「こんなもん使わず、拳で語らんかい!」
うろたえるソリスの顔面を冷酷無比のメリケンサックが撃ち抜いた。
ゴリッ!
意識を一瞬で持っていかれ、ボコボコに撲殺されてしまうソリス。
「ふんっ! 弱すぎて話にならんわ……」
『レベルアップしました!』
黄金の光を纏いながら立ち上がったソリスは、油断している
全体重を乗せた渾身の右ストレートを
しかし、
ゴスッ! ゴリッ!
メリケンサックが骨を砕く嫌な音が広間に響き渡る――――。
「ふぅ、危ない危ない。油断も隙も無い。確かに殺したはずじゃったが……」
『レベルアップしました!』
黄金の光に包まれながら立ち上がるソリス。ただ、黄金の光に混じってかすかに紫色の怪しい光が揺れていたのにソリスは気がつかなかった。
「な、何だお前……チートか?」
「
ソリスは前傾しながら両腕で顔をかばい、ボクシングのファイティングポーズをとった。
「ほざけ! そんなド素人の技が通じるかい!」
ゴフッ!
胃液が逆流しそうになり、ガードが甘くなった隙を
ソイヤー!
ゴスッ! ゴスッ!
メリケンサックがソリスをえぐっていく。
ぐふぅ……。
意識を断たれたソリスは口から血だらけの泡を吹き、またもノックアウトされた。
『レベルアップしました!』
今度は距離を取るソリス――――。
広い広間を後ろに横に逃げながらソリスはチャンスを探す。
「ほう? 頭を使うようになったな……」
しばらく追いかけっこをしていた二人だったが、業を煮やした
「ちょこまかウザい奴じゃ!」
一直線にソリスに迫る
へ?
予想外の行動に焦る
直後、ソリスはスライディングキックで
ソイヤーー!
脚をうまくひっかけて機動力を奪おうと考えたのだ。
しかし、
ゴフッ!
もんどりうって転がるソリス。
「ド素人の足技なんか食らうかよ! 格闘技なめんな!!」
グハッ!
腕を砕かれ、頭を砕かれ、絶命するソリス――――。
『レベルアップしました!』
黄金色に包まれたソリスだったが、
ソリスは必死に逃げようとしたが、
「馬鹿が! 逃がさねぇよ!」
マウントポジションからの容赦ない殴打。
グハァ!
グチャグチャにつぶされてしまうソリス。しかし、復活は止まらない。
『レベルアップしました!』
「何なんだお前はよ!」
『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』『レベルアップしました!』……
どのくらい繰り返しただろうか? さすがに疲れの見える
「お前、大概にせぇよ……」
殺しても殺しても
「さっきも言ったろう。お前はもう死んでいるんだよ」
ソリスは嬉しそうに微笑んだ。かなりレベルアップしたからか、さっきとは比べ物にならない程に気力体力が充実しているのだ。
「お前……、なんか別人になってねぇか?」
「別人? 何言ってんの?」
「最初は婆ぁだと思ったが……今はおねぇちゃんじゃねーか……」
「……は?」
ソリスの心臓がドクンと高鳴った。
慌てて手を見ればスベスべでつややかな張りのある肌になっている。
「な、何これ!?」
ソリスは自分の顔を触ってがく然とした。モチモチとして弾力のある肌、それはとてもアラフォーのものではない。長い年月で失われたはずの若い子のそれだった。
「の、呪い……なの?」
ソリスはゾッとした。さっきまでこんなことはなかった。つまり殺されるたびに若返っているのかもしれない。
二十回くらい殺されてニ十歳くらいまで若返ってしまったと考えるべきだろう。と……、なると……。後二十回殺されたら赤ん坊になってしまう。そしてさらに殺されたら?
ソリスはもうこれ以上殺されるわけにはいかない現実に青くなる。
「ほう? 呪い? このまま殺し続ければ勝ちってことだな。はっはっは」
勝機を見出した
『マズいマズいマズいマズい』
ソリスは忘れかけていた絶望の味を再び心に感じ、冷や汗を垂らしながらゴクリと唾をのんだ。