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『ブラック・ボックス』

【作品情報】

原題:Black Box

製作:2020年/100分/アメリカ

監督:エマニュエル・オセイ=クフォー

出演:マムドゥ・アチー/フィリシア・ラシャド/アマンダ・クリスティーン

ジャンル:ホラー

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

カメラマンのノーランは交通事故に遭い、最愛の妻を亡くしたうえに記憶喪失を患っていた。

おかげで物忘れも激しく、娘のエヴァからもプリプリされる日々。


また長年勤めた会社からも、事故の後遺症を理由に解雇される羽目に。

記憶がないためか、トボけた脳にも現実は非情過ぎるためか、ノーランは度々カッとするようにもなっていた。

そのためオシャな家の壁のあちこちには、ノーランが拳で作った穴も発生していた。そんなインテリア、要らぬ。


これでは駄目だと思ったノーランは、ブルックスという女性医師による最先端治療を受けることを決意。

この治療法は、ブラック・ボックスというVR機器によって患者の記憶や深層心理を映像化するものだった。正直眉唾まゆつばモノであるが、わらにもすがる思いのノーランだった。


ブラック・ボックスを使った治療の中で、ノーランは結婚式の風景を思い出す。

しかし妻の顔も、参列者の顔もぼやけており、誰が誰だか分からない。

また骨をボキボキ言わせながら迫りくる、自分と同じ服を着た謎の男?にも襲われた。


ブルックス医師は「ボキボキ野郎は心の防衛反応だから、気にするな」と言うも、何か違和感を覚えるノーラン。

また次の治療では、全く覚えのないアパートに飛ばされる。だが室内の様子も、室外の様子も、覚えがないはずなのに鮮明で、懐かしさもあった。


アパートの中では、エヴァと思しき赤ん坊が号泣し、食器が割れ、妻らしき女性は腕を負傷してうなだれている。相変わらず顔はぼやけているが、彼女が怯えていることはたしかだ。

自分が妻に、暴力を振るったのだろうか。


一方、ノーランの長年の友人である医師のゲイリーは、事故以来人が変わったかのようなノーランの様子と、ブルックスの治療内容に疑問を持つように。

ノーランが事故に遭った際のカルテを見返していた彼は、あることに気付く。


ノーランは一度、脳死状態となっていた。

しかしその直後、何故かブルックスの研究室に運び込まれ、そこで意識を取り戻していたのだ。


事故の日、ブルックスはノーランに、一体何をしたのか?


やがて自身の記憶に潜っていたノーランも、ある事実を思い出す――



【登場人物】

ノーラン:

事故前は愛妻家で子煩悩で、そして有能な写真家だった。

友人のゲイリーからも、「ちょっとキモいぐらい奥さんとラブラブだった」と言われる始末。

またボクシングなどの、暴力行為も苦手だった。

しかし現在はカッとなるとすぐ、バイオレンスに打って出る粗暴さも見え隠れ。

無職なんだし、今すぐ壁殴り代行業を始めるべき。

もちろんこの暴力性は、事故で脳が欠けちゃったため、とかではありません。ホラーなので。


エヴァ:

両親が健在だった頃の、大変ラブい写真をタブレットの待ち受けにしている気丈な女の子。

口が達者でしっかり者で、まだ年端もいかぬ女の子なのに、事故でボンクラになったパパの世話を甲斐甲斐しく焼いている。

お夕飯のメニューに豆苗の炒め物を選んだり、ちょいちょい言動がおばちゃんっぽい。

なお、お箸の扱いはヘタッピ。


ゲイリー:

ノーランのマブダチで、事故った彼の治療も担当していた整形外科医。めっちゃいいお家に住んでいる。

ノーランの愛妻ぶりに感化され、結婚を決断したらしい。

エヴァとも大変仲が良く、性格の変わった父に翻弄される彼女を慰めたりと、めっちゃいい人。

ただ私と母からは、「こいつ絶対裏があるって」と疑われ続けていた。その節は誠に申し訳ない。


ブルックス:

ブラック・ボックスなる謎機械を使った治療法を、しきりにノーランに進めていた女性医師。

治療によって蘇った、不気味で不可解な記憶に戸惑うノーランを励まし続ける。

……のだが、アドバイスが全然役に立っていなかったりするので、「大丈夫かコイツ」と思わせるマダム。



【感想など】

あらヤダ、そう来たかぁぁー!

――と、ノーランが抱き続けていた違和感の原因が分かった瞬間、全力でブリッジしちゃいました。


「いやいや、無理やろ。そうはならんやろ」とも思っちゃうタネ&仕掛けでもあったのですが、実際「なっとるやろがい!」でありまして。

またなんか、妙に説得力というか圧があるので、訝しみつつも納得しちゃいました。


深層心理という、突拍子もなさすぎる空間にさらされ続けていたので、こちらのリアルに対するハードルも下がったんでしょうか。

だとしたら監督の手のひらで、コロコロ転がりまくってます。転がり過ぎて、苔が付く暇もなしです。


そしてタネが分かった瞬間、ノーランの印象というか表情というか、とにかく彼の全体像がガラリと変わって……細かく申し上げるとネタバレになっちゃうのですが。

ただ、俳優さんスゲェや、と感動。


少し物悲しさも残る、ラストのノーランの表情もいいですよねぇ。


彼がエヴァちゃんの髪を、今までのように上手く結べなかったり。

また2人のフィスト・バンプ(拳と拳を付き合わせて、その後もワチャワチャするアレ)が、全然噛み合わなかったり。

そういう些細な齟齬そごもちゃんと本筋につながっていくので、細かく観ていただけると一層面白いかと。

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