【作品情報】
原題:The Little Stranger
製作:2018年/111分/アメリカ、イギリス、フランス
監督:レニー・アブラハムソン
出演:ドーナル・グリーソン/ルース・ウィルソン/ウィル・ポールター
ジャンル:ホラー
(参考サイト:フィルマークス https://filmarks.com/)
【ざっくりあらすじ】
一九四八年のイギリス。
かつて栄華を誇ったエアーズ家も、今は昔。
落ちぶれ、メイドも一人きりになった屋敷へ往診に来るファラデー医師。
その往診をきっかけに、彼は傷痍軍人である長男ロデリックの診察も行うことに。
小さな頃、絶頂期にあったエアーズ家を訪れたことがあるファラデーは、屋敷への憧れをずっと抱き続けていた。
そのため、彼らとの交流にウキウキ。人数合わせで呼ばれたパーティーにもご機嫌で参加。
しかしそのパーティで悲劇が。
招待客である少女が、エアーズ家長女キャロラインの飼い犬 (大きい)に噛まれて、顔に大怪我を負ってしまったのだ。
ロデリックは、屋敷に何か邪悪なものがいると主張するが、科学の子であるファラデーはそれを信じない。
そして、この事件をきっかけとして、エアーズ家は更に没落の一途をたどる。
ロデリック、エアーズ夫人へ次々と不幸が降りかかる。
幼い頃に亡くなった、キャロラインの姉であるスーザンの影が、そこにはあった。
一方で不幸な出来事にもめげず、キャロラインへ交際を迫るファラデー。
ダンスパーティーにてすれ違いもあったものの、二人の距離は近づきつつある。
だがその反面、屋敷の一員となりたいファラデーと、屋敷を出たいキャロラインの間には温度差があった。
二人の関係はどうなるのか。
屋敷に住まう、邪悪な存在とはスーザンのことなのか。
謎をはらんだまま、エアーズ家に最後の不幸が訪れる。
【登場人物】
ファラデー:
エアーズ家のある村で医者をしている、髭の似合う紳士。赤毛が素敵。
表情がうっすいので、ダンスパーティーのシーンで爆笑した時にちょっとびっくりした。
基本的に冷静だが、屋敷が絡むとかなりねちっこい。
キャロライン:
旧家の令嬢には見えない、妙に風格のあるお嬢さん。
ファラデーより八歳以上年下と思われるが、貫禄があり過ぎて年上に見えるとか見えないとか。
しかし屋敷の主である弟を支えたりと、とても献身的で家族思いのいい女。
ロデリック:
キャロラインの弟。第二次大戦で大怪我を負い、全身に傷跡が残っている。
どこか豪快なお姉ちゃんと比べると、貴族らしいプライドを持った男性。
しかしファラデーとは、診察を通じて交流を深めていく。
【感想など】
ラストに一瞬ポカンとなり。
次いでファラデーの抱える、エアーズ邸への妄執にゾッとする。
ゾッとしてからタイトルを思い出し、二度ゾッ。
診察室の机にあった文字も、そういうことなのね!と膝を叩いてしまいました。
ただし、ホラーを期待して観ると肩透かし。
イギリスの田舎の穏やかな景色と、壮大だが薄暗くくたびれたエアーズ邸のたたずまい、そこに住まう人々の諦念を、静かな音楽と共に楽しむ作品。
そう。映像が美しいゴシックホラーなのです。非常に好みだ。
ついでにストーリーも、さほど起伏はない。
ほのぼの感の薄れた日常もの、という味わいがある。
しかし静かに終わりゆく屋敷の姿と、起伏のない日常に挟まれる不穏さの塩梅が心地良くて、観ていて退屈しない。
女性向け小説では王侯貴族ものが、いつの時代も人気ですが。
没落貴族の末路という、身分制の負の側面も描かれているので、階級社会に興味がある方も一度観られてはいかがでしょうか。