――控えめに言って最高すぎる作品が、二個も完結した。
俺は確信した。更新催促はするべきだった。つきっきりで励まして書かせれば、怖はきちんと書く。そして一人だと際限なくだらける上に、興味があちこちに行ってしまうようだ。その結果、前の作品の存在を忘れてしまうらしい。
……俺がいないと、ダメらしい。
いや、それは計画通りではある。俺は当初は怖の食生活を不憫に思ったのもあるし、自分がいる空間が綺麗で無いのが許せなかったのもあって、家事を行うようになった。その内に、コレは俺に依存させれば俺の言いなりになるかもなと言う打算が働き、それを加えて計画的に行うようになった。結果、怖は俺の言う通りに小説をきちんと書いてくれるようになった。
それはいいのだが……困った問題がある。
チラチラと俺は、俺の作品を読んだ笑顔を浮かべている怖を見た。
怖を見ていると、独占欲がわいてくる。なんなら、怖は俺のモノだ、というくらいに考えてしまう。俺以外とSNSで絡んでいるのを見たりすると、ちょっとイライラする。
怖を俺に依存させるはずが、俺の方がどんどん怖に執着してしまう。
どうすればいいのだろうか。
「楪。面白かった。これ、続きは無いのか? 綺麗に終わってるから難しいと思うけど、もっと読みたい」
優しい声で頬を染め、嬉しそうな顔で、俺を見る怖。おい、可愛いな。
このようにして――我ながら秀才である俺は、天才型の怖の面倒を見て、全て管理しつつ……怖の才能に触れるようになって……気づけば俺の側が魅了されていた。虜になったのは、結局俺の方で、無意識なのだろうが怖は全てを俺に任せて楽しそうにしている。そういうところまで、怖は天才的だったらしい。
いいや、違うのかもしれない。
俺は今では怖を大切な友人だと思っているのだから、この生活が幸せでたまらない。
親友だと俺の方は思っている。
いつか、この気持ちを告げたいが、それは照れくさくて出来ないなと感じながら、俺はこの日は青春小説を書いた。いつもの計画性など微塵も発揮せず、思いのままに書いてみた。すると。
『最高でした!』
今までに無い好評かを得て、俺は目を疑った。
「すごいなぁ、やっぱり楪のお話は、最高だ!」
怖も満面の笑みで褒めてくれた。そして、俺は一つ気づいた。
俺は自分の努力は決して否定しない。だがそれにより築き上げて、磨き上げた技術で――今後は思いの丈を綴ろうと。きっと天賦の才で、怖はそれを成していたのだろう。技術は、後でだってつけられる。俺は、怖から一つ学び、そしてこれこそが、天才と秀才の差なのだと思い知った。けれど……気づくこと、それが出来れば、誰にだって開花する才能はあるのだとも同時に学び、俺は天才になれないのだと諦めることをやめた。
―― 終 ――