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第17話 最後の道

 進んだ先は、また分かれ道だった。

 ただどこの道を辿っても最後はクリアできるらしい。


 後ろの貴族の子供たちは、ルージュの煽り文句にカッときたらしく何人かは別の道に消えていった。

 といっても、まだ残っているが。


 気にしてもしょうがないので、五本のうちからどれを選ぶか話し合っていた。


「直感しかないか」

「そうだな。何も見えないもんな」


 道の先は煙幕がかかっているみたいに白くて見えない。

 別の子供が一旦進んだ道を戻ろうとしたが、見えない壁に阻まれていた。


 つまり、一度選んだら前にしか進めないということだ。


「さっきは驚いてたけど、私が選んでいい?」


 ミリシアが静かに前に出る。

 頭の上のウサギ、リリがぽんっと飛び降りた。


「リリちゃん、教えて」

「ピルルル!」


 するとリリが目を瞑った。

 何をしているのかはわからないが、魔力探知に長けていることは知っている。


 ――まさか。


「左から二番目が一番いいって。魔力が、弱いんだって」

「すげえ……そんなのわかるのかよ?」

「ふふふ、凄いでしょ」


 ――凄い。

 わかってはいたが、魔獣はそれぞれ特性を持つ。

 おもちは戦闘能力に長けているが、探索能力は視覚と聴覚だ。


 しかしリリは違う。

 なるほど、仲間は大事だぞといっていたリルドの言葉が、よくわかる。


「よし、急ごう」


 既に俺たちより前に進んでいる子供もいる。

 急いで走る。見えない壁は、またゼリーのようなぶよぶよとした感覚だった。


 次の道はまたひんやりとしていた。

 だが今回は比喩でなく、左右に湖がある。

 大きな道だが、なんだか不穏な感じだ。


 進んでいくと、左右から魚のような魔物が現れた。


「クライン!」

「大丈夫だ。――魔結界」


 魔結界で囲んで魔滅、魔結界からの魔滅。


 ルージュは魔滅で叩き落し、ミリシアは魔結界で囲んで、俺たちの攻撃を待った。


 おもちは空で俺たちを守ってくれている。

 正直、おもちがいなければもっと防御に気を割いていただろう。


 帰ったらおやつをいっぱいあげよう。


 何とかこの道もクリア、次は四本になっていた。

 気づけば後ろの子供たちがいなかった。


 おそらく、失敗したんだろう。


 またミリシアがリリを使って道を選んでくれた。

 最初よりは楽だったので、おそらく当たりだったのだろう。


 咲へ進もうとしたら、ルージュが制止した。


「ちょっと待ってくれ。次は俺が前だ」

「いや、俺が――」

「クラインは最初にデカい魔物を倒したし、ずっと前だった。ミリシアは道を決めてくれた。俺だって、なんかしたいんだ」


 ルージュは最後の言葉を強めた。

 俺はまた――頭をなでる。


「や、やめろってぇえ」

「ふふふ、じゃあ頼んだよルージュ」

「――任せろ」


 だが次に飛んだとき、驚いたこと道ではなく森が広がっていた。


 まるで本当の草原だ。

 匂いも感じられる。

 野生の鳴き声もする。

 ここが、あの門の中だとは思えなかった。


「俺から行く」


 話し合い通り、ルージュが先頭で進む。

 ただ道は開けていたので、迷うことなかった。

 進んでいくと左右からオオカミのような魔物が現れる。


 ルージュは一体を魔滅で倒す。

 確実性はないみたいだが、その分、連射もできるので使い勝手はかなりよさそうだ。


 俺も二体目を魔結界で囲んで、魔滅で倒す。

 そこでもミリシアの感知は役に立った。


「10メートル先、右から魔物」


 場所がわかるだけじゃなく、攻撃の瞬間もわかるらしい。


 リリ、すごいな。


「ぐるぅ」

「はは、おもちも凄いよ」


 だがそんな俺の気持ちに気づいたらしく、道を終えたとき、おもちが少しだけ悲し気に頭をこすりつけてきた。

 ごめんねと心の中で言いながら撫でる。


 最後の道は3本だ。


 しかしそこで、二人が声を上げる。


「別々の道をいかない?」

「俺も、それ考えてた」

「どういうこと? 3人でいけば安全だよ」


 だが二人は首を振る。


「私たち、クラインのおかげでここまできてるだけだもん。それは……良くない」

「ああ、ミリシアの言う通りだ」

「そんなことないよ。みんな強いよ」


 それでも二人は頑なだった。

 確かに魔物を一番多く倒しているが、役割が違う。


 ルージュは俺よりも遠隔で攻撃ができるし、ミリシアは唯一無二の索敵を持っている。


「俺たちもクリアしたあと、ちゃんと胸を張りたいんだよ」

「うん。私たちも、戦う為に来たから」


 その言葉でようやく気づく。

 二人も同じなんだ。


 俺と同じで幼少期から激痛に耐えてきた。

 親のありがたみを知っている。


 堂々とクリアした。


 俺は仲間を勘違いしていた。

 頼り頼られるだけじゃなく、信頼だけじゃなく、同じ立ち位置として考えなきゃダメだ。


「わかった。ルージュ、ミリシア、向こうで会おう」

「ああ、当たり前だ」

「またねクライン」


 そして俺たちは、最後の道をそれぞれ歩きはじめた。

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