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ひとりアソビ。 ②



   * * * *



『――いやー、ビックリだわー。まさかアンタがオナる日が来るなんてねー』


「…………うん、まぁ……そうだよね」


 翌日の夜。電話の向こうの大親友・中川なかがわ里歩りほのあけすけな言い方にわたしは絶句したけれど、彼女ならこう言うだろうなと思った。


「だって……、こっちはその気になってるのにさ、貢が全然しようとしてくれないんだもん」


『それで二夜連続でひとりプレイして、今朝もやって潮まで噴いたって? アンタの性欲どんだけ強いのよ』


「……里歩、言い方」


 聞くに堪えなくなってきたわたしはとうとうツッコミを入れた。彼女の言っていることはごもっともだったのだけれど、あまりあけすけすぎて聞いているこっちが恥ずかしくなってきたのだ。


『あー、ゴメン。まぁねえ、好きな人にしてもらえないならってひとりプレイに走りたくなる気持ちは、あたしにも分かんなくはないかなー。あたしだってそうしてるもん』


「……もしかして、里歩も男性経験済みなの?」


 まるで経験者のような言い方に、わたしはもしやと思った。彼女には当時専門学校生だった、二歳年上の彼氏がいたのだ。


『まぁね~♡ あっ、絢乃! いま「意外だ」って思わなかった!?』


「ううん、そんなことないよ! んー、でもそっかぁ。里歩も経験者なんだ……」


『今どき、女子高生で経験済みなんて珍しくないよ。もちろん、ちゃんと避妊はしてくれてるけど。――桐島さんは真面目すぎるのかなー? それともよっぽど自分に魅力がないと思ってるか』


「もしくは、わたしに色気がないから……?」


『それはないでしょ。最近のアンタ、めちゃめちゃお色気あるもん。あたしが男ならムラムラきちゃってるくらいに』


「む、ムラムラ? ……それはともかく、どうやったらわたし、貢のことその気にさせられると思う?」


『んー、そうだなぁ。まずは服をセクシー系に変えてみるとか。彼が何フェチとか分かる?』


「えっと……多分デコルテと、うなじ……かなぁ」


『デコルテとうなじ……、あらあら。桐島さん、意外とムッツリじゃん♪ じゃあ、透け感のあるワンピとかオススメだよ。品のいいセクシー系。あとは……』


「あと?」


『これだけは確実。男はモコモコを着る女の子に弱い!』


「モコモコ……ってねぇ、時期的にまだ早すぎでしょ」


 電話の向こうでドヤ顔をしていそうな親友に、わたしは呆れた。ちなみにこれは、まだ暑さ厳しい夏の終わりの話である。


『まぁまぁ。とりあえず、頭の隅っこにでも入れといて。――んで、アンタは今日この後もするの? ひとりプレイ』


「う~ん、今日は貢とキスできたしいいかなぁって。どうしてもムラムラするようなら、今夜はバスルームでしようかな。今朝のシャワーでのアレ、気持ちよかったから」


『うんうん、分かる~♡ シャワーの破壊力ヤバいよねー。あたしもアレで何回イったか分かんない』


 里歩が同調してくれた。ということは、彼女も同じことをやったのだ。


「…………あのね、里歩。どうも……貢にも気づかれたかもしれない。わたしが自分でしてること。あくまで『もしかしたら』って話なんだけど」


『えっ、それマジ!? どういうこと?』


「うん、それがね……」


 わたしはその日のデートで彼にされた質問の話を、彼女にも聞いてもらった。



『――あの、絢乃さん。ええと……、その、……絢乃さんにもやっぱり男性に対してムラムラしたりする気持ちってあるんですか?』


『えっ!? ……っ!』


 もしかして、ひとり遊びのことを彼も気づいたのかと、わたしはビクッとなった。でも体は正直で、彼の言葉だけで人知れずわたしの秘部が濡れてしまい、わたしはそんなことでも感じてしまうのかと密かに動揺した。でも、生理前だったのでナプキンをしていたからまだよかったかも。


『そ、そりゃあ……わたしもオンナだからね。それなりには』


 動揺を彼に気づかれまいと、わたしは必死に虚勢を張った。でも、彼からの次の質問でわたしの動揺はさらに強くなった。


『そうですよね……。じゃあ、そうなった時はどうされてるんですか? たとえば昨日とか一昨日の夜、やっぱりご自分で……その……』


 真面目な彼らしくオブラートに包んだ言い方だったけれど、要は性欲を自分で処理しているのかという問い。そう理解したら、すでに濡れ始めていた秘部からまた蜜が溢れてきた。

 こんな状況でという動揺と、彼にどう答えようという困惑から、すぐには言葉が出てこずに困ってしまった。


『……絢乃さん?』


「夜な夜なオナってる」なんて答えたら、彼はきっと卒倒するだろう。もしかしたら幻滅されちゃうかも。


『…………っ、それはノーコメントで』


 とりあえずそこはそれで押しとおして、彼もそれ以上は突っ込んで訊いてはこなくなったけれど。わたしが挙動不審だったことは彼も不思議に思っただろう。



「…………というわけなの」


『――あ~、そりゃあ気づかれてるだろうねぇ。でも、桐島さんの性格からして、しばらくその話題は避けてくれるんじゃないかな』


「だといいけど……。あ~~、思い出しただけでまたムラムラしてきちゃった。やっぱりバスルームでしてくるっ!」


 彼女との電話中から、下半身のムズムズが復活していたのだ。ごまかすように膝を擦り合わせていたけれど、それもそろそろ限界かもしれない。


『うん、いいんじゃない? 思いっきりイってスッキリしといで。じゃあね』



 ――里歩との電話を終えるとすぐ、わたしはバスルームへ飛び込んだ。

 脱衣スペースで下着を脱ぐと、やっぱり秘部は蜜でジュルジュルになっていた。思わずそこへ指が伸びる。


「あ……っ。でもここでするわけには……」


 わたしの部屋のバスルームは、バスタブの周りのスペースがちょっとしたベンチみたいに広い。わたしは壁際の角に両脚を開いて腰掛け、朝のように右手で秘所を思いっきり広げた。すでにジュクジュクに溢れていた蜜をまとわせた中指で雌芯を繰り返し刺激する。


「…………んぁ……っ♡ ぁあ…………っ」


 漏れ出る声がバスルームの壁に反響して、部屋でしているときよりもなまめかしさが増す。それが脳にも伝わって、より興奮しておかしなアドレナリンが出てくるのを感じた。それにより、わたしの指の動きはますますエスカレートしていった。

 指を二本にして蜜壺の奥まで沈め、グチュグチュになったそこを何度も往復させると、指に絡みつくようにヒクヒクと収縮してきた。


「はぁ…………っ、あぁ…………ん♡ もう……たまんない……っ! ぁあ……んっ!」


 新たに溢れてきた蜜で、先に濡れていた中指だけではなく人差し指もぬめっていた。そのぬめりを親指にも移し、親指で同時に核も刺激すると、あまりの快感にわたしの声も高くなる。


「はぁ……っ、ぁあ……っ! あぁ……ん、もう……ダメ……っ!」


 一度目にイった後、シャワーヘッドをフックから外した。蛇口をひねり、少し熱めのお湯を出すと、グショグショに濡れそぼった秘部にヘッドを直接当てた。

 そのままヘッドを上下に動かすと、お湯が蜜で濡れて敏感になっていた芯の先端を直撃して、何ともいえない快楽をおぼえる。


「……ぁあー……っ、はっぁー……♡ あぁ……んっ♡」


シャワーヘッドは右手で持っていたので、空いていた左手で胸の先を同時に刺激してみると、下への刺激もより強くなったような錯覚に陥る。だんだん呼吸も荒くなってきた。二度目の絶頂が近い。


「んぁ………っ、は……ぁ……っ! あ……、い……イくぅ……っ! あぁ…………っ!」 


 わたしは体をのけ反らせ、一回にイった時よりも激しい二度目の絶頂を味わった。


 その後ボディソープで全身をキレイに洗い、シャワーで泡を流そうとしたのだけれど。


「あぁぁーーー……っ! あぁ……、イっちゃった……。はぁ……」


 ここで三度目の絶頂を迎えてしまったのだった。



 その後もベッドの中でオナって二回イき、また潮を噴いてしまった。わたし、ホントにどれだけ性欲強かったのよ……。


 実はこの日、貢とのデート中にトイレでも自慰行為をしていたのだ。そのことを多分、彼は知らないはず。

 もちろん、これもわたしには初めてのことではなかった。



『――ねぇ貢、ちょっとお手洗いに行ってきてもいい?』


 映画でも観ようと入ったショッピングモールで、わたしは彼にそう切り出した。どうにも下半身のジュクジュクが気になって落ち着かなかったのだ。

 ちょっと時間かかるかもしれないけど心配しないで、と彼に言い置いて、わたしは手近にあった女性用トイレの個室に駆け込んだ。


 ショーツを下ろして、少し脚を開いて便座に腰を下ろすと、やっぱり当てていたナプキンは蜜でぐっしょり濡れていた。


『あんまり彼を待たせるわけにはいかないけど……、わたしは先っちょだけでもだけでもイケるから……』


 着ていたワンピースの裾をたくし上げ、剥き出しになった秘部に指先を這わせる。はしたない声が個室の外に漏れ出ないように下唇を噛みしめながら、蜜を絡めとった中指の先で敏感な先端をグリグリと弄った。


『ん……っ、…………っ! ん……ぁっ!』


 しばらく続けていると、それでも小さな声が漏れてしまったけれど、ここにはかなりの数の個室があるし、周りが騒がしいのでこれくらいなら外には聞こえないだろう。大丈夫。

 中断して腕時計を確かめると、まだ二~三分しか経っていなかった。


『んぁ……っ、ぁあ……っ、ん……っん! あぁ……っ』


 この時は核ばかりを刺激していたけれど、気づかないうちに尿道の方まで刺激してしまっていたらしく、尿意まで催してきてしまった。


『あ…………っ、こっちも出ちゃう……っ! はぁ……っ、ああぁー…………!』


 目の前が白くスパークしたのと、黄金色の液体がジョボジョボ流れ出てきたのはほぼ同時だった。


 よくよく考えてみたら、女性のあの部分と尿道は密接しているので、オナっている時に尿意を催すことはよくあるらしい。わたしにも時々ある。

 そんなわけで、トイレでの自慰行為というのは一石二鳥でわりと理にかなっているのかもしれない。


 その後わたしは汚れていたナプキンを新しいものに取り換え、ちゃんと秘部をペーパーで拭ってから水も流して個室を出た。

 それからキチンと手もキレイに洗って、何食わぬ顔で彼のもとへ戻っていったのだった。


「――っていうかわたし、今日は合計八回もイっちゃってるじゃない」


 ここまでくるともう、強すぎる自分の性欲に笑うしかなかった。

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