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『竜とそばかすの姫』

【作品情報】

原題:竜とそばかすの姫

製作:2021年/121分/日本

監督:細田守

出演:中村佳穂/成田凌/染谷将太

ジャンル:SF・ファンタジー

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

高知の田舎町 (高知全体が田舎、というご指摘はご容赦下さい)に住む少女、すず。


彼女はかつて、母と一緒に歌うのが大好きな、明るい女の子だった。

しかしその母が、川の中州に取り残された子どもを助けようとして、命を落とす。このことから人生と性格が一変。


「どうして母は自分を置いて、他人を助けて死んだのか。私は独りだ」

そう考えて彼女はどんどん内向的になり、そのまま大きくなった。

また目の前で起きた事故のショックにより、歌を歌うことも出来なくなっていた。


そんな彼女を見かねた親友のヒロの誘いで、仮想世界Uへ足を踏み入れたすず。

UのアバターことAsは、登録者の生体情報を読み取って作られる。

そこで美貌の少女ベルになったすずは、自分でなくなったことで初めて、歌を歌うことができた。


彼女の歌声に人々は魅了され、たちまちベルは歌姫になる。

そんなベルが大型ライブを行った日。

ライブ会場に竜と呼ばれるAsと、彼を追う自警団ジャスティスが乱入。ライブはめちゃくちゃになる。


この出来事がきっかけとなり、竜のアンベイル活動正体探しが活発化。

しかしその一方で、乱暴者だが敵なしの竜の姿に、励まされる子供たちも多くいたり。

あれだね、プロレスのヒール的な。


ライブでの一件で竜に興味を持ったすずも、ヒロと共に彼を調べる。


そして竜が、Uの離れにある廃墟の城にいる、という情報を得たすず。

単身そこに忍び込んだ彼女は、竜と邂逅。

最初は拒絶されるも、ジャスティスたちとのいざこざもあって、二人は打ち解けていく。


その中ですずは、竜が心に大きな傷を抱えていることに気付く。

彼を助けたい、そう思うようになっていった。


しかしベルを竜の仲間、と目を付けたジャスティスたちの執拗な追跡により、ついに彼の居城が暴かれる。


果たして、竜の正体は。

そしてすずは、竜を救うことが出来るのか。



【登場人物】

すず=ベル:

普段は素朴で平凡な女の子だが、Uの世界ではとんでもなく可愛い、美貌の歌姫。

今はお母さんの死が原因で、歌うとリバースする、困った体質になっている。

そんな彼女が、自分自身のままで歌うことが出来るようになるのか。そこも見どころ。

なお普段はめちゃ引っ込み思案だが、言う時は言う性格だし、割と行動力がある。あとよく走ってる。


ヒロ:

すずちゃんの親友で、ベルのプロデューサーでもある。

金持ちで毒舌、しかし友達想いとキャラ立ちまくり。

そして演じる幾田りらさんが、これまた演技が上手いのなんの。

ちなみにヒロちゃんは、枯れ専のようだ。


竜:

Uの嫌われ者。

乱暴な態度が大半を占めるが、たまにデレを見せる。あと案外シャイ。

可愛いかよ。

ちなみに彼は「醜い化け物」とも言われているのだが、Uの世界では竜以上にぶっ飛んだ外見のAsがウジャウジャいる。あと竜も、割とかっこいいような……その辺どうなんや。

Uの生体認証が、何を読み取って彼の背中に大きなアザを生み出したのか。ここもミソ。


しのぶ:

すずちゃんの幼馴染で、高校の人気者。

スポーツ万能なイケメン君である。

なおすずちゃんへの態度は、恋する男児というよりも、お母ちゃんに近い。


カミシン:

すずちゃんの同級生。

一人でカヌー部を立ち上げる剛の者。んでもって、それでインターハイまで行っちゃう。

個人的に、一番作中でツボだった男性キャラ。

カミシン君、アホ可愛いよ。


ルカ:

すずちゃんの同級生。吹奏楽部所属の美人。

ヒロちゃんからはあまりよく思われていないようだが、本人は何かとすずちゃんを気にかけている様子。

安心してください。めちゃいい子です。



【感想など】

内気だった少女の勇気と歌声が、ほんのちょっぴり世界を変えて、小さな奇跡を起こす。

まとめるとそんな映画です。


ラストで小惑星探査機が落ちて温泉が湧き出た、同監督の『サマーウォーズ』と比べると、ちょっぴりミニマムですね。


仮想空間Uではあちこちウロウロするけど、現実世界では決まった登下校ルートと学校、あと家ぐらいしか出て来ない辺りも実にミニマム。


でも田舎住みの学生なんて、こんなもんですよ。

経験者が言うんだ、間違いない。


しかし主人公すずちゃんの活動エリアを絞ったので、他の主要人物との絡みが濃厚になっています。


あ、でも、あの年齢特有の、惚れた腫れたのギスギスはめっちゃ最小限です。すずちゃんと同級生たちとの交流は、割と平穏。モブから嫉妬されるシーンはあるけど、割とうまく立ち回ってるし。

そんな感じで若干やきもきするシーンはあれど、皆ひたむきで、いい子なのがツボ。


そう。いい子なんですよ。

細田守監督作品は好きな一方、今までは女性キャラクターがちょっと苦手だったのですが。

今作ではすずちゃんも、親友のヒロちゃんも、クラスのアイドルであるルカちゃんも、キャラ立ってるのにいい子でした。


すずちゃんは冒頭で、自分は一人ぼっちだと嘆いている。

でも本当は気のいいクラスメイトや母の友人たち、ちょっと不器用なお父さんに囲まれてるんですよ。

その気付きのお話でもあるんだねぇ。


かたやUの世界で嫌われ者の竜は、現実世界でもかなり過酷な環境にいる。


もう、かなり不憫。

ある意味すずちゃん以上に内向的で、すずちゃん以上に傷を負っている。

彼が暴力でしか自己表現できなかった、という事実がまた、切ない。


皆の優しさで立ち直れたすずちゃんが、今度は竜を救おうと頑張るわけですよ。泣ける。

そのシーンは派手なアクションも演出もないけれど、とてもすずちゃんらしくて。

実際に現実でやるとだいぶ危険なのは承知として……フィクションなんでね、野暮なことは目をつぶって。


どうか彼の今後が、すずちゃんとの交流で明るいものになりますように!


ちなみに冒頭のUの紹介シーンでは、『サマーウォーズ』の冒頭を彷彿とさせる演出――出て来るAsがウサギ耳のカウガールという、遊び心もあったり。憎いね。


そしてこれは完全に自分語りなのですが。

わたくしの出身大学が、高知にありまして。

劇中に高知駅が出た時、どちゃくそテンションが上がりました。


高知いいとこよ。カツオの藁焼き、本当に美味しいから。

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