「本当に、行ってしまうのか?」
「ああ。この街も立て直ってきたからな。もう俺が居なくても大丈夫だろ」
「……そうか」
スクルードの顔が俯く。
わずかに寂しさを滲ませるその表情に、サイモンは彼の肩を叩いた。
「そんな顔をするな。いつかきっと、また会いに来る」
「……ああ、待っている」
そう言って不器用に笑うスクルードに、サイモンも笑みを浮かべる。
――それが、今から六百年以上前の話だ。
むかしむかし。この世界は戦争であふれておりました。
種や地位、性別。世界のすべて。あらゆるものが火種となり、人々は武器を持ちました。
争うことでしか、彼等は互いを知る術を知らなかったのです。
そんな時でした。
一人の少年が彼等を見て言ったのです。「なんてかわいそうな生き物なんだ」と。
彼は争いでしか言葉を交わせない人々を、ひどく憐れみました。
そして、少年はこの世界から争いをなくすため、たった一人の友人と旅立ったのです。
少年たちは旅をしました。
世界を見て、土地を見て、人々を見て。他種族の者たちとも言葉を交わしました。
最初は皆、少年の言葉に懐疑的でしたが、笑顔で接する彼に次第に心を開いていきました。
少年たちは仲間を募りました。
森で出会う凶暴な魔物を退治するためです。少年たちは若さゆえの自由奔放さで、三人の仲間を得ました。
二人旅はいつしか賑やかになり、少年は前より、よく笑うようになりました。友人はその笑顔につられるように笑みを浮かべました。
少年たちは仲間と一緒に、世界中を回りました。
魔物退治を請け負い、人々の悩みを解決し、いがみ合う異種族の輪を繋げていく。世界からは次第に争いがなくなっていきました。
争いがなくなったことで、人々の生活は豊かになりました。作物が増え、人が増え、異種族とのいがみ合いもなくなり、世界は安寧に包まれたのです。
争いがなくとも豊かになれる。そのことに、愚かな人々はようやく気づくことができたのです。
一丸となった世界で、少年たちはいつしか人々から期待を寄せられるようになりました。
一人は、叡智を司る『神童』として。
一人は、恵みを与えてくれる『神の子』として。
一人は、力で世界を守る『最強の矛』として。
一人は、全てを支える『世界の柱』として。
一人は、神に仕える『世界の王』として。
人々は彼らを『五大英雄』と呼び、希望を託しました。
期待に沿うべく、英雄たちは魔物の頂点――魔王――と相対しました。
激闘の末、英雄たちは勝利を手にし、この世界に平和を齎したのです。
そして平和になった世界で『王』となった少年は、二度と争いが起きないよう、自らの余りある力を〝祝福〟として世界中に分け与えました。
病が消え、怪我が消え、死への恐怖さえも彼は消し去ったのです。
世界は歓喜しました。自分たちを救ってくれるのは、自らの『王』だけなのだと少年を崇め、感謝しました。人々はその証として、『王』に感謝を伝えるための教会を、世界中に建てたのです。
そして今もなお、世界は争うことも無く、平和な時間を過ごしております。
――たった一人の『神』の手で作られた『世界』の上で。