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『ブラック・フォン』

【作品情報】

原題:The Black Phone

製作:2021年/107分/アメリカ

監督:スコット・デリクソン

出演:メイソン・テムズ/マデリーン・マックグロウ/ジェレミー・デイヴィス

ジャンル:即死ゲー風ジュブナイルなサイコスリラー

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

1978年のアメリカに住むフィニー君は、可愛いくて肝っ玉な妹のグウェンと、アル中でDV気味な父と暮らすいじめられっ子。


少年野球ではエグい球を投げれるし、ケンカが鬼強い友人のロビンからも一目置かれているお利口さんなのだが、いかんせんネガティブ思考で気が弱い。


そんな彼らが暮らす街では、少し前から少年の連続誘拐事件が起きていた。

誘拐現場にはほぼ毎回、真っ黒な風船が落ちている。

しかし、手がかりはそれだけだった。


誘拐犯はグラバーと呼ばれ、子どもたちから恐れられていた。


そんなある日、ロビンが失踪してしまう。

気落ちするフィニーだったが、それから間もなく、学校からの帰宅途中に変なオッサンと遭遇。

オッサンは買い物袋らしき紙袋から、ド派手に商品をぶちまけていた。

手品師だというオッサンのグイグイ来るノリに困りつつ、妙に冷めた半笑いで応対していたフィニーは、ふとオッサンの車を見た。


――真っ黒な風船が、目いっぱい突っ込まれていたのだ。


あっと思った瞬間にはもう遅く、フィニーはオッサンことグラバーに誘拐されて、地下室に監禁された。

それでもちゃっかり、グラバーにまあまあ深い手傷を負わせたフィニー。


だが頭がいい彼は、ここですぐに諦念ていねんムードになってしまう。

もうちょっと粘れや。

そんなネガティブ思考な彼の近くには、電話線が切れた壁掛けの黒電話があった。


しかし突然、その黒電話がけたたましく鳴り響く。

おそるおそる電話に出たフィニーは、受話器から聞こえる声に覚えがあった。

声の主は少年野球で対戦したブルースという少年で、グラバーによって誘拐された被害者ともくされていた。


一方その頃、妹のグウェンはブルースが誘拐されて殺されるまでの記憶と、そして連れ去られるフィニーを夢に見ていた。

母親譲りの予知夢能力で、グウェンはフィニー探しを始める。


地上で妹が頑張っていることなど露知らず、フィニーは黒電話を通じて、これまでに殺された少年たちから脱出のヒントを与えられていた。

世間に揉まれきった社会人が如き諦めの早さを見せるフィニー少年は、無事生き延びることが出来るのか。



【登場人物】

フィニー:

自作ロケットをかっ飛ばす、ロケット大好きボーイ。

本人はいじめられっ子なのだが、野球をすればいい球を投げるし、頭もめちゃめちゃいいらしい。

しかし頭が良すぎるが故か、めっちゃ諦めも早い。

よく言えば分別のある子どもだけれど、悪く言えばちっちゃくまとまりがち。

そんな彼だが、黒電話を通じて被害者少年たちの無念と経験を溜め込み……最後に大爆発ですよ。

ロビン君との最後の会話、なんていうか切ない以上にカッコいい。

その後で覚悟がガン決まった仁王立ちスタイルは、雄々しいの化身。


グウェン:

超肝が据わった妹ちゃん。ポンチョ姿が可愛い。

親父から激しめ折檻せっかんを受けた報復とばかりに、親父の大事なウォッカ入り瓶をぶっ壊す胆力に、マジ痺れた……

そんな彼女は母譲りの予知夢パワーで、連れ去られたお兄ちゃんを探し回る。

そして美少女+肝っ玉ちゃん故か、普通にお巡りさんからも信頼されてる。すごっ。


ブレイク氏:

核施設で働く、フィニーとグウェンのパッパ。

そして、呑んだくれのクソ親父。

子供たちにも超威圧的で、マジクソ野郎……と思いきや、彼は彼なりに子供たち (特に亡き妻似のグウェン)のことをめっちゃ心配していることが、グウェンとのパートで明らかになっていく。

完結後は、3人で幸せになってくれ……


ロビン:

フィニーの前にさらわれた少年。この子も恐ろしく肝が据わっていて喧嘩慣れしていて、そしてクッソ強い。

喧嘩相手をぶっ飛ばした後、自尊心も丁寧に折る姿勢には感服しかない。

この映画、覚悟の決まった子どもが出がち。

フィニーをいじめっ子たちから守る一方で、ロビンは彼から勉強を教えてもらっているようで、案外持ちつ持たれつな関係のようだ。


グラバー:

変なお面を被った誘拐犯。

引くほど情緒不安定で、誘拐して来たフィニーに対してもかなりウザい絡み方をしてくる。

中身は中年サラリーマンなフィニー以外の少年が殺されたのも、あのウザさを見れば納得である。

普通の子どもは、アレに耐えれんわ。

ちなみにお面は色んなデザインがあり、中にはセパレートタイプも。

テッカテカの上半身を晒して、腕組みして椅子に座ってる姿は物々しさ <<<< 面白み。


マックス:

おクスリを決めながら、勝手にグラバー事件を追いかける変な一般人。

登場シーンはめっちゃ少ないながら、インパクトがすごい。

……この映画、大人はヤベー奴が出がち。



【感想など】

拉致監禁 (そして迫る殺害)という、初見殺し過ぎる極限状況下において、先達せんだつの失敗を糧にして生き抜くフィニー君、カッコよすぎか……!


冒頭~誘拐されるまでは、本当に不憫なんですよ。


予知夢に振り回されて死を選んだお母さんが暗い影を落としているのか、お父さんは酒浸り気味ですぐに暴力を振るい。

家ではグウェンちゃんと共に、かすかな物音すら立てないように怯えて暮らす日々で。


そして学校に行けば、クソみたいないじめっ子×3に追われる日々。


数少ない心の拠り所だったロビン君も、ある日グラバーに誘拐され。


苛烈になるいじめで流血事案となった挙句、自分も誘拐されると来た。踏んだり蹴ったりか!


しかしここからが凄いのです。

初見殺しを死者からのお電話でギリギリ回避したり、みんなが失敗した脱出方法に再挑戦したり、どんどん攻めていく。


その攻めっぷりから、さすがにグラバーからもお仕置きが下されるけれど、ここでポッキリ折れる前にロビンから電話が入るのですよ!


彼がどれだけ自分を信じてくれていたのかを、通話の中で知ったフィニーはもう怖いものなし!

アニメ『グレンラガン』よろしく、「俺の信じるお前を信じろ!」なのですよ!

ホラーなのに熱すぎんか!?


おまけに今までの犠牲者ともの無念も無駄にはせぬ!とばかりに、最後の最後に余すところなくフル活用!

その様はさながら、ホラー版「これはヤムチャの分!」です。

ガン決まりフェイスで一転、グラバーを相手取って一歩も引かずにラッシュ攻めするフィニー君が素敵すぎた。


ハッピーエンドで終わるホラー系は、少ないながらも一応あります。

ですがここまで熱い気持ちになった映画は、超レア。貴重。


これはもちろんフィクション限定ですが、子どもがえげつない目に遭う展開が好きです。

そしてえげつない目に遭った子どもが勝利をもぎ取るのは、もっと好きです。

むしろ子どもの完全勝利見たさに、えげつない展開を待っている節があります。最高のジャイアントキリングですもの。

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