目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第3話 子供みたいな叔父さん

 僕は学校に行かず、太一の便利屋を手伝いながらバイトも始めた。太一に『社会を見ておけ』と言われたのだ。

 社会も何も、村役場の受付でぼーっと座って、日に数人しか来ない老人の相手をするだけの仕事だった。まぁ、昔よりは社交性は身についたかもしれない。



 僕が18歳になった、ある蒸し暑い夏の夜更け。太一がデロンデロンに酔っ払って帰ってきた。


「ただいま〜。コタ〜? コタ〜」

「おかえり。うわっ、また柳本やなもとのおっちゃんと飲んでたの?」

「ん〜? あーそうそう、柳本のおっちゃん! あの人はホンット面白いわね〜」

「こんなに酔って帰るなんて珍しいね。何かあった?」

「ん〜、まぁね〜。大人には大人の事情あるのよ〜」

「太一って酒飲むとオネェになるよね。なんか面白い」


 僕は、ケタケタと子供の様に笑ってしまった。ガタイの良い太一のオネェっぷりが、あまりにも面白かったのだ。


「笑うなんて酷いな〜。そんなに面白いのぉ?」

「やめて、裏声はズルい」


 強面で筋骨隆々、少し目つきも悪い太一。そんな太一のオネェにツボってしまい、腹を抱えて笑った。


「そんな悪い子にはお仕置ね〜」


 そう言って、太一は僕にキスをした。それも、舌を絡めたディープ過ぎるやつ。

 馬鹿力の太一に腰を抱き寄せられ、抵抗もできずされるがままだった。どのくらい口を犯されたのだろう。腰が砕け動けなくなった僕は、太一にお姫様抱っこでベッドへと運ばれた。




「朝チュンってこれか······。いや、違うか」


 隣には、素っ裸でいびきをかいて眠る太一。僕は一睡もできなかった。


 お姫様抱っこで運ばれた僕は、ベッドに放り投げられた。起き上がる間もなく、跨ってきた太一に何度も何度も深く激しいキスをされた。

 そして、太一はそのまま眠ってしまった。


 眠れるはずもない僕は、この胸の高鳴りと苛立ちの理由を一晩考え続けた。

 僕は太一が好きだ。そう結論づけるまで、さほど時間はかからなかった。


「····ふざけんなよ」


 無性に腹が立ち、太一をベッドから蹴り落としてやった。


「んぉっ!? いってぇ····。あれ? なんでコタが俺のベッドに居んの?」


 覚えてないときた。僕の純情ファーストキスを奪っておきながら。


昨夜ゆうべ、お前に犯されたんだよ」


 犯されたのは口だけだが、それは教えてやらない。


「え、お、おかっ、犯したぁ!!?」

「それはそれはもう、激しく」

「······え。えぇ〜、マジか。えっと、なんだ····ケツ大丈夫?」

「そうじゃねぇだろっ!!」


 やっぱりボケ太一だ。そういう所が好きなんだが。もういっそカミングアウトしてやろうかと思った。

 なのに、太一のアホが····。


「責任とふぁせてください」

「は?」


 太一は深々と土下座をした。フローリングに額を叩きつけて。


「ごめ、噛んだ····」

「ちげーよ、そこじゃねーよ。なんつった?」

「責任、とらせてください」

「意味わかってんの? え? どういう意味で言ってんの?」

「えーっと、あのーぅ、はい、その····」

「ねぇ、太一はさ、僕の事どう思ってんの?」


 思い詰めた表情の太一が 、一瞬の沈黙を弱々しく破った。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?