部屋割りは出願番号順いうことで、アリシアとは同室になった。
広大な宮廷の一角にある、まるで女子寄宿寮のようなメイド専用棟の一室を与えられ、お互いのベッドの位置を決める。
二十名足らずの上級侍女たちのために用意されていたのは、使用人のものらしからぬ豪奢な部屋。
これまでの人生で触れたこともないほどふかふかのマットレスに驚愕しながら……セリーナは窓側のベッドを選んだ。
「──とりあえず、着替えましょうか」
皇城に奉公する侍女たちはその階級によってお仕着せが色分けされていて、黒色の下級メイドと初級侍女、紺色の中級侍女、セリーナたちは白色で上級侍女に分類され、宮廷内では『白の侍女』と呼ばれるらしい。
色分けしておけばひと目でわかるという理由もあるが、お仕着せの素材すらも黒から白まで格付けをされているというのには驚いてしまった。
皇宮に住まう皇族たちに仕えるのに相応しく、洗練されたデザイン。セリーナたち『白の侍女』に於いては、業務に差し障りがなければ髪型にも決まりはない。
ただ──こういうフリフリした服を着た自分の姿を鏡で眺めてみても、セリーナには違和感でしかなかった。
「アリシア、素敵……! とてもよく似合っています!」
こちらに目を向けたアリシアが「セリーナもっ」と言いかけたが、言葉に詰まってしまう。お世辞でも『似合っている』とは言えなかったらしい。
「この違和感は何かしら? そうだ。ちょっと待ってて」
ゴソゴソと鞄の中をあさり、大きな巾着袋を持ち出してくる。
「えっと、ここをこうして……眉を整えて。髪もこうやった方がいいわね?」
セリーナの頼りない真っ直ぐな髪は、アリシアの『秘密兵器』ですっかりまとまってしまうのだった。
「すごいわ……お花の香りがします! アリシアは治癒以外にも《魔法》が使えるのですねっ」
「魔法って、香油を少し馴染ませただけよ?」
と、手渡されたのは青い小瓶。
とろりとした透明の液体が入っている。
「こう、ゆ?」
「ええ。魔法でもなんでもないけれど、良かったら一緒に使いましょう」
それは生まれてはじめて見てふれるもので、セリーナの心を強く揺さぶった。
この液体が髪の毛をまとめてくれると言うのか。
やっぱり、魔法だ……。
「できたっ。鏡を見て」
アリシアに促され、なんとなく見たくなくてうつむいていた顔を上げる。
綺麗な……とは決して言い難いが、薄化粧を施され、髪をきちんと結わえた
フリフリの白いお仕着せの違和感も少しはマシになった気がする。
「ぇ……私、なんだか」
「ふふ、どうしたの、そんなに不思議そうな顔をしなくても」
──なんだか、普通の侍女に見える気がします
心の底からホッとする。
これならセリーナも