株が上がる――これは喜ぶべきことだろうか。
評判が上がるというのは悪いことではないし、喜ぶべきことだろう。
では、反対に株が下がる――これは悲観すべきことだろうか。
「人の評価を気にしていても……」みたいな話は聞く。
ただ、言わせてほしい。
俺みたいな友達が少ない人にとって大問題だということを
では、株が下がったとき、つまり友達を失いそうになったとき、どのような行動を取ればいいのか。
それも、原因が分からないとき。
今までの話は、現実味が薄いが、それが現実の出来事だったとしたら?
ただでさえ、人間関係の乏しい俺だから、ムズすぎるのは目に見えている。
それに加え、
でも、やらなければならない。
関係を修復するためには、「行動あるのみ」なのだから。
◇
中学生のときから付き合いのある友達で、最初にできた女友達。
他にも女友達――友達と言える仲だと断言はできない――はいるにはいるのだが、彼女ほど気を許して話せる相手はいない。
友達の少ない俺とは対照的に、彼女は人気者。
高校に入ってから、一人も友達ができていない俺とは大違いだ。
そのため、直接話すことはあまりできないのだが、頻繁にメッセージを送り合う仲だ。
とはいえ、最近は、花菜からの返信が来ていないのだが。
花菜とのメッセージは、三日前に送ったきり途絶えている。
単に忙しい、ということも考えたのだが、どうやら違うらしい。
(なんか避けられてね?)
そう感じさせられるほどには、避けられている気がする。
本人の口から直接聞いたわけではないが……
(理由を聞くのも気が引けるし……)
俺は「気になる」という自分の気持ちを、行動に移せないでいた。
これが友達ができない理由ということは、自分でも分かっているのだが。
(何かしたのなら申し訳ない……)
そう思いつつ、沢山のクラスメイトに囲まれている彼女のほうに目をやる。
あの輪の中に話しかけに行く勇気は持ち合わせていないので、禁断の手段を実行することにした。
俺はそれを実行するタイミングを今か今かと待ち構えていた。
そして、ついにやってきた、絶好のタイミング。
花菜の周りにいた面々がいなくなった。
俺は開いていたスマホの画面をタップ
『どうしたの?』
作戦は成功した。
いくら俺を避けている彼女でも、電話が来たら出ざるを得ないだろう。
メッセージは無視できても、電話は無視できまい。
できればこんな手段は取りたくなかったが、話さないことには事態は進展しないから仕方のないことだ。
距離は十五メートルほど。
にも関わらず、電話。
こんな距離でするのは、なんかあれだが。
『直接会って話し――』
『用があるならここで話して』
直接会ったほうが良いと思ったのだが、花菜がそう言うのなら仕方ない。
『単刀直入に聞くが……俺、何かしたか?』
『何も』
『避けてるのは、俺がなにかしたからだろ?』
『本当に……何でもないから。じゃあ、切るね』
ほとんど話すことなく切られてしまった。
(絶対何かしちゃったな……)
俺は、自己嫌悪に沈みそうになりながらも、どうするべきかと熟考する。
しばらくすると、教室から出てきた花菜と目が合う。が、花菜は足を止めることなく行ってしまった。
◇
その日の夜、人間関係をあまり積んでいない俺だけで考えても限界だということに、今更ながら気が付いた。
そう、今更ながら。
一人で悩んでいてもしょうがないので、姉に相談することに。
(姉さん、そういうのは得意そうだしな……)
事情を話したら「プレゼントあげてみたら?」ということだったので、プレゼントを選びに行くことにした。
姉にプレゼント選びのセンスを心配されたので、明日、姉も付き添いで来ることになった。
(プレゼントはちょっとな……)
そう感じながらも、良い方法が思いつくわけでもないので、頷くほかなかった。
(原因を話してもらう)
これが関係修復の第一歩になるのだ。
そのためにも、どうにかして話してもらわなければ……
原因が分からなければできることは何もないのだから。
(それにしても原因、か)
胸に手を当てて考えてみる。
(電話でも、原因となる俺の行動を特定する手がかりはなし……)
短時間だから当たり前なのだが。
(ここ数日にあったこと……。俺がやらかしたこと…………)
思いつかないことが一番問題。それは分かってあるが、分からないものは分からない。
俺は、原因について、深く考えることなく眠りについた。
理由は単純明快で、思い当たる節がなく、考えていてもキリがなかったから。ただそれだけ。
せめて、もう少しヒントがあればよかったのだが