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トップシークレット ~お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる~
トップシークレット ~お嬢さま会長は新米秘書に初恋をささげる~
日暮ミミ♪
恋愛オフィスラブ
2024年07月24日
公開日
17.9万字
完結済
大財閥〈篠沢(しのざわ)グループ〉の先代会長だった父の急死を機に、17歳でその後継者となった一人娘の絢乃(あやの)。

そんな彼女を献身的に支えるのは、8歳年上の秘書・桐島(きりしま)貢(みつぐ)。彼は自身をパワハラから救ってくれた絢乃に好意を抱いていて、その恩返しに秘書となったのだった。

絢乃もまた桐島に初めての恋をしていたが、自分の立場や世間の注目が彼に集まってしまうことを危惧して、その恋心を内に秘めていた。

ところがある日の帰宅時、桐島の車の中で彼にキスをされたことにより、絢乃は彼の自分への秘めた想いに気づいてしまう──。

初恋に揺れ動くキュートなお嬢さま会長と、年上ポンコツ秘書との身分の差・境遇の格差を越えたラブストーリー。


※おまけエピソード聖なる夜に……」のみ、少々過激な性的描写あり。

プロローグ

 ――「初恋は実らない」なんて、一体誰が言い出したんだろう? もし初めて恋に落ちた相手が運命の人なら、百パーセント実らないとは限らないのに。

 実際、わたしがそうだった。生まれて初めて恋をした相手が運命の人になったのだ。

 わたしの名前は篠沢しのざわあや。現在まだ十九歳という若さながら、日本屈指の大財閥〈篠沢グループ〉の会長兼CEOである。

 そして、わたしが初めて恋に落ちた相手は桐島きりしまみつぐ。わたしより八歳年上で、会長秘書兼わたしの個人秘書でもある男性だ。

 彼との出会いは今から二十ヶ月前。先代会長だった父・篠沢源一げんいちの四十五歳の誕生日だった。

 わたしと彼との間には年齢差や経済格差、身分の差など様々な障壁があったけれど、それらを乗り越えて無事に結ばれた。わたしの初恋は見事に実ったのだ。

 わたしは今、彼が初恋の相手で本当によかったと心から思っている。彼と一緒でなければ、父を早くに亡くした悲しみを乗り越えることも、現役高校生として大きな組織のかじ取りをすることもできなかっただろうから。

 そして今日この日、わたしは愛しいこの男性ひとと新たな旅立ちの時を迎えようとしている――。



 ――ここは結婚式場。わたしはベアトップのデザインの真っ白なウェディングドレスに身を包んで、白いタキシードの上下にブルーのアスコットタイを結んだ彼と、花嫁の控え室で向き合っている。


「貢、わたしたち、やっとここまで辿り着いたね」


「ええ。今日までに色々なことがありましたけど、今日という日を無事に迎えられてよかったです」


「ホントに色んなことがあったね。わたしがストーカー男と対決したり、その前に貴方に不意討ちでキスされたり?」


「あれは……その、暴走してしまったというか。すみません。でも、あのおかげもあって僕たち、付き合い始められたようなものですから」


「うん……まぁね」


 思い出話は尽きないけれど、わたしたちにとっていちばん忘れられない出来事はやっぱり父を亡くしたことだ。あの悲しい出来事をこの人と共有できたおかげで、わたしはあれから泣くことがなくなったのだ。


「そういえば絢乃さん、お義父とうさまのご葬儀の後、泣かれなくなりましたよね。強くなられたというか」


「それは、貴方っていう心強い秘書がついてくれたからだよ。まあ、忙しすぎて泣くヒマもなかったからっていうのもあるけどね」


 大企業のトップとして、強くありたいとわたし自身が頑張ってきたから。でも背伸びはせず、時には周囲の人たちにも助けてもらいながら、わたしは経営者としても今日まで逞しく成長してこられたと思う。


「貴方と出会ったあの日は、今日みたいな日を迎えられるなんて夢にも思ってなかったけど」


「そうですね……。僕も多分、予想できてなかったと思います」



 それは一年と八ヶ月前。わたしと彼が、会長令嬢とひとりの社員として出会った夜のことだった――。

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