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第16話 信頼できる仲間

「凄いな……クラインという子は一体どんな訓練を積んできたんだ?」

「ありえない。魔結界と魔滅の速度が尋常じゃないぞ」

「それもそうだが、魔獣、おもちと言ったか? 意思疎通レベルが……既に上門レベルだ」


 門の外では、大勢の貴族たちがおそれに似た困惑した表情を浮かべていた。

 その視線は、最後にメアリーとリルドに向けられる。


 メアリーは試練のモンスターに怯えていた。

 だが一方で、リルドは笑っていた。

 嬉しそうに、それでいて楽し気に。


 無邪気な子供のようだった。


「はっ、クライン。――さすがは、俺の息子だな」


  ◇


「ぐるぅ!」


 おもちが炎を吐いて、魔物の動きを止める。

 それだけで倒せることもあるが、そうでなかったモンスターは、俺が魔結界で囲み、魔滅で止めを刺す。

 まともに戦ったことはなかったが、どうやら俺は強いらしい。


 流れ作業とまではいわないが、面白いように倒すことができる。


 ――これが、俺の力。


 無力だった自分、歯がゆい身体、ただ捻じ伏せられることに慣れていた自分。


 そのすべてを覆しているような、何とも言えない高揚感。


 いや、違う。


 嬉しいんだ。


 自分が、強くなっていることに。


「よし、先へ進もう! ……あれ? ミリシア? ルージュ」


 後ろを振り返ると、なんだかすごく引いている二人がいた。


「強すぎるよクライン」

「ああ、ヤバすぎるぜお前。周りも見てみろよ」


 ん? と思い、周囲を見てみると、貴族たちがマジでドン引きしていた。

 え、なんかヤバいことした?


 ……そんなにやりすぎたのか?


「で、でも! 本気でやれって!」

「ぐるぅ」


 おもちは俺に頬をすりすり。

 うーん、戦うのって難しい。


「ちょっと驚いたけど、でも、凄いよ本当に。私と訓練してた時も思ったけど、更に強くなってない?」

「そうかな? フェアの特訓のおかげかも」

「にしてもやべえぜ。俺は魔結界使えないが、あれがどれほどの魔力を使ってるかはわかる」


 そのとき、後ろから魔物の声がした。空を飛んでいる鳥のようだ。

 ルージュが、人差し指を立てる。


「任せてくれ」


 その後、水平線に向けた。まるで、銃を撃つような――。


「――魔滅」


 次の瞬間、魔力の弾丸みたいなものが飛んでいく。

 それは魔物にぶち当たると、空の鳥が落ちていく。


「ふう」

「ルージュの魔滅って変わってるね」

「あぁ、まあちょっと違うらしいな」


 魔滅は基本的に魔結界の中に囲んだ相手を倒す。

 けれどもルージュは飛ばす・・・


 外すこともあるらしいが、その分数が打てるらしい。

 魔結界を使えない分、手数を増やすことを考えたとか。


 ミリシアは正確無比な魔結界を使えるし、いくら戦うことに俺が特化してるとはいえ、特別秀でているわけじゃない。

 ちゃんと自分の立ち位置をわかった上で、驕らないようにしよう。


「……何してるんだろ? あの子たち」

「クラインが進むのを待ってるのよ。――ちょっとズルいね」

「俺が言ってこようか?」


 後ろでは、子供たちが待っていた。

 正確には、俺が進むのを待っている。


 分かれ道で離れた人たちもいるが、同じ道を選んだ子供たちは、俺を先頭にしたがっている。


 とはいえ、おもちが強いので当たり前だろう。


「いや、いいよ。でも、父さんは言ってたよ。結局どこかではぐれるって」

「私も聞いた。気を付けないとね」

「何かあったら俺を一番に見捨ててくれ。お前らは、仲いいだろ」


 その言葉を聞いて、俺は気づけばルージュの頭をなでていた。

 よく考えたら子供だ。

 こんな小さな子供が、俺に気を使ってくれている。


 ――可愛い。


「な、なにすんだよぉクライン!?」

「はは、ルージュって意外にいい奴じゃん」

「な!? 俺はインバート家の――」

「だね。クライン、次は私が前に行くよ。――守られてばっかりは嫌だから」

「ああ」

「お、俺も前にいくって! 待てよ!」


 ああ、なんか、いいな。


 ――誰かと信頼し合えるって、凄くいい。 

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