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『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

【作品情報】

原題:The Batman

製作:2022年/175分/アメリカ

監督:マット・リーヴス

出演:ロバート・パティンソン/ゾーイ・クラヴィッツ/ポール・ダノ

ジャンル:アクションというよりも、ミステリーなヒーローもの

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

市長選を間近に控えたゴッサムシティで、現市長のミッチェル氏が自宅で殺された。

現場に「To The Batmanバットマンへ☆」と書かれたメッセージカードが残されていたことから、ゴードン警部補に呼ばれたバットマン。


彼はそこに記された暗号から、殺人犯リドラーの残したUSBメモリを発見。

USBには、クラブ「アイスバーグ・ラウンジ」の女の子を無理やり連れまわすミッチェル氏の、隠し撮り写真が記録されていた。

麻薬撲滅を目指し、家族を愛する清廉潔白な人物だと思われていたミッチェル氏は、とんだクズ野郎だったのだ。


リドラーはその後も、ゴッサム市警の本部長と検事も殺害する。

その現場に残されたヒントと、被害者たちが出入りしていたアイスバーグ・ラウンジで働く泥棒のセリーナの協力を得て、バットマンは事件を追う。


被害者たちはいずれも、麻薬王マローネの逮捕に関係していた。

また、その逮捕劇の裏側で「ネズミ」と呼ばれるスパイがいたことも、リドラーは示唆する。


ネズミとは誰なのか、マローネの逮捕にはどんな闇が潜んでいるのか。

事件を追う過程で、バットマンことブルースは、自身のトラウマである両親の死の真相も知ることになる。



【登場人物】

バットマン/ブルース・ウェイン:

ゴッサムシティの若き実業家。

本作ではバットマン歴2年で、御年30歳ということで、本当にお若い。

ちなみに夜型生活になっちゃったため、ブルースとして外を歩くことはおろか、自分の会社の会計士さんと会うことも面倒くさがる駄目っぷりを見せている。可愛い。

しかもそのおかげで、バットマンとしても「最近、夜道で見かける変なコスプレ男」扱いだし、ブルースとしても「引きこもりの変な金持ち」扱いを受けている。

両親の死がかなり尾を引いており、どこか自罰的で自虐的。

過去作のプレイボーイっぷりが嘘のようで、不器用男が好きな私としましては、大変ときめきました。


アルフレッド:

ブルースの、お父さんの頃から仕えてくれている執事で、育ての親。

本作でのブルースとアルフレッドの関係が、思春期を迎えた男の子とお母さんっぽくて、いと微笑ましい。二人のやりとりをもっと見たかったです。

続編で見せてくれ、頼む。後生です。

バットマンの格闘技術はアルフレッド仕込みのようですが、ブルースの生き方不器用っぷりを見ていると、「いやそれより社交術とか、コミュ力鍛えてやれよ」と思わなくもない。


セリーナ:

日本のステレオタイプ泥棒が被ってそうな、ほっかむりっぽい覆面を被った美人盗賊。

腰が細すぎて、内臓が入っているのか心配になる。そして手癖も足癖も悪い。

友人が事件に巻き込まれたことから、バットマンとたまに協力したり、仲違いしたり、な関係に。

あと、めちゃくちゃ爪が長くて鋭い。

「そんな爪でコンタクトを着けて大丈夫か」とか思いながら映画観てたら、クレジットにセリーナの爪担当的なスタッフさんがいて、ちょっと面白かったです。


ゴードン警部補:

ゴッサム市警の刑事さん。

汚職とは無縁の、どこに出しても恥ずかしくない実直警察官なのに、よりにもよってバットマンに協力している。何故。

警部補だけど周囲への影響力もあるし、終盤では恐慌を来たす同僚たちを一喝で鎮めたりと、指揮能力も高そう。

それでも警部補止まりなのは、やっぱり汚職してないからだろうか。

ただ、現場を勝手に物色するバットマンに鑑識さんが難色を示した時、「手袋してるからいいじゃん!」と答えるのは、バットマンに甘すぎる。だってこいつ、ブーツとか絶対泥だらけでしょ。


リドラー:

市長殺害を端緒に、次々と街の大物を狙っていく殺人鬼。

なぞかけが大好きで、息が荒い。

初登場シーンなんて、殺人鬼というか変質者のそれでした。

ビジュアルもズタ袋みたいな覆面+眼鏡+ダボダボコートという、かっこよさ0キロカロリー過ぎる出で立ちで、変質者っぷりに拍車がかかる。

なお、これだけ大層な犯罪を起こしているのに、SNSのフォロワーは500人程度らしい。なんともリアル。

そんなワケでこの映画は、「コミュ障ヒーロー vs コミュ障ヴィラン」の構図となっています。


ペンギン:

セリーナが働いているクラブの経営者。街のドン的存在のファルコーネの部下。

コリン・ファレルさんが演じているらしい、のですが。

何度見てもコリン・ファレル要素が見つけられず、ひょっとして同姓同名の別人または、平行世界のコリン・ファレルさんが演じているのでは?とも疑いました。

バットモービルとのカーチェイスのシーンは、バットモービルの異常性+それに狙われたペンギンへの同情ゆえに、車に一切興味がない私でも楽しめました。あれは怖い。


ファルコーネ:

ペンギンのボス。

紳士っぽいけど、どう見てもヤバそうな人らを従えている。

おまけに市長の葬儀に出ていたりと、表の世界の有力者とも仲がいいようで。

また、セリーナと何やら因縁があるっぽい。



【感想など】

朝焼けが印象的でした。

ゴッサムシティ、常時雨降ってるし、バットマンの活動時間が基本的に夜なので、画面がだいたい暗いのですよ。

ご自宅でご覧になる場合は、遮光カーテンを引くか照明を落とすことをオススメいたします。


そんなわけでまあ、闇と同化して(そして不気味なBGMと共に)登場するバットマンが印象的な本作ですが。


ちょいちょい、バットシグナルを設置したビルの最上階で、夕焼けや朝日を浴びてたそがれてるバットマンのシーンも出るんですよね。

なんというか、街を見下ろしているバットマンが、心持ち気が抜けている感じがして。年相応で可愛いなぁと。


作中では珍しい明るさ+ちょっとぼんやりしているバットマンにエモさを感じたため、朝焼けのシーンがめっちゃ心に焼き付きました。


また、雨や夜のゴッサムシティは「市全体が『トレインスポッティング』のトイレのようだ」と思えるぐらいクッソ汚いのに。

日の出と共に眺めると、不思議と清浄な街のように思えて、そこを守ろうとするバットマンにもちょっと共感です。


そして本筋ですが、ミステリーやホラーが好きなため、それに準ずる要素が盛り込まれているのが個人的にお得だな、と。

ミステリー要素はもちろん、リドラーの仕掛ける犯罪で。

ホラー要素は、だいたいバットマンが担ってます。


いや、出方が怖いのよ、バットマン。

不協和音みたいな甲高いBGM背負って、暗がりからヌゥッと現れて。完全に貞子と同種の演出なのよ。


バットモービルとか、アホみたいにデカいジェットエンジン積んでて、ブォンブォン吹かしながら出て来るんですよ。

それを見つけて「ヒッ……」となってるペンギンと一緒に、こっちも「ヒッ……」ですよ。

脳裏に浮かんだ文字は「絶望」でした。


ヤバイ奴だらけの、ゴッサムシティの住人からもヤバイ奴認定を受けている点も含め、バットマンが妙におっかない。

だが、そこがいい。


拙作の主要男性キャラが軒並みヘタれになってしまうぐらい、駄目な男に尊さを感じる性癖のため、今作のバットマンのキャラクター性が本当によかったです。


街のヒーローどころか、完全に危険人物ポジなのはもちろん、唯一の家族であるアルフレッドにはすぐ反抗的な態度取るし。

素顔で街を歩く時は、どことなく心細そうだし。


両親の死の真相を知った時の、ガラス細工みたいな繊細な表情といったら、もう……!

お前さっきまで、ボコスカ暴れとったやんけ!

急に庇護欲誘うなよ、まんまと誘われちゃったよ!


退廃的な雰囲気や、手を変え品を変え流れるアヴェ・マリアや、アクションよりも謎解きに重きを置いた点など、色々見どころはあるのですが。


バットマンもといブルースが、不器用かつ一所懸命過ぎて愛しい。

これに尽きました。

演じるロバート・パティンソンさんの、三十路越えてからの男前ぶりが本当恐ろしい。

黒いマスクからのぞく輪郭も、なんとも鋭利で素晴らしい。

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