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千年の旅
夢鴉
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年07月24日
公開日
255,922文字
連載中
統一された世界で、親友は王となり、人々の安寧を得るために全人類へと『祝福』を授けた。
「本当に、行ってしまうのか?」
不安げな視線を送る親友に、主人公――サイモンは満面の笑みを向け、王城を去っていく。

旅に出たサイモンは長い旅路でたくさんの人と出会い、成長していくが、突如として世界を揺るがすハプニングが起きる。親友である世界の王を心配に思うサイモンは、地球の裏側から親友に出会うために動き始めた。しかし、その旅は問題続きで……!?

世界を渡り歩く千年の旅が、今ここに始まる――。

【序章】



「本当に、行ってしまうのか?」

「ああ。そろそろこの街も立て直ってきたしな。俺が居なくても大丈夫だろう」

「そうか……」


スクルードの顔が俯く。

寂しさをたたえたその表情に、男は彼の肩を叩いた。


「そんな顔をするな。いつかきっと、また会いに来る」

「……ああ、待っている」


彼の言葉に大きく笑い、玉座のある階段を下りる。

赤いカーペットは塵ひとつも落ちていない、清潔なものだった。この部屋がいかに丁寧に掃除をされているのかが伺える。


「サイモン!」

「ん?」

「……いや。何でもない」


ふるりと首を振るスクルードに「どうかしたのか」と首を傾げれば、「いや。……体に気を付けて」と告げられた。心配性なところは、昔から変わっていないらしい。


「あたりまえだ!」


そう言って笑って拳を上げ、男は今度こそ王城を後にする。


その時、振り返らず王城を去ってしまった自分を、男は後々深く後悔することになるとは知らずに。









むかしむかし。この世界は戦争であふれておりました。

種や地位、性別。世界のすべて。あらゆるものが火種となり、武器を持ちました。

争うことでしか、彼等は互いを知る術を知らなかったのです。


そんな時でした。

一人の少年が彼等を見て言ったのです。「なんてかわいそうなんだ」と。

彼は争いでしか言葉を交わせない彼等を、ひどく憐れみました。

そして、少年はこの世界から争いをなくすため、旅立ったのです。


少年は旅をしました。

世界を見、土地を見、人々を見、他種族の者たちとも言葉を交わしました。

彼等は少年の言葉に懐疑的でしたが、笑顔で接してくる彼に次第に心を開いていきました。


少年は仲間を募りました。

森で出会う魔物を退治するためです。彼はその自由奔放さで、四人の仲間と出会いました。

一人旅はいつしか賑やかになり、少年は前よりよく笑うようになりました。


少年は仲間と一緒に、世界中を回りました。

魔物退治を請け負い、人々の悩みを解決し、いがみ合う異種族の輪を繋げる。世界からは次第に争いがなくなっていきました。

やがて彼は人々から〝英雄〟と称えられるようになりました。争いがなくなったことで、作物が増えたのです。

少年はいつしか〝神〟に仕える、〝神子〟として有名になりました。


〝神子〟となった少年は、余りある力を〝祝福〟として世界中に分け与えたのです。

病が消え、怪我が消え、死への恐怖さえも、彼は消し去ったのです。

世界は歓喜しました。

そして世界から争いは無くなり、平和が訪れました。


――こうして〝少年〟は、世界の〝王〟となったのです。


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