たぶんこうなるとは予想出来ていたけど、なんか女の子が飛び出てきた。
背丈としては小学生高学年から中学生ぐらいだろうか。
青い目をして、青色の長い髪を両方で縛っている。
所謂ツインテールだ。
初音○クみたいな髪型だ。
服装は黒を基調とした服に、レースやフリル、リボンがあしらわれている。
現代で言うとゴスロリってやつだな。
ゾルダが封印されている剣と似たような紋章がついたその兜には、どうやらゾルダの四天王の一人が封印されていた。
名前はマリーと言うようだ。
「ねえさま、ねえさま」
甘えた顔をしてゾルダにベッタリとくっついている。
ゾルダも悪い気はしていないようだ。
「おぅ、いつ見ても、可愛いのぅ。
一人で怖くなかったか?」
マリーの頭を撫でながら、ゾルダはマリーに問いかける。
「暗くて、誰もいなくて、ずっと叫んでも返事もなくて……
もうあんなの懲り懲りですわ」
眉をひそめたマリーが上目遣いでゾルダを見上げる。
マリーはゾルダしか見ていないようだ。
「あの……
マリー? でいいんだっけ?
これに封印されていたってことは……」
頭にのせた兜を見上げながら、マリーに確認をする。
マリーは顔を膨らませ明らかに嫌だと感じる表情を浮かべる。
自分の感情を隠しはしない。
「そうよ。
マリーはねえさまの一番弟子よ。
人族からは四天王の一人と呼ばれているようですわ」
やはりそうか。
ゾルダの時と一緒の感覚を感じたし、ゼドに封印されたのだろう。
「マリーはワシの一番弟子だったかのぅ……
可愛さは一番じゃったが、実力は……」
マリーが間髪入れずに言い返す。
「そんなことないですわ。
力も他のみなさんにも負けてないですわ。
あれもこれもいろいろ……
マリーもいっぱいねえさまに尽くしていましたわ」
ゾルダは目を細め、いつもより優しい声でマリーに話しかけた。
「おぅ、そうじゃったそうじゃた。
マリーもワシの力になってくれたのぅ」
マリーもゾルダほどではないが、力はあるのだろう。
この俺なんかよりもよっぽど。
「で、ねえさまは、このものたちと何をしいるのですか?
ねえさまが人族と慣れ親しむなんて考えられないですわ」
マリーは俺の方を向き、鋭い視線を浴びせる。
なんかだいぶ敵視されているな、俺。
「まぁ、いろいろあってのぅ……
今はゼドを倒すために、あやつと行動を共にしておる」
これまでの顛末をゾルダはマリーに話始めた。
マリーはゾルダの顔を見て真剣に聞いている。
「ねーねー、これ、どうなってるのー」
フォルトナがマリーやゾルダを見ながら不思議そうな顔をして、俺に問いかけてきた。
「俺も詳しくはよくわからないが、
ゾルダやマリーは、今の魔王に封印されてしまったらしい」
「ふーん」
フォルトナは、適当な返答をする。
自分から聞いておいて、その返答か。
「詳しくは、今、ゾルダが話しているから、そこで聞いてくれ」
俺から説明するよりはゾルダから聞いた方がいいのもあるけど、
ちょっと癪にも障ったので、ぶっきらぼうに伝えた。
ゾルダはマリーやフォルトナに対して話を続けている。
俺も少し聞きながら、今までのことを頭に思い浮かべる。
たしかあと他の3人も封印されているんだっけ。
たまたま今回は運よくマリーが封印されていた兜を見つけることが出来たが……
次はそう簡単にいくまい。
それにゾルダやマリーのことは、今の魔王、ゼドにもそのうち伝わる。
そうなれば、さらに大変になるだろうな。
この先が思いやれる……
「……という訳じゃから、あやつと旅をしておる」
ゾルダの話が終わったようだ。
「ねえさま、大変でしたね。
これからはマリーも一緒にお供しますわ」
マリーはゾルダの手をとりそう訴えた。
「そうじゃのぅ……
頼りにしておるぞ、マリー」
わが子を見守るような顔をするゾルダ。
よっぽどマリーのことを可愛がっていたのだろう。
「マリー、よろしく」
事の経緯が伝わったし、機嫌も大丈夫だろうと思い、俺は握手を求めた。
しかし、俺への視線は変わらない。
「ふんっ。
マリーが仕方なく一緒にいてあげるんだから、感謝しなさいよ。
ねぇ、ねえさま」
俺への視線を翻し、ゾルダの方に顔を向けるマリー。
そちらに目をやるとキラキラした顔をしている。
俺はマリーに対して何か悪いことをしたのだろうか。
「のぅ、マリー。
あやつも頑張っておるし、封印を解くために協力をしてもわねばならんのじゃ。
そこは良しなに頼むぞ」
マリーの態度をみて、ゾルダがフォローをしてくれている。
ただそう気を使われてもなぁ……
「ゾルダ、ありがとう。助かるよ」
一応礼を言ってから、マリーの方に顔を向ける。
「まぁ、もうマリーはマリーのままでいいよ。
ただあまりきつくしないでな。
しばらくは一緒だし、ずっとその態度だとお兄さん疲れるから」
俺は小さな子供に言い聞かせるように落ち着いた声で伝えた。
「ねえさまも、ああ仰っているし、
仕方ないですわね。
頑張りますわ」
マリーは少し顔を緩めた。
「それに……
お兄さんじゃなくておじさんの間違いじゃなくて
ねぇ、ねえさま」
きつい一言である。
マリーの方が魔族なんだから俺より遥か上のクセして。
見た目が子供だろうが、こちらか見ればマリーの方がおばさんだ。
本当に言いたい放題言ってくれる。
かくして、天真爛漫で自由奔放なマリーが加わった。
傍若無人なゾルダとともに今後もさらに頭を悩ませそうである。
この先も大丈夫か……
頑張れ、俺……