目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第17話 ボクはフォルトナ! ~アグリサイド~

相変わらずゾルダの破壊力は凄まじい。

ヒュドラ相手でもあっという間だった。

こういうのをチートって言うのだろう。

アニメやマンガの世界なら、俺がこういう能力を持っているはずなのだが……


「ほれ、おぬし。

 ボーっとしておらずに、とどめを刺すんじゃ」


「相変わらず規格外の力だな」


「おいしいところだけ残しておいてやったのじゃからありがたく思え」


確かにおいしいし、ありがたいけど……

これって俺いるか?って感じにもなる。


氷漬けになったヒュドラに一閃すると、ガタガタと音をたてて崩れ落ちる。

まぁ、これで一緒に戦ったことになって、俺の経験にもなる訳だが……

異世界転移して俺TUEEEってなってないな。

でも、何の因果かわからない。

だけど、チートなゾルダが封印されている剣をもらえたのはラッキーだったかも。


「さぁ、これでここは終わりじゃな。

 さっさと帰るとするかのぅ」


ゾルダは仕事は終わったとばかりに帰ろうとする。


「いやいや。

 まだ社を確認出来てないって」


大事な仕事が残っているのだが、どうにもゾルダはそんなことはどうでもいいようだ。


「確かにそのような話を小娘がしとったなぁ」


「小娘ってアウラさんのこと?」


「そうじゃ、ワシからしたら小娘じゃ。

 では……あとはおぬしに任せた」


「おい、ゾルダ!」


ゾルダは戦いが終わるとさっさと剣へと帰ってしまう。

まだ目的の1つしか終わってないんだけどな。


祠を探すために歩き始めた。

しかし、ゴツゴツした岩が視界をさえぎり思うように探せない。

この前の森では大きな木の中に祠があった。

ここもそういう類だろうか。


少し上りやすそうな岩を見つけて上って辺りを見回してみる。


「どの辺りかな」


とにかくこの辺りで一番大きな岩を探してそこに行ってみよう。


「あっ、あそこが一番大きそうだ」


岩が多い丘の中でもかなり目立った大きさの岩を見つけることが出来た。

さっと飛び降り、急いで大きい岩へと向かう。

ところどころにまだサーペントが残っているが、一撃で倒せるのでそれほど苦にならない。


大きい岩の近くに着くと丹念に周りを確認した。

すると人が一人入れるくらいの穴を発見した。


「よっしゃ、ビンゴ」


予想が当たって嬉しい。

すると、ゾルダが話しかけてくる。


「何を小躍りしておるのじゃ」


「いや、祠の入口らしきものを見つけたから、つい嬉しくなって」


「そんなのはじめからココってわかっておったぞ。

 魔力の跡もあるしのぅ」


わかっていたんかい。


「えーーーっ。

 なんで早く教えてくれないのー」


「おぬしが聞かんからじゃ」


聞く前にわかっていたら教えてほしい。


「確かに聞かなかったけど、ゾルダが『あとは任せた』って言うから……」


「……そっ、それはそうじゃな。

 いっ……移動は任せたと言う意味じゃ。

 聞いてくれればすぐ教えたぞ」


ゾルダはなんか慌てたような声をしている。


「ホントにかー……」


なんかゾルダの話し方は怪しい。

教える気も調べる気もなかっただろうに……


まぁ、いいや。

祠らしき穴を見つけたので、まずは入っていこう。


狭く薄暗い穴を奥へと進んでいく。

見た感じも人の手が入っていそうな壁だし、ここに間違いないだろう。


しばらく歩いていくと、空間が広がってきた。

その空間の中心に、社が建っているのも見えてきた。

見えてきたが……

誰か……いる?


慌てて走って近寄ると、そこには女性が倒れていた。


「大丈夫ですか?」


倒れている女性の肩をたたき声をかける。


「んっ……」


どこかケガをしていないか確認してみる。

すると足に咬まれたような跡が残っていた。

その周りは青紫色に変色をしている。


「これって……もしかして……

 サーペントの毒か?」


「……うっ……」


女性の意識ははっきりしないようだ。


「どうしような……

 解毒薬とか持ってないし……」


慌てているとゾルダがひょいっと顔を出してきた。


「なんじゃ、この小娘は。

 どこから湧いてきた」


「湧いてきたんじゃなくて、ここに倒れていたの」


「そうか。

 ん?

 この傷は……サーペントに咬まれたのじゃろ」


女性の噛みつかれた傷を見てゾルダが断定する。


「やっぱり」


「早急に手当してやらんと、こやつは死ぬぞ」


咬まれてからどのくらいたったかもわからないし、毒の強さもわからない。

ただ一刻を争うようだ。


「えーーーっ

 どうしよう、どうしよう」


ゾルダがいるからやられることはないだろうと思って薬らしい薬も持ってきていない。

いざという時のことも考えて持ってきておけばよかった。


「おぬし、慌てるでない」


ゾルダが落ち着いた口調で、あたふたしている俺に言ってきた。


「えっ、でも……」


一刻を争う状況で慌てるなと言われても……


「慌てるなと言っておろう。

 おぬしのレベルがあがって、使える魔法も増えておろう。

 たぶんじゃが、その中に解毒効果がある魔法があるはずじゃ」


ん?

確かにいろいろ覚えていたような気がするけど……


「そうなのか?

 ちょっと確認してみる。

 ステータス、オープン」


急いでステータスを開き確認する。


「えーっと、えーっと」


ステータスをスライドさせながらそれっぽいものがないか確認をする。


「あっ、これだ。

 解毒デトックス


「ほら、あるじゃろぅ」


ドヤ顔でこちらを見てくるゾルダ。

してやったりの顔だ。


「適当に言ってないだろうな、ゾルダ」


「そっ……そんなことはないぞ。

 ワシはなんでも見えるからのぅ。

 とにかくそんなことはいいから、早くその魔法を使ってやるのじゃ」


「わかった」


倒れている女性の患部に手を当て、呪文を唱える。


解毒デトックス


優しい光が傷口を覆う。

みるみるうちに、白い肌に戻っていく。


「よかったー。

 効いたみたいだ」


女性の顔も幾分穏やかになってきた気がする。

もう大丈夫だろう。

まだ気を失っているようなので、横に寝かせておこう。


次は社の中を確認してみる。

やっぱり風の水晶は無くなっていた。

こうなると、意図的に取っていったというのがわかる。

何を目的にしていたかはわからないけど。


「ゾルダ、やっぱり風の水晶が無いね。

 シルフィーネ村を襲うために、結界が邪魔だったのかな」


「まぁ、たぶんそうじゃろう。

 強い魔物で襲えば結界なぞ関係ないのじゃがな。

 ワシなら回りくどいことせずに、そうしておるがな」


ゾルダの言う通りだ。

なんでわざわざ結界を壊していく必要があるのか。

何か他にもあるんだろうか……


「ん……」


倒れていた女性の意識が戻りそうだ。


「大丈夫ですか?」


心配になり声をかける。


「……

 はい……

 ……って、あなたは誰?」


女性は起き上がると、さっと俺から距離をとった。

しかし、足の傷が痛むのか、うずくまる。


「いっ……痛……」


「無理をしない方がいいよ。

 私は国王の命令でここにきたアグリと言います」


俺の名前を告げる。


「アグリ?

 ……………………

 あーっ!

 村に勇者がくるって言っていたけど、お前かー」


この村の人たちはなにかと勇者、勇者って言うなー。

俺は勇者らしいことあまりしてないから、気恥ずかしい。


「はい、それが俺です……」


「そっか、そっかー!

 ボクはフォルトナ!

 よろしく!」


そこにいた女性の名はフォルトナと名乗った。

なんだが元気いっぱいな女の子……

女の子と言ったら失礼か。

元気な女性だ。


「それで、フォルトナは何をしにここ来ていたの?」


ここにいた理由を尋ねた。


「何しにって、祠の様子を見に決まっているじゃん!」


ん?

アウラさんはそんなこと言ってなかったよな。


「村からはそんな話聞いてないけど……」


「えーーーーっ!

 そんなはずないけどなぁ。

 ……あっ、でもありえるな……

 まぁ、帰ればわかるし、いったん村に帰ろうよ!」


何か思い当たる節があるようだ。


「帰るのはいいけど、その足で歩ける?」


「そこは、あんちゃんの肩を貸して!」


あっ、あんちゃん?

なんか、距離感の詰め方がえぐいな。


「いやさ、ボクがここに来たらサーペントがいっぱいでさー!

 少しは倒したけど、最後は咬まれちゃってさー!

 死ぬかと思ったよー!」


なんか死の淵に居た割にはあっけらかんとしているな。

事情もまだよくわからないけど、ケガ人もいるし、いったんシルフィーネ村に戻ろう。

もしかしたら、アウラがまた何か忘れているのかもしれない。


「しかし、もう今回はこれで終わりかのぅ。

 今回はワシの出番が少ないぞ」


「祠見つけるまでは話していたじゃん」


「あの小娘、最後に全部持っていき過ぎじゃ。

 話に入る間もなかったぞ」


「わかったって。

 もう帰るだけだから、休んでくれ」


そんなメタい文句をゾルダが言ってきたけど、俺にあれこれ言われてもな……

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?