――その夜、わたしは里歩と電話で話した。一応、小坂さんを罠にかける計画のことは彼女にも話してあったし、その結末を彼女も知りたがっていると思ったから。
ついでに……と言ってはナンだけど、彼と婚約関係になったことも話した。
『とりあえず、計画成功おめでとう。これでひとまず安心だね』
「うん。小坂さんもさすがにこれで
『そして、婚約おめでとう。よかったね、絢乃』
「ありがと、里歩。指輪はクリスマスイブにくれるって言ってたけど、プロポーズ返してもらえたからね」
親友にも祝福してもらえて、わたしは胸いっぱいになった。婚約の証はまだもらっていないけれど、お互いの気持ちが一致したというだけで十分だ。
「でね、その後クルマでウチまで送ってもらったんだけど。クルマの中で彼とちょっと……。初めて男の人に気持ちよくしてもらった」
『えっ? じゃあ、ついに桐島さんとエッチしたの?』
「ううん、大人のキスを憶えて、あとは手と舌でしてくれただけだけど」
わたしがちょっと不満げに答えると、恋愛偏差値の高い里歩は姉のようにわたしを諭した。
『〝だけ〟ってねぇ、アンタ。それだけでも前進してるじゃん。あの真面目な桐島さんがそこまでしてくれたんだよ? スゴい進歩じゃん』
「それはまぁ……、そうだけど。してくれてる間、彼のアソコパンパンになってたんだよ。なんか、わたしだけ気持ちよくなってるのが気の毒になっちゃって。――あ、そうだ。それでわたし、里歩に訊きたいことがあって」
『あたしに訊きたいこと? なになに?』
同じ女の子にこんなことを訊くのはお門違いなのかもしれないけれど、里歩にも彼氏さんがいるから、もしかしたら答えてもらえるかも。
「男の人も、わたしたちがしてるみたいに自分で処理してたりするのかな? 何ていうか……体のムラムラ?」
性欲の処理、と声に出して言うのはまだちょっと抵抗があったので、最後の方だけ言葉を濁した。
『そりゃ、してるだろうねぇ。むしろオトコの方がそこらへんはお盛んなんじゃないの? ただ、オンナが訊いても答えてはくれないけど』
「へぇー……」
里歩の言いたいことは何となく理解できた。男の人はプライドが高いから、そういうカッコ悪いところを女性に知られたくないということだと思う。ましてや恋人とか好きな女性には、不潔だと思われたくないんだろうな。
『絢乃だって、自分でしてるところ、彼に見られたくはないでしょ? 幻滅されたくないから』
「見られたくはない……けど、してることは彼に言ったよ。でも、彼は何とも思わないって言ってくれた」
『へぇー……』
里歩はリアクションに困っているようだった。
「むしろ、自分で処理してくれててよかった、って言ってた。他の男の人とするよりは、って」
『ああ、そっちの意味ね。あたし、彼氏の部屋のバスルームでオナってたらさぁ、彼氏が乱入してきてそのままシャワープレイに流れたことあるよ。もちろん外出しさせたけど』
「ええっ?」
それってどんなプレイよ? ちょっと気になる。
どうでもいいけど、バスルームでするとベッドの中の時より感じやすいのはどうしてだろう?
『……それはともかく、桐島さんは優しいし真面目だから、絢乃に気を遣ってるんじゃないの? 今日だって、ちゃんとゴム持ってたらガマンしないで最後までしてくれたかもよ』
「最後までって?」
『二人ともイくまでってこと』
「はぁー……、早くそうなりたいな。――あ、ねえ。わたしが彼を気持ちよくしてあげるっていうのはどう?」
思いつきでそんなことを言ってみた。
一応、小説やレディコミでやり方は知っていた。この日、彼がわたしにしてくれたみたいに、わたしの手や口で彼のアレを……。
『んー、それはあんまりお勧めできないなぁ。ウチの彼氏もイヤがるんだよね。女の子にそんなことさせられない、ってさぁ』
「そ……そうなんだ」
確かにあの行為は、お世辞にもキレイとは言えない。放出された精が顔にかかったり、口の中に溢れるのはちょっとイヤかも。
『そういうのが好きなオトコはたいてい、専門でやってくれるおねえちゃんのところに行くでしょ。少なくとも、桐島さんはそういうタイプじゃないはずだよ』
「うん、確かに」
そういうお店ってお金もかかるだろうし。堅実な彼がそんなことにお金を使うなんて考えにくい。
『とにかく、アンタは彼がその気になってくれるまで待つしかないんじゃない? でも、手とか舌ではしてくれるんだから、アンタがねだればそれくらいはしてくれそうだよね』
「……うん」
わたしは自分のアソコに這わされた彼の舌の感触を思い出して、ウットリとなった。
最初はモゾモゾして落ち着かなかったけれど、あれは一度味わうとクセになるかもしれない。この先、自分の指だけでしても物足りなくなるかも。
* * * *
「……あぁっ、はぁ……ん♡ あ……そこ……っ♡」
あの後、デートの終わりには決まって、彼はわたしを手や舌で気持ちよくしてくれるようになった。
クルマの後部座席で、もしくは彼の部屋で。まだ交わりこそしなかったけど、それだけでわたしは彼の見ている前で何度もイった。
「もう……イく……っ! ……あぁー……っ!」
彼の舌使いは天才的で、わたしは彼になめてもらえると思うだけで感じてしまうようになった。
そんなことが一ヶ月半近く続いた、十二月のある日。その日も彼の部屋で、ただ秘部を手で弄ってもらったりなめてもらうだけの行為を楽しんで、何度も達したのだけれど。そろそろそれだけでは物足りなくなってきていた。寒くなってきたので、そろそろ彼の温もりがほしいと思っていたのだ。
彼に一度、「わたしが貴方にしてあげようか?」と提案してみたけれど、案の定拒否された。彼もやっぱり、わたしがそういうことをするのは汚らわしいと思っているみたいだった。
「――絢乃さん。今年ももうすぐクリスマスですね」
下着を整え、帰る支度をしていたわたしに彼がポツリと言った。
「うん、そうだね。もうそんな時期か……。で?」
「イブは金曜日で会社があるので、デートは帰りになりますね」
「うん」
「翌日は土曜で会社は休みですけど、絢乃さん、外泊って大丈夫ですか?」
「外泊……、はどうだろう? ママに訊いてみないと」
思いがけない質問に、わたしの胸はときめいたけれど。まだ高校生の身だったので、一応母の顔も立てておかなければ。
でも、多分外泊自体はOKだったはず。里歩のお家に泊まりに行ったことも何度かあったし、男性の部屋に泊まるのはこの時が初めてだったけれど、相手が貢なら母も何も言わなかっただろう。
「そうですか……。もしお母さまからOKが出て、その日僕とどこかに泊まることになったら、その時は……」
「その時は?」
「~~~~っ! みなまで言わなくても分かるでしょう!?」
分かっていたけれどあえてすっとぼけて見せると、彼は顔を真っ赤にして吠えた。……そう、彼はわたしを抱いてもいいと思ってくれているのだ。つまり、その日初めてわたしは彼と交わることができる。
「……ああ、ゴメン。でもいいの?」
「……僕も、そろそろガマンの限界なので。その日はちゃんと避妊具の用意もしておきますから。僕が……あなたとしたいんです」
「うん、ありがと。そっか、いよいよか……」
もうすぐ、彼と交われる。そんな期待感から、つい数分前にイったばかりだというのにわたしの秘部がまたジュクジュクと疼きだした。
モゾモゾと膝を擦り合わせていると、貢がそれに気づいた。
「……もしかして、また濡らしてます?」
「うん」
「そうですか……。あの、下着越しになら、今してもいいですけど」
「……えっ、どういうこと?」
「挿入はナシで、お互い下着は穿いたままで、粘膜をこすり合わせる感じというか。上をスライドさせるというか」
「まぁ、挿れないなら妊娠の心配はないか。でも、それで貴方も気持ちよくなれる?」
「多分……。絢乃さん、替えの下着ってお持ちですよね?」
「うん、持ってきてる」
彼に秘部をなめてもらうようになってからは、毎回デートのたびにバッグの中に替えの下着を常備していた。というか、女性というのは生理の出血などで汚した時のために備えているものなのだ。
「じゃあ大丈夫ですね。僕の下着は汚れたら洗濯すればいいだけですし」
「……じゃあ、今から……する?」
帰り支度をしていたけれど、気が変わった。
「はい。――絢乃さん、ベッドに寝転がって脚を開いて下さい」
「うん……」
わたしが言われたとおりにすると、彼もブラックデニムのパンツを脱いで下半身はボクサーパンツだけになった。その布地を突き破らんばかりに、中では彼の分身がパンパンにそそり立っていた。
「じゃあ……行きますね」
「うん、……あぁっ♡ あ……熱い……」
彼の熱を帯びたアソコが蜜で潤んだわたしの粘膜と重なった。手や舌でされていた時にはなかった熱さを感じ、思わず声が漏れる。
「腰、動かしますよ」
「うん。……あぁ……っ、ぁあん♡ ん……何これ……、こんなの初めて……っ」
彼の突起が蜜に濡れて露になったわたしの赤い肉芽を押し潰すたび、そこから初めての快感の波を生んでいく。
「はぁ……ん、ぁあっ♡ あ……っ♡ 貢も気持ちいいの……っ? んっ、なんか大きくなってる気がする……、貴方のソコ……っ」
動かされているうちに、彼の突起もだんだん質量が増していっていることに気がついた。
「う……っ、はい……。僕も気持ちいいですよ……。うぅっ、もっと早くこうしていればよかった」
彼も快感に呻きながら、腰の動きを止めない。動くのをやめたら、この快楽が逃げてしまうとでも言うように。
「あ……っ、あぁっ♡ んんっ……んぁっ♡」
彼をもっと気持ちよくしてあげたくて、わたしも一緒に腰を振ってみた。すると、すっかり勃ってしまっていた赤芽への刺激が強くなって、自然と声も高くなっていく。
どちらの股間もお互いの体液でグチョグチョになっていて、下着もすっかり汚れてしまっていたけれど、わたしはこの行為を汚らわしいと思わなかった。むしろ、こうしてお互いの粘膜で愛を語り合うことこそが、わたしの知りたかった〝オトナの恋愛〟なんだと思ったから。
「あ……っ、はぁ……ん♡ わ……わたし、そろそろイきそ……っ!」
「ぼ……僕も……っ! でもここで出すわけには……」
気づけばお互いに絶頂を迎える寸前だった。でも、この場での放出をためらった彼はわたしから離れ、チェストの
ひとり取り残されたわたしはというと――。
「…………はぁ……っ、あぁーっ……!」
久しぶりに自分の指で過敏になっていた赤芽を弾き、目の前に火花を飛ばしたのだった。