縄ではいかない作品だと悟れました。


また人間そのまんまなオム族を除いて、出て来る動植物全てが「キモかわ」から「かわ」を抜いた感じの造形です。


宮崎駿監督は「ヒエロニムス・ボッシュっぽい」とも仰っていたそうで、この感想には賛同100パーセントしかないです。

おまけにこの動植物の謎生態系が、ストーリーの合間合間に挟み込まれます。結構な頻度で。もれなく不気味!


ドラーグ族を筆頭に、惑星イガムのフレンズのビジュアルは「キモ」一辺倒なんだけど。

なんというか、妙にクセになるんですよねぇ。

ペン・色鉛筆・絵の具で描かれたであろう、アニメらしからぬ柔らかなタッチが、味のある「キモ」を作り上げてくれてるのかなーと。


――そうなんです。ご存知の方も多いでしょうが。

このアニメ、セル画じゃないんです。

上述の色鉛筆や絵の具で彩色された切り絵を使った、まさかのストップモーションアニメなのです。


なので動きがどうもぎこちなく、「キモ」に拍車をかけています。


ただ、もしもこのアニメがセル画で作られていたら、と考えると。

ここまで伝説のカルト映画になったのかは微妙なので、切り絵という狂気の選択は大正解だったと思います。


なおこの選択に付与したのが、監督の経歴らしく。

精神病院に入院されていた頃、切り絵を用いた芸術療法を受けていたそうです。


何が役に立つか、人生ほんと分からんですね。まさに知は力なり。

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