【作品情報】
原題:The Limehouse Golem
製作:2016年/109分/イギリス
監督:フアン・カルロス・メディナ
出演:ビル・ナイ/オリヴィア・クック/ダグラス・ブース
ジャンル:ミステリー
(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)
【ざっくりあらすじ】
19世紀ロンドンの、ライムハウス地区。
ここでは今、「ゴーレム」と名乗る殺人鬼の話題で持ちきりだった。
娼婦二人とユダヤ人、そして古着屋を営む一家とメイドを惨殺したゴーレム。
一連の事件の捜査を、キルデア警部補 (ゲイ疑惑あり)は大人の事情込みで請け負うことに。
彼は古着屋一家の殺害現場に残された血文字から、図書館の蔵書に書き込まれたゴーレムの日記を発見する。公共物に日記を書くな。
最後に日記が書かれたと思われる日に、図書館を利用した男性は4人だった。
一方その頃、売れない劇作家であるジョンが、毒物により死亡。
その家で働くメイドのアヴァリーンは、しおらしい顔をしながら、女主人であり人気女優のリジーを、「奥様は旦那様と不仲だったんですけど、不思議と寝酒だけは作ってたんですぅ。薬物入れること出来たかもですぅ」と告発。
結果、リジーは逮捕される。
しかし、ゴーレム候補者の内の一人が、ジョンだったのだ。
捜査の過程で、リジーと知り合うキルデア警部補。
彼は彼女の恵まれなさすぎる過去を知る過程で、リジーに同情。
だが夫殺しの罪を着せられた彼女は、このままでは死刑まっしぐらである。
リジーを救うには、ジョンがゴーレムであったという証拠を見つける他ない。
もしもジョン=ゴーレムであれば、犯罪の露呈を恐れて、服毒自殺をした可能性も浮上するのだ。
また真実リジーによる毒殺であったとしても、殺人鬼である夫を恐れたため、と情状酌量の余地も生まれる。減刑も可能だ。
日記の筆跡を頼りに、キルデア警部補はゴーレム探しを続ける。
しかしジョンの筆跡だけが見つからない。彼の死の前夜に、直筆の書類は全て燃やされていたのだ。
だがリジーと、彼女の演劇の師匠であるダンのアドバイスから、ジョン直筆の原稿を図書館で発見。
筆跡は、ゴーレムのものと一致した。
絞首刑寸前のリジーの元へと、大急ぎで向かうキルデア警部補。
しかし彼を待っていたのは、とんでもない事実だった。
【登場人物】
キルデア:
ベテランで恐らく優秀な警察官だけど、どうやら今までは生活安全課的な部署にいた模様。
ゲイ疑惑が原因だろうか。
リジー:
婚外子として生まれ、幼いころから周囲の男や母から虐待を受けて来た哀れな女性。
しかし母の死後、コメディエンヌの才能を開花させて、人気女優となる。
――かと思った矢先に、夫殺しの容疑で御用となってしまった。不運すぎる。
ダン:
リジーを拾い、育て上げた人気俳優。彼女の師匠であり友人。ゴーレム候補の一人でもある。
ジョン:
売れない劇作家なので、記者で生計を立てている男性。リジーの夫。彼が容疑者の一人だったことから、物語は始まる。
アヴァリーン:
嫌な女像を濃縮還元したような、嫌な女。
当初はリジーの同僚として、そしてその後彼女のメイドとして、常にリジーに嫉妬心を燃やし続ける。
【感想など】
当初は、貧しいが故に男たちから搾取されて来た、不幸な女性・リジーの半生と、それにリンクする殺人事件を追うだけのお話、だと思っておりました。
あと、リジーを巡る人間模様が、「昼ドラかレディコミじゃん」って感じだな、と。どっちもちゃんと知らんのですが。あくまでイメージとして。
が、終盤でひっくり返りました。鳥肌立ちました。
紙にペンで、「M」と書くだけのシーンに恐怖を感じたのは、これが初。たぶん今後もないでしょう。あったら困る。
そしてそのシーンでの、ゴーレムの表情よ。完全にサイコがパスってる、ヤバい人臭満々のご尊顔で。俳優さんしゅごい。
このどんでん返しには、「女はか弱いと思ったら大間違いだ」といった気持ちも込められているのでしょうか。どうなんでしょうか、監督さん。作者さん。
気になったので、ひとまず作者さんのWikiページ(残念ながら、英語版しかない)を、拙い英語力で読んでみました。
そこによると、作者さんはゲイでいらっしゃるそうな。また、恋人をエイズで亡くされているとのことで。
肩身の狭い思いをされることもあっただろうから、その辺りもリジーの鬱屈した半生に反映しているのかしら、とか柄にもなく考えてしまった。
いや、本当にビックリしたもんで。
割と何でも額面通り受け取るお馬鹿さんなため、まんまと騙されたわけですよ。
そしてまた、「19世紀だもん。女性はいつだって虐げられ、奪われる側だ」という思い込みもあったんですよ。
それがまぁ、蓋を開けてみれば。
いや、ある意味爽快ですわ。
以前に感想を書いた、『夜の来訪者』と対を成すような物語。
恐らく根っこは一緒なのですが、時代や周囲に翻弄される、女性の抱える闇の大きさで、こうも一変するだなんて。
なんかタイトルだけで、「往年の怪奇映画っぽいわぁ」とか思って、本当にごめんなさい。
そして最後に残る、とある人物の首吊り死の謎よ。
あれは、作為的なものなのか。それとも、偶然なのか。
あああ、気になる……やっぱりあれは、師匠から弟子への最後の餞だったのだろうか。