【作品情報】
原題:金の国 水の国
製作:2023年/117分/日本
監督:渡邉こと乃
出演:浜辺美波/賀来賢人/銀河万丈
ジャンル:おとぎ話テイストなファンタジー
(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)
【ざっくりあらすじ】
長年ペットのウンチ問題等々で争っている、砂漠の商業国家アルハミドと、自然豊かな貧乏国バイカリ。
両国は長年の小競り合いの末に、アルハミドは国一番の美女を嫁に出し、バイカリは国一番の賢い若者を婿に出すことで、かりそめの平和を築く道を選んだ。
しかしアルハミドが送り出した美女は可愛い子猫で、バイカリが送り出した賢者はお利口さんな子犬だった。
――うん、あながち間違ってはいないんだけど、国際問題だよね。
ってか両国の首長、大人げない。さすがウンチで、長年争うだけのことはある。両国民、まずはクーデターを起こすべきでは?
即座に開戦待ったなしかと思われたが、お利口さんの結婚相手に選ばれていた、アルハミド国第93王女のサーラは
「このことが知られたら、ワンちゃんが殺されちゃうし、戦争になっちゃうし」
と、子犬にルクマンと名付けて、口をつぐむことを選んだ。
一方、子猫の引き取り手となったバイカリの無職青年ナランバヤルも、そのまま子猫に
二人は偶然、ルクマンがバイカリ側に迷い込んだ際に出会った。
その前に第1王女の姉から「バイカリの婿見せなさいよ」コールを受けて困り果てていたサーラは、ナランバヤルに婿殿のフリをして欲しいと頼み込むことに。
貧乏国 (の職なし技師)で長年栄養に飢えていたナランバヤルも、サーラに振る舞ってもらった豪華な食事につられたのか、はたまた彼女にほだされたのか、二つ返事で承諾。
第1王女レオポルディーネとその愛人である、イケメンお飾り左大臣のサラディーンと出会ったことで、ナランバヤルはアルハミドの水源枯渇問題が相当ひっ迫していることを知る。
また、バイカリの天然資源 (特に水場)を目当てにしている開戦派が幅を利かせており、その筆頭が国王――美女の代わりに子猫を送った張本人であるということにも気付いた。
しかし家族に美味しいご飯を食べさせたい、そして優しいサーラに苦労をさせたくない、と考えたナランバヤルは、反戦派のサラディーンと手を組み、両国の国交を開こうと持ち掛ける。
国交を開き、最終的にはバイカリからアルハミドへの水路を築くことが、彼の夢だったのだ。
二国の未来と、そしてサーラとナランバヤルの恋路は、果たしてどうなるのか。
【登場人物】
サーラ:
水 (と一途な愛)以外なら何でも手に入ると言われている、お金持ち国家のぽっちゃりお姫様。
しかし妾の産んだ末端姫のため、普段は捨て置かれているようで。
国境沿いの町にて、ばあやと二人暮らし。
食べるの大好きなおっとりお嬢さんと思いきや、超酒豪。あと結構図太い、というかタフ。
ナランバヤル:
水しかない貧乏国家の、腕っぷしはからきしだけど地頭がいいお調子者。
元々設計技師だったけれど、戦争のあおりで現在は失業中。
本人曰く女性の守備範囲は広いらしく、事実初対面のサーラからオドンチメグの名前を褒められて即ときめいた。チョロすぎぃ!
ルクマン:
国一番のお利口さんの代わりに送られた、サーラのきゃわわな愛犬。
粗相はしちゃうけど、警察犬もかくやの探索能力もお持ちだし、たしかにお利口さん。
お昼ご飯が高級カルビなのは、私も超羨ましい。
オドンチメグ:
国一番の美女の代わりに送られた、ナランバヤルのきゃわわな愛猫。
猫の美は人間を遥かに凌駕するので、たしかにド美女ではある。
ナランバヤルに一途で、帰りが遅くなった彼を待つ時の後頭部がマジで可愛い。
ここの絵コンテを描かれたスタッフさん、絶対猫好き。猫狂いの私には分かる。
レオポルディーネ:
顔がちょっとギリシャ彫刻っぽい、お金持ち国家のナンバー2っぽい第1王女。
イケメン左大臣をはべらせて女帝感も半端ないんだけど、国を大事に想う気持ちもきっと強い、思いの外まともでいい人。
あと人を見る目も、たぶんめっちゃある。
サラディーン:
元遊牧民の俳優で、興行中に立ち寄ったアルハミドでレオポルディーネに気に入られ、そのままお飾り大臣になったイケメン。
他国の人なので、ナランバヤルに対しても初手から好意的だった。
当初は顔だけで生きるつもりだったけど、ナランバヤルに発破をかけられて、国交を開くべく奮闘。
ライララ:
レオポルディーネの腹心である、素顔・年齢不詳の女性暗殺者。
彼女と後述のバウラは、他と比べてびっくりするぐらい作画が簡単。
ライララの声を担当された沢城みゆきさんが、「一筆書きで描けそう」とインタビューで答えられてて、同意しかない。
そんな気の抜けたビジュアルなのに、めっちゃカッコいい。好き。
バウラ:
泥棒ヒゲを生やした、国王派である右大臣の親衛隊メンバー。
ひょんなことからライララに脅され、最終的にナランバヤルたちに協力することに。
この人もシンプル顔で出番も少ないのですが、ライララと同じく超カッコいい。好き。
ラスタバン三世:
片頭痛持ちの、アルハミド国王。
開戦派のトップであり、バイカリの自然を狙っている。
何やら自分の名前にコンプレックスがある様子。
あと作中で誰にも触れられてないけど、少なくとも子供が93人いる性豪。エロゲーの主人公かよ。
オドゥニ・オルドゥ:
美少年大好きな、バイカリ族長。
美少女も割とイケる様子で、サーラのことをアルハミドから来た美人嫁と勘違いした時は露骨にガッカリしていた。
……そして、その代償はデカかった。
上記のオドゥニの接待役として、突如現れる歌舞伎町テイストが強すぎるイケメンコンビ。
ちなみに聖哉は新婚で、皇至は逆玉が内定の身。
映画版では絶対オミットされるキャラだろうなと思ったら、ちゃんといて感動した。
【感想など】
賀来賢人さんは化け物かな?
原作ファンだったので、主演二人が声優さんじゃないと知った時は不安がよぎり。
初めて予告編で喋る二人を見た際に、ようやく「ちゃんと演技出来てるっぽい……」と一安心し。
とはいえ、どちらもプロではないので。
「そこそこ聞ける演技だけど、ちょいちょい舌っ足らずになったり、声がこもったりするんだろうな」
ぐらいには思っていたのですよ。
生身での演技とは、色々勝手が違うということは、何かで読んだこともあったので。
そしたら、浜辺さんは時折舌が覚束なくなりつつも、演技はこちらの期待値をちゃーんと上回って下さいました。
映画に没入する際のノイズにもならず、安心できる演技力。すげぇ。
と思ってたら、賀来賢人さんはそもそも安心とかいう次元じゃない。
俳優であるという事実が、鑑賞中に一切出てこない。
完全に声優、いえ、ナランバヤル当人。
ナランバヤル(CV:賀来賢人)でなく、ナランバヤル(CV:ナランバヤル)なの。
今後も声優業続けてください。本当にお願いします。
あ、もちろん、主演の周りを固めるのは凄腕声優さんばかりなので、クセ強なキャラも上手く乗りこなして下さってます。
こちらも不安なんて、微塵もございません。
そして絵も、絵もめちゃめちゃいいんです。
ちゃんと岩本ナオ先生の絵を土台に、ブラッシュアップされてるんですよ。
モノクロの原作では分からなかった両国の違いが、映画ではめっちゃ「金はあるが水がねぇ!」「こちとら貧乏でぇ!」と、土地・文化共に明確に描かれていて素晴らしかったです。
加えてサーラとナランバヤルの、初々しい恋愛模様も愛らしさ・切なさ倍増で、こちらも大変マーベラス。
BGMでも、アルハミドは中東風・バイカリはアジア風と、きちんと特徴づけがされています。
こういう気遣いって、いいですねぇ。
ストーリーも枝葉を時々端折りつつも、全体として非常に丁寧にまとめて下さっています。
が、いくつか変更点もありまして。
一番の違いが、両国に名前がついたこと(原作ではアルハミド=A国、バイカリ=B国と、星新一テイスト溢れる名前)ですが。
サーラがバイカリに一時滞在したこと(このエピソードは原作通りです)を、開戦派の右大臣に知られるという展開が盛り込まれたんですよ。
結果、サーラの身も危うくなる。
このことにより、王宮で開戦派から逃げるナランバヤルとサーラの危機感がマシマシになり、安全性が疑わしい隠し通路を通る/通らない問題もより深刻になったのです。
ぶっちゃけて言えば、原作では隠し通路を渡らなくてもサーラの身の安全は確保されているはずですから。
おかげで!
あの、隠し通路での!
「もし落ちるなら、一緒に落ちよう」という、ナランバヤルの台詞――いえ愛の告白の!
男前度も爆々々増ですよ!
脚本を書かれた方、神じゃん!
原作を読んだ際からナランバヤル推しだったのですが、賀来賢人さんと脚本の坪田文さんのおかげで、更に推せました。
お前もう、国一番のお利口さんどころか、大陸一のいい男だよ。