『レベルアップしました!』
黄金の光に包まれながらソリスは立ち上がり、大剣を一気にゴスロリ少女へと叩きこむ。
うひぃぃぃ!
まるで霧を斬るかのように全く手ごたえはなかったが、斬る刹那、大剣は閃光を放ち、少女はビクンと
「『お馬鹿』は誰だろうなっ!」
ソリスはダッシュで追いかけもう一発大剣で一刀両断にする。
「な、何よあんた!? 殺したはずなのに! 死ねぇぇぇ!!」
空間に無数の漆黒の短剣が浮かび、また、ソリスに向けて超高速で吹っ飛んでくる。
くっ!
大剣でいくつか払ったが、とても全部は払えず、ソリスはまたハチの巣となって地面に崩れ落ちた。この短剣は鎧をすり抜けて身体を貫通していく。ある種の黒魔法のようだった。
『レベルアップしました!』
黄金の光を纏い、ゆらりと再度立ち上がるソリス――――。
「あ、あんた……。何なの……?」
ニヤリと笑いながら大剣を構えるソリスに、ゴスロリ少女の黒い唇がぴくぴくと震えた。
「
ソリスはさらに増した瞬発力を生かし、一気にゴスロリ少女に迫る。
しかし、ゴスロリ少女も負けていない。漆黒の短剣を無数浮かび上がらせると、そんなソリスをハチの巣にして打ちのめす。
ぐはぁ!!
『レベルアップしました!』
またも立ち上がったソリスは悪い顔をしながら言い放つ。
「クックック……。悪いねぇ。もうあたしの勝ちなんだわ……」
「マ、マジかよ……。あんた、もはや魔物だわよ……」
ゴスロリ少女はウンザリしたように首を振った。
「さっきのフィリアとイヴィットはどうやって出したの?」
ソリスは鋭い視線で大剣を少女に向けた。
「知らないわ。あたしは幻惑のスキルを使っただけだもの」
「幻惑……? でも、それならフィリアはイメージ通りのことを言うはず。変なことを言っていたあれは単なる私の幻覚なはずがない」
「ふふっ、だったら本物なんじゃない?」
ゴスロリ少女は肩をすくめる。
「ほ、本物……? フィリアは死んだのよ!」
「は? はっ、ははははっ!」
ゴスロリ少女は腹を抱えて笑った。
「な、何がおかしいのよ!!」
「あんたも何度も死んでるじゃない」
ゴスロリ少女はふぅと大きくため息をつくと、忌々しそうにソリスをにらんだ。
「え……?」
ソリスは言葉を失った。死んだら終わりだと思っていたが、確かに自分は何度も復活してるし、魔物たちも時間が経つと再生してくる。ここでは死は絶対的なものではなかったのだ。
「じゃ、じゃぁフィリアたちも生き返らせる方法があるってこと?」
生き返らせる方法として、神話に出てくる伝説の魔法
「そんなのあたしに聞くな! 女神たちに聞け!」
「め、女神……?」
ソリスは唖然とした。神話の存在だった女神に聞けとはどういうことだろうか? 女神とは会えるような存在なのだろうか?
「あんたのその生き返るギフト、どうせ女神からもらったんだろ? 会ったことあるんじゃないの?」
「へ……? ま、まさか……」
ソリスは動揺した。会った記憶などないはずだったが、確かにギフトの名前は【女神の祝福】、女神の効果だったのだ。
「な、なぜ女神様が私に……?」
「知るか! バーカ! 殺しても死なないとんでもないチートを送り込んできやがって、後でクレーム入れてやる!」
ゴスロリ少女は腕を組んで濃い化粧の頬を膨らませた。
「後でって……、会える……の?」
「おっといけない。今のは聞かなかったことにしといて。とりあえず死んどけ!!」
ゴスロリ少女はクワっと目を見開くと、無数の漆黒の短剣を浮かべ、ソリスに向けて放つ。
しかし、ソリスもレベルアップである程度は見切れるようになってきていた。素早く回避しながら短剣を払い落し、何とか直撃を免れる。
「ざ~んねん!」
ゴスロリ少女はそれを読んで、逃げ先に短剣を放っていた。
「ぐふぅ! つ、次こそは……」
ソリスは無念そうに床に崩れ落ちる。
『レベルアップしました!』
その後両者は延々と死闘を繰り広げていく。ソリスが与えるダメージは限定的だったが、それでも数十回も食らわせているうちにゴスロリ少女の様子に変化が見られてきた。
「……。くぅぅぅ……。化け物め……」
ゴスロリ少女は苦しそうに胸を押さえ肩で息をしている。
「そろそろ決着……ね。腹減ってきちゃったしね」
死にすぎてメンタルが限界に近づいていたソリスも、次の一撃で決めようとカチャリと大剣を構え直した。
「このチート
ゴスロリ少女は怒りで顔を歪めながら
「女神様に会ったら『ソリスは喜んでいた』と、伝えてくれる? くふふふ……。死ねぃ!!」
「いやぁぁぁぁ!」
空中を飛んで逃げようとするゴスロリ少女。
ソリスはものすごい跳躍力を生かし、一気に飛び上がるとゴスロリ少女の背中をけさ切りに斬り裂いた――――。
グァァァァァ!!
断末魔の叫びが広間に響き渡る。
ヨシッ!
ソリスはシュタッと着地すると、空中で苦しむゴスロリ少女を見上げた。長い死闘にもついに終わりが訪れたのだ。ソリスはグッとこぶしを握った。
ゴスロリ少女は真っ白になった目から黒い血を流し、恨めしそうにソリスをにらむ。
「許さん、許さんぞ! こんなの認めない……。あいつらが頭抱えるようにして……やる……。呪いを受けよ!!」
少女は口をパカッと開け、漆黒の炎を一気に吐きだした。
うわぁぁ!
慌てて避けようとしたが一歩遅く、ソリスは漆黒の炎に包まれる。
くあぁぁぁ!
熱くはないが、魂をジリジリと
「ざまぁ! はーっはっはっは!!」
ゴスロリ少女は楽しげに笑いながらすうっと消えていく――――。
後にはコロコロッと深紫の魔石を落としていった。
漆黒の炎も徐々に消え去り、ソリスは解放される。
「な、なんだ!? 何をされた?」
身体をあちこちと見回したが、何の変化も見受けられない。何をやられたのか分からず、その不気味さにソリスはブルっとその身を震わせた。