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第12話 魔獣アウルベア その2 ~ソフィアサイド~

あやつも順調に魔物を倒せるようになってきてるようだのぅ。

最初苦戦しておったが、コツを教えたら、早く結果を出しおった。

案外切れ者なのかもしれん。

だいぶ倒してきたようじゃが……


「今度はそうもいかんぞ」


ちと違う気配がしてきた。

そうあやつに伝える。


「何かいるのか」


そういうとあやつも臨戦態勢を整えた。


「そうじゃなぁ

 強い気配があちらからするのぅ。

 たぶん、今までのやつらの親玉じゃろう」


あやつと二人で気配がする方へと近づいていく。

鬱蒼と生い茂る草場の陰から覗き込んで見てみると、そこに魔獣がおるではないか。


「ほぅ、あれは……

 魔獣アウルベアだのぅ」


どこかで見た覚えがあるやつじゃったが、確かそんな名前じゃったかのぅ。


「アウルベア?」


あやつは初めて聞く名前なのか、ワシに対して聞き返してきた。


「頭がフクロウ、体が熊の魔獣じゃ。

 ちと厄介じゃのう」


単にガンガンとくるだけが能の魔獣とは違ったような気がしたのぅ。


「厄介?

 今までの魔物と違うのか?」


あやつはすぐに質問してくる。

分からんからしかたないのかもしれんんが……

もう少し自分で考えないものかのぅ。


「ちょっとばかり知能もあるから、いろいろ考えおる。

 まぁ、ワシが出れば造作もないことじゃがの。

 今まで休ませてもらったし、ここはワシの出番かのぅ」


ワシは剣から飛び出して、アウルベアの方へ近づいていった。

久々に少し手を煩わしそうな魔獣だのぅ。

まぁ、今のワシにとってはまだまだ足りん相手じゃがのぅ。

少しは運動になるやもしれん。

久々の戦いに思わず笑みがこぼれてしまう。


「さて、俺も協力する」


そう言うとあやつも、ワシの後に続いてきた。


「久しぶりじゃのぅ、お前らの種族と戦うのも」


魔王になる以前じゃったかな。

あの時はまだワシも力が乏しかったから苦戦したがな。


「オマエハ……」


片言の言葉でアウルベアはしゃべりだした。

もしかして……


「おっ、覚えているのか。

 以前、ワシとやりあったはずじゃがのぅ」


あの時のやつじゃったらと思うとさらに気持ちが高ぶってくるのぅ。


「シラン……」


そっけなく返されてしまった。

さすがにあの時のやつではなかったのぅ。


「違う奴じゃったか。

 そうじゃそうじゃ、さすがにあの時のアウルベアも生きてはおらんな」


自分で話をしておいてなんじゃが、だいぶ前のことじゃからのぅ。


「オマエハ……

 マオウノテキ……

 マッサツ……スル……」


ワシが誰だかわかっておるのか。

ん?

しかも魔王の敵とな。

何がどう伝わっておるんじゃ。


「お前、何か聞いているな。

 今の魔王から何か言われておるな」


ワシはアウルベアにそう問いただす。


「マエノマオウ……キエタ。

 デテキタラ……ケセ……

 オクビョウモノ……イラナイ」


な……なんと。

ワシが逃げたことになっておるのか。

ゼドのやつ、なんてことを言っておるのだ。

罠に嵌めたくせにのぅ。


「ぁあ?

 誰が臆病者だって」


寛容なワシでも切れるぞ。


「ゾルダ、何を怒っているんだ。

 少し落ち着け」


あやつが窘めにくるが知ったことではない。


「ゼドのやつ、ワシを臆病者にしたてあげたようじゃ。

 魔王の立場に耐えられず逃げたということになっているらしいのぅ。

 ワシがそんなことするはずがないじゃろに」


ふつふつと怒りが湧いてくる。


「わかった、わかった。

 ゾルダはそんなことしないのはよくわかるから。

 だから、落ち着け」


あやつは慌ててワシに落ち着くように言ってきた。


「いや、我慢ならん。

 あいつを八つ裂きにしてやる」


臆病者呼ばわりした罰じゃ。


「マオウノテキ……キタ」

「オクビョウモノ……キタ」

「マッサツ……スル……」


アウルベアはワシの気にしている言葉をさらに言い放つ。


「また、臆病者って言ったな」


さすがにカチンときたのぅ。

ワシを臆病者と言った報いは受けてもらう。


「まずは、これを喰らえ。

 闇のブラックフレイム


アウルベアの頭に向けて黒炎を放つ。

その瞬間、頭の部分が離れて上へと飛び立った。


「ちっ……」


そういえば、こいつは上と下で分かれるんだった。

頭に血が上ってすっかりそのことを忘れていたわ。


「あっ、あれはなんなんだ、ゾルダ」


あやつがビックリした様子でこちらに確認をしてくる。


「だから、厄介な奴じゃといったじゃろ。

 1匹の魔獣じゃが、二手に分かれて攻撃してくるので厄介なのじゃ」


「そうなのか?

 じゃ、下は俺が相手する。

 ゾルダは上をお願い」


あやつも自分が役に立つと思っておるのかのぅ。

下を相手するじゃと?

しかも、このワシにお願いまでしてきおったわ。


「おい、おぬし、誰に対してお願いしておるんじゃ。

 ワシはお前の願いなどはきかん。

 これはワシの獲物じゃ」


さすがに二手からだと多少のダメージはあるやもしれん。

まぁ、大したことはないはずじゃがな。

ただあやつに下だけ足止めだけでもしてもらえば無傷で済みそうだ。

あやつが耐えきっている間に上を仕留める。


「ちょこまか動きよって。

 逃げておらずに、こちらにこい」


闇の炎を打ちながら、動きを止めようとしてみた。

相手も逃げ回っていて、なかなか当たらないのぅ。

でも、動きが単調になってきているぞ。


「次はここじゃな。

 闇のダークサンダー


予測をして黒い雷をぶち込んだ。


「ウッ……」


ほら、命中しただろ。

ここからはワシをバカにした報いだ。


「闇の吹雪ブラックブリザード

 闇のダークサンダー

 闇のブラックフレイム


「ウギャギャギャ……」


「どうだ、思い知ったか。

 おぬしの方はどうじゃ」


あやつの戦いぶりを確認する。

思ったよりやれているようじゃ。


「こいつも弱点は雷でいいよな。

 アトリビュート、サンダー」


さっきから戦って学んでおるのじゃろ。

そういちいち聞かんでもいい。


「そうじゃが、グリズリーより体力もあるぞ」


「わかった。

 うぉぉぉぉーーー」


また力任せに剣を振りおって。

もうちょっと洗練されてこんかのぅ。

でも、これなら問題なさそうじゃな。


「ギギ……」


「おっと、まだ生きておったか。

 では、特大のをお見舞いしてあげようぞ。

 闇の大雷ダークギガサンダー


「グギャァァァァァ」


こっちはこれで終わりじゃ。

あやつの方も終わりそうじゃな。


「うぉぉーーー。

 やぁぁーーー。

 でやぁーーー」


あやつの剣戟で、下の方も倒れたようじゃ。

ちと頭に血が上って、もうちょっと上手くやる予定じゃったが、まぁ、いいか。

結果オーライじゃ。


「ゾルダ、大丈夫か?

 だいぶ怒っていたようだが……」


心配してかあやつがこちらに近づいてきた。


「ワシは至って冷静じゃ。

 怒ってなんかおらんぞ」


ちょっとカチンときたのは確かじゃがな。


「それならいいが……

 でもそういえば前回は結構強力な魔法を使ったとたん、剣に戻っていったけど……

 今日はまだ実体を保っているね」


ん?

確かに言われればそうじゃな。

以前よりも力が出せていたようにも思える。

これはあやつも力をつけてきたのに関係があるのじゃろうか。


「封印の気まぐれじゃろう」


どういう関係があるかはわからんからごまかしておこう。


「そんなことあるのか?

 こういう場合、俺との絆の力とかそういうのが鉄則なんじゃないの」


「絆?

 そんな訳なかろう。

 封印も劣化してきているのかものぅ」


劣化なんてする訳はないが、適当に言っておくか。


「それよりか、これでこの辺り一帯の魔物の気配は収まったようじゃ。

 もう少し調べて、洞窟への手がかりがあればいいのぅ」


あやつも安心したのか、地面に腰を降ろす。


「そうだな。

 魔物の気配が収まったのなら、ゆっくり調査できるし」


日を追うごと、あやつが力をつけるごとに、ワシの力も取り戻せているのは確かじゃ。

このままあやつが成長していけば、無事封印も解けるのじゃろうか。

そんな単純な封印をゼドのやつが仕掛けるのか……

まだまだわからないことが多いのぅ。

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