「あの」
と声がした。
私の背後からだ。
私は、気配が感じられなかったことを神妙に思いながら声の主と対峙した。
振り返る時に靴の底がアスファルトと擦り合い、ざりっと音を立てた。
そして私は気づく。
これは可笑しいことだと。
「――私を、助けてくれませんか」
午後四時と多少。仄暗い裏通りの片辺にて出会った二人は、――あまりにも相容れない二人過ぎた。
「はあ」
殺し屋である私と、紺碧のセーラーに身を包んだ彼女。
夢を捨てた者と、夢を追い求める者。対比などいくらでも出来る、場違いな二人。私はそれに違和感を感じていた。
彼女は何故、よりにもよって私に話しかけてきたのか。話しかけてしまったのか。
私と彼女がその理由に行き着く前に、他律的な物語は終息に向かって時を刻み始めた。