目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報
二分法的思考は指先を嚮導する
社鼠現
現実世界裏社会
2024年07月23日
公開日
36,628文字
連載中
関東に作られた実験都市「水怜地区」
都市で暗躍する殺し屋の主人公”タカクラ”は正体不明の家出少女”左鷺玲”と出会う。
タカクラは少女の家出理由を知り、彼女を匿う事にする。
丁度その時、水怜の地下では”何か”が動き始めていた。

第0話

「あの」

 と声がした。

 私の背後からだ。

 私は、気配が感じられなかったことを神妙に思いながら声の主と対峙した。

 振り返る時に靴の底がアスファルトと擦り合い、ざりっと音を立てた。

 そして私は気づく。

 これは可笑しいことだと。

「――私を、助けてくれませんか」

 午後四時と多少。仄暗い裏通りの片辺にて出会った二人は、――あまりにも相容れない二人過ぎた。

「はあ」

 殺し屋である私と、紺碧のセーラーに身を包んだ彼女。

 夢を捨てた者と、夢を追い求める者。対比などいくらでも出来る、場違いな二人。私はそれに違和感を感じていた。

 彼女は何故、よりにもよって私に話しかけてきたのか。話しかけてしまったのか。

 私と彼女がその理由に行き着く前に、他律的な物語は終息に向かって時を刻み始めた。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?