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第27話 いったいどうなったの? ~フォルトナサイド~

「ううううっ……」


何か遠くから声が聞こえるような気がするなー。

なんだろうー。


「……ル……ナ」


「フォ……ト……」


「フォルトナ、大丈夫か?」


アグリの声がはっきりと聞こえた。

ハッとして目が覚めた。

ボクはいったい何をしていたんだっけ……


「たしか、洞窟の入口まで来て……

 祠を見つけて、誰もいないから走っていったら……」


覚えていることを順番に話していると……


「おう、そうじゃそうじゃ。

 その後シエロとやらに踏みつけられたんじゃ、小娘の娘」


ゾルダがニヤニヤしながら、ボクの顔を見てきた。

あっ、そうだったー。

誰もいないと思って油断していたら、魔物に襲われたんだっけ。


「そっ、それでその魔物は?」


「ん?

 あれを見てみろ」


洞窟に入った時にはなかった真っ黒な像みたいなのが立っていた。

あれはいったい……


「あれがシエロとやらじゃ」


「えーっ」


「見ての通り、もうとっくに倒したのじゃ。

 ワシ……じゃなくて……

 今回はあやつがじゃ」


ボクが気絶している間に倒しちゃったのか―

アグリが倒したって言っているけど、今回もゾルダでしょ。

真の勇者はゾルダなんだから。

※注 フォルトナはゾルダが勇者でアグリが勇者の影武者だと思い込んでいます。


でもなんか周りをよく見ると氷が一面にはっている。


「うーっ、なんか寒いよー」


体がブルブル震えだす。

そりゃ、寒いわけだ。


「入ってきたとき、こんなんだったけ?」


「えっと……

 どう説明すればいいかわからないんだけど……

 戦いの最中にこうなっちゃって……」


アグリが魔物との戦いについて話し始めた。

魔物はオルトロスで、名前はシエロと言うらしい。

ボクが踏みつけられて、そこで気を失ってしまったらしい。

そのまま人質にとられていたみたい。


「慌ててつい出て行っちゃったからなー」


「仕方ないよ、フォルトナ。

 俺も魔物が上にいるとは思わなかったし」


その後、アグリとゾルダが連携して、助け出してくれたらしい。

人質を助けられた、怒り狂ったシエロが洞窟内を氷まみれにして危なかったけど……

最終的にはなんとか倒せたらしい。


「ふーん、そうなんだー

 でも、倒せたみたいなら良かったねー」


「小娘の娘が捕まらなかったら、もっと楽に倒せたものを」


「そうだよ、フォルトナ。

 魔物がいるかもってところに来ているんだから、気をつけないと」


アグリとゾルダが二人して注意してくる。

もー、そんなのわかっているよ。

今回はたまたまだって。


「次から気を付けるよー」


「命の危険にさらされた割には、軽いのぅ、小娘の娘は。

 から元気かのぅ」


ゾルダにはちょっと見透かされていた。

確かに軽率だったし、次から本当に気をつけようと思う。

ただ、神妙に言ってもボクらしくないし。

から元気だろうが、明るくしておかないとね。


「ところでアグリ。

 祠は大丈夫そう?」


風の水晶を飾る祠が壊れていたら、修理するのにまた時間がかかってしまう。


「戦いに巻き込まれてはいないはずだから、大丈夫じゃないかな」


祠の状態が心配になったので、祠を確認しにいく。

多少凍っていたり、煤がついたりはあったけど、それ以外は問題なさそうだ。


「大丈夫そうだねー

 じゃあ、この祭壇に風の水晶を設置しようか」


「わかった。

 ここだな」


母さんがアグリに渡した風の水晶を取り出し、祭壇に置いた。


「ブーーン……」


結界が形を作り始めた。

母さんたちも祠の復旧を終えたのかな。


「あれ、なんか変な音がした……」


「なんなんじゃ、これは……」


アグリとゾルダはビックリしている。


「あー、これは結界が構築されていく音だよ。

 たぶん、母さんたちも他の祠を直し終わったんじゃないかなー

 これで、ある程度の魔物は村には近寄ってこなくなるよー」


「アウラさんたちが?

 さすが仕事早いな」


「母さんが早いというより、カルムさんたちかなー」


「でも、よかった。

 これで王様からの指令は完了したかな」


アグリはホッとした表情をしていた。

ゾルダは我関せずと、真っ黒になって立っているシエロを見ている。


「ゾルダは何か探し物ー」


「いいや、見事に真っ黒になったのぅと見とれていたところじゃ」


「でも、それってアグリが倒したんじゃないの?」


「……そうじゃったそうじゃった。

 いやその、よくここまで成長したのぅと……」


アグリが慌ててゾルダのところへ行っている。

ボクは分かっているんだから、隠さなくてもいいのに。

でも隠さないといけない何かがあるんだよね。

だからボクからは何も聞かないでおこうっと。


「二人とも仲いいねー」


ちょっと茶化してみた。


「そんなことないわい。

 何を言うのじゃ、小娘の娘」


「そうだよ、フォルトナ。

 目的が一緒なだけで旅しているだけだから」


そりゃー、真の勇者を隠すための勇者だし、目的は一緒でしょ。

何を言っているのかなー。

でも、一緒に旅する仲間が仲がいいのはいいことだしねー。


「これで任務完了だねー

 母さんに無理矢理行かされたけど、なんだかんだで楽しかったかなー」


「何を悠長に言っておる。

 小娘の娘は何も役に立っておらんかったぞ」


「まぁまぁ、ゾルダ。

 そんなこと言わない。

 フォルトナが道案内してくれたから、ここまで来れたんだし」


「そうだ!そうだ!

 道案内がボクの役目なんだから。

 それが出来たなら、ボクは完璧に役立っているよーだ!」


戦いで全く役に立たなかったのは悪かったけど、それはそれ。

ボクの力じゃ、まだまだ勇者たちの役には立ちそうもないのがわかった。

次に一緒に冒険する時までには、もう少し強くなっていよー。


「相変わらず小娘の娘は無邪気よのぅ。

 知らぬが仏って言うかなんと言うか……」


もういいじゃないかー。

そんなに言わなくても。

こっちだって気を使っているんだしさー。


「はいはい。

 もう終わったならさっさと帰ろうー」


「そうじゃのぅ。

 ワシも早く帰って、酒を飲みたいぞ」


「ゾルダ、また酒かい。

 いい加減、懲りたらどうなの」


そんなどーでもいい話をしながら、村への帰路についたのだった。

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