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千年の旅
千年の旅
夢鴉
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年07月24日
公開日
34.1万字
連載中
統一された世界で、親友は王となり、人々の安寧を得るために全人類へと『祝福』を授けた。
「本当に、行ってしまうのか?」
不安げな視線を送る親友に、主人公――サイモンは満面の笑みを向け、王城を去っていく。

旅に出たサイモンは長い旅路でたくさんの人と出会い、成長していくが、突如として世界を揺るがすハプニングが起きる。親友である世界の王を心配に思うサイモンは、地球の裏側から親友に出会うために動き始めた。しかし、その旅は問題続きで……!?

世界を渡り歩く千年の旅が、今ここに始まる――。

【序章】

「本当に、行ってしまうのか?」

「ああ。この街も立て直ってきたからな。もう俺が居なくても大丈夫だろ」

「……そうか」


スクルードの顔が俯く。

わずかに寂しさを滲ませるその表情に、サイモンは彼の肩を叩いた。


「そんな顔をするな。いつかきっと、また会いに来る」

「……ああ、待っている」


そう言って不器用に笑うスクルードに、サイモンも笑みを浮かべる。



――それが、今から六百年以上前の話だ。








むかしむかし。この世界は戦争であふれておりました。

種や地位、性別。世界のすべて。あらゆるものが火種となり、人々は武器を持ちました。

争うことでしか、彼等は互いを知る術を知らなかったのです。


そんな時でした。

一人の少年が彼等を見て言ったのです。「なんてかわいそうな生き物なんだ」と。

彼は争いでしか言葉を交わせない人々を、ひどく憐れみました。

そして、少年はこの世界から争いをなくすため、たった一人の友人と旅立ったのです。


少年たちは旅をしました。

世界を見て、土地を見て、人々を見て。他種族の者たちとも言葉を交わしました。

最初は皆、少年の言葉に懐疑的でしたが、笑顔で接する彼に次第に心を開いていきました。


少年たちは仲間を募りました。

森で出会う凶暴な魔物を退治するためです。少年たちは若さゆえの自由奔放さで、三人の仲間を得ました。

二人旅はいつしか賑やかになり、少年は前より、よく笑うようになりました。友人はその笑顔につられるように笑みを浮かべました。


少年たちは仲間と一緒に、世界中を回りました。

魔物退治を請け負い、人々の悩みを解決し、いがみ合う異種族の輪を繋げていく。世界からは次第に争いがなくなっていきました。

争いがなくなったことで、人々の生活は豊かになりました。作物が増え、人が増え、異種族とのいがみ合いもなくなり、世界は安寧に包まれたのです。

争いがなくとも豊かになれる。そのことに、愚かな人々はようやく気づくことができたのです。



一丸となった世界で、少年たちはいつしか人々から期待を寄せられるようになりました。


一人は、叡智を司る『神童』として。

一人は、恵みを与えてくれる『神の子』として。

一人は、力で世界を守る『最強の矛』として。

一人は、全てを支える『世界の柱』として。

一人は、神に仕える『世界の王』として。


人々は彼らを『五大英雄』と呼び、希望を託しました。

期待に沿うべく、英雄たちは魔物の頂点――魔王――と相対しました。

激闘の末、英雄たちは勝利を手にし、この世界に平和を齎したのです。


そして平和になった世界で『王』となった少年は、二度と争いが起きないよう、自らの余りある力を〝祝福〟として世界中に分け与えました。

病が消え、怪我が消え、死への恐怖さえも彼は消し去ったのです。

世界は歓喜しました。自分たちを救ってくれるのは、自らの『王』だけなのだと少年を崇め、感謝しました。人々はその証として、『王』に感謝を伝えるための教会を、世界中に建てたのです。


そして今もなお、世界は争うことも無く、平和な時間を過ごしております。


――たった一人の『神』の手で作られた『世界』の上で。


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