俺も多分、焦っていて、『来るか?』などと言ってしまったのだが、その日から、毎日楪さんが、俺の家に来るようになった。結果、今では俺は呼び捨てにしている。なお、本名は知らない。
「楪……夕食まだか?」
「今日はエビフライを作ってやるから待っていろ!」
控えめに言って楪は、俺と俺の猫の介護をしてくれるようになった。毎日夕方に来て夕食を俺達に与え、一晩中俺の家で、俺の書いた小説を読んだり、俺に書くように促して、その後持ち込んだ寝袋で眠り、朝食を作ってお昼ご飯は作り置きし、会社に行っているようだ。会社には秘書さんが迎えに来てくれる車で出かけている。なんだか「専務」と呼ばれていたが、一体何者なのだろうか。年齢は、俺の三つ上で三十一歳だと聞いた。
「できたぞ」
「うん」
二人で俺達はテーブルを囲んだ。
今まではハウスキーパーさんとカップラーメンで過ごしていた俺だが、それを伝えたら遠い目をした楪が全てやってくれるようになったので、最近では俺はハウスキーパーさんに依頼をしていない。
最早、楪がいなかったら、俺の生活は成り立たないのではないかと言うくらい、全てやってもらっている。いいんだろうか、これ……。
「ところで、今日は連載はどこまで進んだ?」
「ああ、あれは書き終わって、あっちも終わったよ」
「食べたら読む」
「それよりさ、楪は? 新作は? 俺待ってるんだけど」
「会社で休憩時間に書いた。予約投稿する。九時だ」
「おお……! それを早く言ってくれ!」
しかし楪といると楽しいので、これはこれでいいかもしれないと最近俺は思っている。