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第18話 最終試験の結果。

「おもち、炎だ!」

「ぐるぅ!」


 最後の試練の道は、視界がまったくない闇の洞窟のようだった。

 見えない中での魔結界は、驚くこと難易度が高い。


 そもそもこんな状況で戦ったことなんてない。


 魔物が現れた瞬間におもちに炎を吐いてもらい、視界を明るくする。

 おもちがいなければ、既に襲われて負けていただろう。


「おもち、ありがとうな」

「ぐるぅ」


 おもちから、そんなことないよ、と伝わってくる。


 真っ直ぐ進むと、ようやく光が見えた。

 その瞬間、身体が傷だらけだと気づく。


「ハッ、もっと……訓練積まなきゃな」


 道が終わる。

 目の前に、入口とまったく同じ門が現れた。

 終わりだと瞬時にわかった。

 なぜなら、温かい光に包まれていたからだ。


 振り返ると、俺が来た道が消えて2本の道が残っている。

 それぞれが繋がっているかはわからないが、ルージュとミリシアだと思った。


 そう思って矢先、左の道から、ルージュが走ってきた。

 へとへとらしく、道を抜けた瞬間に倒れこんだ。


「も、もうだめだ……魔力の欠片も残ってないぜ……。よお、クライン」

「大変だったみたいだね」

「ああ、後ろから岩が迫ってきたかと思ったら、左右から魔物だぜ」


 聞けばおそろしいほど大変だ。

 走るのは得意じゃないので、ある意味ではこっちで良かったかも。


 だがミリシアはいつまでもこなかった。


 十分、三十分経過しても。


「……クライン、そろそろ行こう。一位を獲るんだろ? それに、もう外に出てるかもしれないぜ」

「ああ、わかってる」


 だけど俺の足は動かなかった。

 ミリシアがたとえここを抜けたとして、一人で門をくぐるとは思えなかったからだ。


 そのとき――道から声がした。


 リリの鳴き声だ。


「ピルルル!」

「きゃああっああ」


 道から飛び出してくるも、大勢の魔物に追いかけられていた。

 肌で感じる。オーク、サイクロプス、さっきの鬼、更には魔狼、勢ぞろいだ。


「ミリシア!」


 俺は急いで前に出た。


「クライン、道には入れないぜ!」

「ああ、知ってる」


 俺自身が入ることはできない。


 けど、――俺以外は可能なはず。


「ミリシア、大丈夫――が全てをやっつける」


 俺は、透明な壁越しで人差し指と中指を立てた。

 同時に魔物が一斉にミリシアに襲い掛かる。


 だが―。


「クライン、お前、すげえ。な、なんだよそれ!?」

「まだ慣れてないから使う予定はなかったけど。――緊急事態だ」


 ――『魔強』と『魔変』。


 俺は、20つもの魔結界を瞬時に形成していた。


「クライン!?」

「急いで中に」


 そして俺は――魔滅で同時に全ての魔物を倒した。


「はは、すげえなクライン!」

「クライン……ありがとう」

「いやこちらこそありがとう。本当に」


 薄々感づいていたが、今の魔物を見る限り、ミリシアが入った道一番、魔力が強かったはずだ。

 おそらくリリに頼んで探知、あえて険しい道を選んだのだろう。


 まったく、彼女は凄い。


「よし、みんなで門、くぐろうぜ」

「だね。ルージュ、ミリシアの肩もって」

「ごめんね、二人とも」

「気にすんな。俺が一番何もしてねーぜ」

「そういえば、ポリンってどんな能力なの?」

「ああ、ええと――いいや、次に会うときの秘密だな」

「はは、そうだね。楽しみにしてる」


 そして俺たちは、同時に門をくぐった。


 ――――

 ――

 ―


「クライン、クライン!」

「ん……パパ、ママ……」

「凄いわクライン」


 目を覚ますと、俺は門の外にいた。

 メアリーとリルドがいる。


 傷だらけだったはずの身体は無傷、まるで夢を見ていたような浮遊感だった。


「見ていたぞお前の最後の力。――よくやったな」

「クライン、あなたは本当に凄いわ」

「へへ、よかった」


 その横では、ルージュとミリシアも同じように褒められていた。

 何人かは泣いていた。きっと落ちたのだろう。


 とはいえこれは遊びじゃない。試験だ。


 すると、鐘が鳴り響き、門が消えていく。


「これで試験は終わりじゃ。――クライン・ロイク。お主は過去最高の討伐記録に最速時間、そして能力を見せてくれた。王家で待っているぞ」


 そういって、白髪の老人は嬉しそうにいった。


 王家? どういうことだ?


「お前は合格したんだよ。それも宮廷魔法結界師の候補生として学ぶことになる。こんなのありえないぞ、凄いぞクライン」

「本当に凄いわ」

「……よくわからないけど、それってお金はいっぱいもらえる? みんな、幸せになれる?」


 肩書なんてどうでもよかった。

 俺は、家族の幸せが一番だ。


 リルドとメアリーは、ゆっくりと頷く。

 すると、ぐるぅとおもちが頭をこすりつけてきた。


「よかっ……た……」


 そういえば、フェアとの訓練が役に立った。

 帰ったらお礼を言わないとな……。


 そのまま俺は、安堵に包まれながらふたたび気を失った。

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