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第43話 元四天王のマリー ~アグリサイド~

たぶんこうなるとは予想出来ていたけど、なんか女の子が飛び出てきた。

背丈としては小学生高学年から中学生ぐらいだろうか。

青い目をして、青色の長い髪を両方で縛っている。

所謂ツインテールだ。

初音○クみたいな髪型だ。

服装は黒を基調とした服に、レースやフリル、リボンがあしらわれている。

現代で言うとゴスロリってやつだな。


ゾルダが封印されている剣と似たような紋章がついたその兜には、どうやらゾルダの四天王の一人が封印されていた。

名前はマリーと言うようだ。


「ねえさま、ねえさま」


甘えた顔をしてゾルダにベッタリとくっついている。

ゾルダも悪い気はしていないようだ。


「おぅ、いつ見ても、可愛いのぅ。

 一人で怖くなかったか?」


マリーの頭を撫でながら、ゾルダはマリーに問いかける。


「暗くて、誰もいなくて、ずっと叫んでも返事もなくて……

 もうあんなの懲り懲りですわ」


眉をひそめたマリーが上目遣いでゾルダを見上げる。

マリーはゾルダしか見ていないようだ。


「あの……

 マリー? でいいんだっけ?

 これに封印されていたってことは……」


頭にのせた兜を見上げながら、マリーに確認をする。

マリーは顔を膨らませ明らかに嫌だと感じる表情を浮かべる。

自分の感情を隠しはしない。


「そうよ。

 マリーはねえさまの一番弟子よ。

 人族からは四天王の一人と呼ばれているようですわ」


やはりそうか。

ゾルダの時と一緒の感覚を感じたし、ゼドに封印されたのだろう。


「マリーはワシの一番弟子だったかのぅ……

 可愛さは一番じゃったが、実力は……」


マリーが間髪入れずに言い返す。


「そんなことないですわ。

 力も他のみなさんにも負けてないですわ。

 あれもこれもいろいろ……

 マリーもいっぱいねえさまに尽くしていましたわ」


ゾルダは目を細め、いつもより優しい声でマリーに話しかけた。


「おぅ、そうじゃったそうじゃた。

 マリーもワシの力になってくれたのぅ」


マリーもゾルダほどではないが、力はあるのだろう。

この俺なんかよりもよっぽど。


「で、ねえさまは、このものたちと何をしいるのですか?

 ねえさまが人族と慣れ親しむなんて考えられないですわ」


マリーは俺の方を向き、鋭い視線を浴びせる。

なんかだいぶ敵視されているな、俺。


「まぁ、いろいろあってのぅ……

 今はゼドを倒すために、あやつと行動を共にしておる」


これまでの顛末をゾルダはマリーに話始めた。

マリーはゾルダの顔を見て真剣に聞いている。


「ねーねー、これ、どうなってるのー」


フォルトナがマリーやゾルダを見ながら不思議そうな顔をして、俺に問いかけてきた。


「俺も詳しくはよくわからないが、

 ゾルダやマリーは、今の魔王に封印されてしまったらしい」


「ふーん」


フォルトナは、適当な返答をする。

自分から聞いておいて、その返答か。


「詳しくは、今、ゾルダが話しているから、そこで聞いてくれ」


俺から説明するよりはゾルダから聞いた方がいいのもあるけど、

ちょっと癪にも障ったので、ぶっきらぼうに伝えた。


ゾルダはマリーやフォルトナに対して話を続けている。

俺も少し聞きながら、今までのことを頭に思い浮かべる。

たしかあと他の3人も封印されているんだっけ。

たまたま今回は運よくマリーが封印されていた兜を見つけることが出来たが……

次はそう簡単にいくまい。

それにゾルダやマリーのことは、今の魔王、ゼドにもそのうち伝わる。

そうなれば、さらに大変になるだろうな。

この先が思いやれる……


「……という訳じゃから、あやつと旅をしておる」


ゾルダの話が終わったようだ。


「ねえさま、大変でしたね。

 これからはマリーも一緒にお供しますわ」


マリーはゾルダの手をとりそう訴えた。


「そうじゃのぅ……

 頼りにしておるぞ、マリー」


わが子を見守るような顔をするゾルダ。

よっぽどマリーのことを可愛がっていたのだろう。


「マリー、よろしく」


事の経緯が伝わったし、機嫌も大丈夫だろうと思い、俺は握手を求めた。

しかし、俺への視線は変わらない。


「ふんっ。

 マリーが仕方なく一緒にいてあげるんだから、感謝しなさいよ。

 ねぇ、ねえさま」


俺への視線を翻し、ゾルダの方に顔を向けるマリー。

そちらに目をやるとキラキラした顔をしている。

俺はマリーに対して何か悪いことをしたのだろうか。


「のぅ、マリー。

 あやつも頑張っておるし、封印を解くために協力をしてもわねばならんのじゃ。

 そこは良しなに頼むぞ」


マリーの態度をみて、ゾルダがフォローをしてくれている。

ただそう気を使われてもなぁ……


「ゾルダ、ありがとう。助かるよ」


一応礼を言ってから、マリーの方に顔を向ける。


「まぁ、もうマリーはマリーのままでいいよ。

 ただあまりきつくしないでな。

 しばらくは一緒だし、ずっとその態度だとお兄さん疲れるから」


俺は小さな子供に言い聞かせるように落ち着いた声で伝えた。


「ねえさまも、ああ仰っているし、

 仕方ないですわね。

 頑張りますわ」


マリーは少し顔を緩めた。


「それに……

 お兄さんじゃなくておじさんの間違いじゃなくて

 ねぇ、ねえさま」


きつい一言である。

マリーの方が魔族なんだから俺より遥か上のクセして。

見た目が子供だろうが、こちらか見ればマリーの方がおばさんだ。

本当に言いたい放題言ってくれる。


かくして、天真爛漫で自由奔放なマリーが加わった。

傍若無人なゾルダとともに今後もさらに頭を悩ませそうである。

この先も大丈夫か……

頑張れ、俺……

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