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『シン・ウルトラマン』

【作品情報】

原題:シン・ウルトラマン

製作:2022年/113分/日本

監督:樋口真嗣

出演:斎藤工/長澤まさみ/有岡大貴

ジャンル:SF特撮

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

巨大生物改め禍威獣かいじゅうに悩まされている日本。

禍威獣専門部署である禍特対かとくたいはその日も、ガボラと命名された禍威獣の対処に当たっていた。


ガボラへの有効な武器や手段が見つけられずに懊悩していると、突然銀色の巨人が飛来。

謎の光線を放ち、ガボラをあっさりと瞬殺した。


巨人には人類への悪意が見られないどころか、むしろこちらを気遣ってくれている模様。

禍威獣とは違う知性を感じる彼?を、「外星人ウルトラマン」と呼ぶことに。


一方、禍特対の隊員である神永かみながは、逃げ遅れた子供をガボラから保護するため単独行動に出た際、運悪くウルトラマンに遭遇。

ウルトラマンのダイナミック着地の衝撃で、巻き上げられた岩石から子どもを守り、呆気なく死亡。

躊躇なく他人のために命を捨てた、神永の行動に興味を持ったウルトラマンは、彼との融合を決意した。


ウルトラマンの登場により、禍特対に新メンバーの浅見あさみがやって来る。

神永 (中の人:ウルトラマン)の奇行に若干引きつつ、彼や他のメンバーとも仲を深めていく浅見。

そして同時に神永もまた、人間という種族の生き方・行動理念を知っていく。


だがそんな中、神永=ウルトラマンということが、ネットに流出した動画によって判明。

「どういうこっちゃ!」と禍特対や国のお偉い様方が混乱する中、外星人2号であるザラブまで登場。

ザラブは「私たち友好的ですよー」と言いつつ、電磁波をまき散らして禍特対との接触を図った。


しかしもちろん、有効的なわけがなく。

ザラブの目的は地球を奪うため、人類を煽っての同士討ちだった。


このことを察知した神永だったが、ザラブにハメられて誘拐されてしまう。

ウルトラマンの動きを封じたザラブは、自らウルトラマンに化けて大暴れ。

そして「ウルトラマン、ヤバイでしょ? ほら、私と仲良くしましょうよ」とマッチポンプをかましつつ、日本政府に不平等条約を迫る。


ウルトラマンが偽者だと看破した禍特対は、神永 (生前)の同僚の力も借りて、神永が監禁されている場所を特定。

チェーンソーを操る浅見によって、無事神永は救助される。

そして復活を果たしたウルトラマンは、ニセウルトラマンの正体を晒した末、断罪チョップ&光輪でSATSUGAI。


だが、ウルトラマンが神永だということは、世間にも知れ渡っていた。

居場所がなくなり、姿を消す神永。


それでも外星人は放っておいてくれず、今度はメフィラス星人まで現れる。

おまけに、ウルトラマンそっくりの金色巨人までやって来て……?

ウルトラマンや禍特対メンバーは、地球を守ることが出来るのだろうか。



【登場人物】

神永:

主人公にして、禍特対のメンバー。

物語冒頭で逃げ遅れたお子さんを助けた際にうっかり死んで、なんやかんやでウルトラマンと合体する羽目になる人。

そのため物語はほぼほぼ、中身ウルトラマンで進む。

だから奇行が多い。

しかし新入りの浅見以外は、そのことに一切触れない。

田村班長によると、どんな時も足取りを残さないタイプだったらしいので、以前から変人だったのだろう。

あと、机の上にテトラポッドがあるのは何故。何かの結界?


浅見:

ウルトラマンが登場したため、禍特対に途中参加する女性。得物はチェーンソー。

神永とバディを組まされるも、前述の通り奇行・スタンドプレイの象徴みたいな状態のため振り回されまくる。

おまけに洗脳?された状態で巨大化し、東京を練り歩く羽目に。

タイトスカート姿で。

そう、タイトスカート姿で!しかも上段蹴りも披露するのです!

観てて「あー!おパンツ、あー!」と一人慌てていました。

もちろん見事なカメラワークで、おパンツは守られます。


たき

禍特対のオタク君で、見た感じ最年少。

ゼットンが登場した時は誰よりも狼狽し、そして弱音を吐いていたのも、若さゆえか。

それでも神永と船縁の励ましで立ち直り、ゼットン打倒の希望を見つけた功労者。


船縁ふなべり

禍特対の眼鏡お姉さん。お口が達者。

外星人ザラブのせいでPCのデータがぶっ飛んだ時は、ピー音付きでお上を罵倒していた。

あとストレスは食べて発散するタイプらしい。仲間だ。

しかし自分よりいっぱいいっぱいな滝をさり気なくフォローしたり、要所要所で漂う母性がいい。


田村たむら

演者が演者のため、「実は公安なのでは。実は裏切るのでは」とか思ってたら、リーダーシップに優れた頼れる善人班長でした。公安は、むしろ神永と浅見ですしね。

全員やや変わり者な禍特対の中では、一番まとも&エリートオーラが溢れており、デスク周りも実際超普通 (禍特対の、絶妙なクオリティのマスコットは置いてあるけど)。

その一方で、神永提案の無茶ぶりにも即ライドオンしてくれる、結構思い切りのよいダンディ。


宗像むなかた

禍特対の室長。

部下たちが円滑に仕事をできるよう、現場には出ず、日々根回しに明け暮れている陰の功労者。

それでも部下には愚痴一つ言わないので、この人もすげぇ。


神永の元同僚:

出番はめっちゃ少ないけど、この人がいないと詰んでた。

そしてすっごい有能。

この人のスピンオフが正直観たい。


ザラブ:

ペランペランな外星人。CVツダケンさん。

出て来る度に電磁波をまき散らすらしく、そのせいで彼との会談時はいつも周囲が停電している。キャンドルとか用意しては?

ついでに、ニセウルトラマンになって大暴れもしちゃう。


メフィラス:

かの有名なメフィラス構文の生みの親にして、自称「外星人0号」。

割り勘文化を知っていたり、ノリノリでブランコを漕いだり、どちゃくそ日本での生活に染まっている節があるので、滞在歴はたしかに長そうである。

キュゥべえ的手口で日本政府の篭絡を狙いつつ、浅見の恥動画をネカフェから一瞬で削除したりと色々有能。さすが、高度な文明のお人は違いますなぁ。

なお、彼とウルトラマンの戦闘BGMがほんとカッコいい。


ゾーフィ:

ウルトラマンと同郷の、金色Verなウルトラ巨人。

しかし地球人への評価は真逆であり、こちらは速やかな駆逐を決定することに。ドイヒー。

余談ですが、「ゾーフィ?ゾフィーでなく?」と思ってググったら、ゾーフィ爆誕までのゾフィーの超不遇エピソードに泣きました。長兄ェ……

そしてそんなエピソードを、よくもまぁ拾ったもんだ、と感心しつつちょっと引きました。


庵野秀明:

ご存知エヴァの人で、本作の脚本担当――なのですが、エンドロールのあちこちに名前があって、面白いを通り越して「庵野さん、過労死するのでは……?」と不安になりました。ウルトラマンへの愛がすごい。



【感想など】

大の大人たちが真顔で「仲間」や「希望」とか言っても、なんか違和感なく受け入れちゃう。不思議な特撮映画。

しかも全員スーツ with PCな超現代的仕様。


きっと、そのリアルと空想科学の塩梅がいいんでしょうね。

『シン・ゴジラ』で培われたであろう、「実際に怪獣が出たら、国や自衛隊はこう動くはずだ」という現実的な思考で作った土台にウルトラマンを立たせているので、安心感があります。


当方、小さい頃に初代ウルトラマンやセブン、エース、80辺りを少々嗜んだ程度の、ウルトラマン初心者です。

(しかも一番好きなウルトラマンが『ウルトラマングラフィティ』という)

それでも「あ、OPが『ウルトラQ』風だ! あ、このBGM聴いたことある!」とキャッホイする瞬間があったので、きっと長年のファンにはたまらないシーンもいっぱいあるんだろうな、ということが伺えました。


ここもすごいですよね。

一見さんでも楽しめて、そして常連さんも同じく楽しめる。気遣いが素晴らしい。


また主人公は神永=ウルトラマンだけど、視点はむしろ他の禍特対メンバーのため、外星人や禍威獣と比べて無力な彼らの、それでも折れない頑張りを追いかけ続けることになる。


よって観客は、ウルトラマンとリンクするように禍特対メンバーへの愛着が沸く。

だからほとんど内面が描かれていないウルトラマンの、禍特対を始めとする人類への無償の愛を唐突に示されても、こちらもなんか許せちゃう。納得しちゃう。


そんな具合なので、エンドロールで流れる主題歌の「M八七」が刺さります。

ウルトラマンから人類への愛と歌詞がリンクして、たまらず泣いてしまいました。


緻密な計算と気遣いに満ち溢れた映画ですが、ちょいちょい遊び心もあって、これもまた楽しい。


一回ブランコを降りたのに、今度は嬉々として立ち漕ぎを始めるメフィラスや。

「メフィラスさん、インキュベーターじゃん」と思ったら、さり気なくヤツのシルエットがプリントされたマグカップが出て来たり。

色々あって神永にクンカクンカされる辱めを受ける浅見と、それを何とも言えない虚無顔で見守る他のメンバーなどなど。


理論でギッチギチなだけではない、合間に挟まれる息抜きもまた、禍特対メンバーや外星人たちへの好感度をアップさせてくれます。

『シン・ゴジラ』も、もう一回観たくなりました。

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