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『ラストナイト・イン・ソーホー』

【作品情報】

原題:Last Night In Soho

製作:2021年/117分/イギリス

監督:エドガー・ライト

出演:トーマシン・マッケンジー/アニャ・テイラー=ジョイ/マット・スミス

ジャンル:おサイコ気味なホラー(幽霊もちゃんといるよ!)

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

1960年代ラブな、イギリスの片田舎に住む霊感少女のエロイーズ(通称:エリー)。

デザイナーを目指す彼女は、晴れてロンドンの大学の服飾科に合格。


自分でデザインしたレトロ可愛いお洋服を着て、喜び勇んでロンドンへ行くも――同級生はパリピが多く、おまけに寮のルームメイトは、田舎出身のエリーを馬鹿にしまくる超ビッチだった。クソが!


こんなとこでやってられるか!と、彼女は寮を早々に飛び出して、下宿人を募集していたコリンズ夫人のご厄介となることに。

屋根裏の部屋はトイレ・風呂・キッチンも完備で、夏場に排水が臭いことと、隣のフランス料理店のネオンとニンニク臭がつよつよなことを除けば、なかなか住み心地もよかった。

……いや、個人的にはかなりのマイナスポイントだけども。特にネオン、寝れん。無理。


ともかく奨学生のエリーは大満足で、その屋根裏部屋に移住。

そしてその夜、不思議な夢を見た。


夢の中でエリーは60年代のロンドンにいた。

そこで歌手を目指す、サンディという美しいブロンドの少女と出会う。

自分の夢を実現するため、ひたすら前を見続ける自信たっぷりな彼女の姿に憧れ、エリーはヘアスタイルやファッションでサンディを真似るように。


また夢の中でサンディが着ていたドレスを、授業中にデザインすると先生から大好評だった。

徐々にロンドンでの暮らしに馴染みつつあるエリーだったが、その一方で夢の中のサンディの人生には、影が差し始める。


「歌手になるためなら、これぐらいやって当然」という言い訳をかざす男たちから、心と体を搾取されるようになるサンディ――自信に満ちて輝いていた彼女が、少しずつ、己を切り売りする中で荒んでいく。


彼女とシンクロしていたエリーも、その影響でどんどん情緒不安に。

また、サンディの夢は現実にも浸食していき、エリーは起きている間も幻影に苛まれるようになっていく。

そしてとうとう、ハロウィンの夜に事件が起こった。



【登場人物】

エロイーズ(エリー):

レトロファッション好きな人間からしたら、ロンドン上京時の服もめちゃめちゃ可愛くて、それを馬鹿にするビッチどもの感性が意味分からん。

エリーちゃん本人もめっちゃ綺麗やし、絶対嫉妬やん。

最初は素朴ちゃんで、サンディと出会ってから垢ぬけて、その後はサンディの精神状態に合わせてどんどん黒ばっか着るようになって、最終的にアヴリル・ラヴィーンさんみたいになってた。それはそれで可愛い。


サンディ:

60年代の、原色バリバリの華やかロンドンでの成り上がりを夢見る女の子。

バッシバシのまつ毛でウィンクするのが、めちゃ可愛い。

攻め姿勢のファッションや性格だけど、それでも見ず知らずの男たちに弄ばれる日々は、苦痛でしかなかった……と、思いきや!

彼女とエリーが住んだ、屋根裏部屋の窓から差し込むネオンのように、次々と色んな一面を魅せてくれる悲しい歌姫。


ジョン:

エリーのクラスメイト。

初登場時は、寮の玄関に座り込んでリンゴ丸かじりという、「あかんコイツ、ちょっと変なヤツやん」感満点だけど、実際は作中一の善人。

この映画の良心。

そしてラストではちゃっかり、エリーのグランマと仲良しになっている。

外堀から埋めるとは、やるなお主!


ジャック:

サンディが憧れる「カフェ・ド・パリ」の歌手を取りまとめる男性。

……のはずなのだが、実際にやってることは女衒ぜげん

で、そのことに気付いたサンディが抵抗すると、もちろん暴力に打って出る。

コイツまじで、どうしようもないな!

なお演者が11代目ドクター・フーだったので、正直ちょっと嬉しかったです。


コリンズ:

エリーがお世話になる下宿の大家さん。

エリーが毎晩60年代のレコードをガンガンかけて寝てても、「懐かしくていいわぁ」とのほほん流してくれる大らかな人。

下宿人がある日突然パツキンになっても、もちろん「ええやん!」と全肯定。

しかしその割には、男の連れ込みは厳禁。貞淑!


エリーのグランマ:

父親が分からず、おまけに幼くして母も亡くしたエリーを育ててくれた、優しくてキュートなマダム。

エリーの母もデザイナー志望で、しかしロンドンで夢を追いかけた末に心を壊してしまったらしく、エリーを応援しつつも超心配している模様。

おばあちゃんっ子だった私は、エリーとグランマの電話のシーンだけで泣きそうになった。

この映画の良心その2。


クソビッチ:

ジョカスタという名前らしいけど、私はずっと「肩幅ひろ子」と呼んでおりました。

肩幅広めの、ワンレンロングなクソビッチ。

それ以上でもそれ以下でもない存在。



【感想など】

憧れのロンドンで出鼻をくじかれた女の子が、夢の中で素敵な女の子と出会って影響を受けて、めきめき自分も輝いて行くファンタジー……と見せかけての、ファッキン現実ゥゥゥーッ!!


サンディとエリーの心をズタズタに切り裂いていく非情なロンドンなのに、なんか映像がオシャレ過ぎて、うっとりしちゃう。悔しい。


赤・青・白と、次々変わっていくネオンに照らされる憔悴美少女の、悲しさと美しさよ……


でも食いものにされるだけでなく、一矢報いていたサンディ。

いや、一矢どころではないかも。

……うん、千矢ぐらい打ち込んでますな。


彼女の行動は賛否あるんだろうけど、私はエリーと一緒にサンディを抱きしめたくなりました。

誰一人味方も理解者もいない中で、自分を守るためにあの方法を取ったと思うと……駄目、泣けてきた。

薄幸の美少女を、誰が責められるというのか!

ワイには無理!


60年代当時、サンディにエリーのような友だちがいれば、きっとその後の運命も変わってたんだろうなぁ。


来る日も来る日も男たちに汚されて、どんどん服もけばけばしくなっていったサンディ。

それでもラストシーンで鏡に映った彼女が、最初に着ていた素敵なドレス姿でエリーにウィンクしてくれて、こっちも何だか救われました。


とにかくオシャレで、でもエリーが幻影に追い詰められていく様はガチで怖いし、ついでに人間もひたすら怖いし、そして最後のエリーとサンディの交流に泣けて来て。

うん、めっちゃいい映画。


ってか、今作の監督と『ショーン・オブ・ザ・デッド』の監督が同一人物というのが、一番信じられん。

小汚いオッサン、全然出て来ませんやん!

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