「今日の全国ニュースをお伝え致します。全国各地でアクジキジハンキの目撃情報が多発しております。皆様、アクジキジハンキにお気をつけください」
冗談みたいなキャスターの言葉。キャスターすら、その原稿を信じていないのではないかというほどの淡白さでそのニュースは報道されていた。
そのニュースを見るなり、テレビの電源を落とす青年が一人。
「随分ビックネームになったものだ、アクジキジハンキさまも」
その青年はにやりと含み笑いで呟くと、質素な部屋の片隅にあるパソコンを開いた。すぐにインターネットに繋ぎ、いつものページを開く。「怪奇掲示板」というおどろおどろしい赤文字が乱舞する中、青年は早速書き込みをした。
「とうとうアクジキジハンキ注意報が出るようになったね」
そう呟いてほくそ笑み、誰かしらの書き込みを待っていると、すぐに返信が来た。
画面の向こうの人物の感情はわからない。もしかしたら、この青年のように笑んでいるかもしれないし、あるいは憤慨しているかもしれない。
返信の書き込みには、ただ、こうあった。
「この主犯め!」
その書き込みに、主犯呼ばわりされた青年は笑みを深める。その表情は目の下を縁取る色濃い隈と相まって、いっそう不気味に見えた。
「僕が主犯とは愉快愉快。よかったね、アクジキジハンキさま」