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退魔天使は闇夜に踊る
東雲飛鶴
現代ファンタジー異能バトル
2024年07月23日
公開日
172,558文字
完結
魔物溢れる街で再会した、退魔少年兵と少女の過去を取り戻すBMG。

華麗にビルの谷間を舞い、異界獣と呼ばれる魔物を次々と屠る少年・多島勝利の姿を見た遙香は、夢中で彼を追って行く。
しかし深追いをした遙香は、異界獣と勝利の戦闘に巻き込まれ重傷を負う。
日に日に異界獣に侵食される街。勝利は必死に敵を屠っていくが、増える一方でどんどん疲弊していく。増え過ぎた異界獣を外部に漏らさぬため、街は遮断される。
絶対絶命の状況で勝利は皆を救うことが出来るのだろうか――。
シリーズ作品「退魔天使は聖夜に踊る ~復讐の乙女~」https://www.neopage.com/book/30144904320075000

終末前夜

「地獄ってこんなに美しいものなのでしょうか」


 有翼の女神をして、地獄と言わしめるそれは。

 闇夜を裂き、大地から吹き上がる、無数の虹の柱。

 極彩色の光を放ちながら螺旋を描き屹立するその様は。

 後に『虹の螺旋階段の惨劇』と呼ばるる禍々しき光の奔流。


 1900年初頭の帝都・東京をぐるりと囲むように立ち上る、幾本もの虹の柱は、滅亡の前触れだった。直径数十キロメートルにも及ぶその円の中から、今にも次元の壁を突き破り巨大な魔物が出現せんとしていた。

「私があの異界人に騙されたりしなければ……。ごめんなさい、ぼうや。産んであげられなくて」

「猊下、儀式を開始いたします」

 女神は白装束の男たちに向かって小さく頷いた。

 それは、女神の体を千々に分割し、虹の柱の吹き出す門を塞ぐ秘術だった。

「ぼうや、この身が形を成すことがあれば、その時こそ会いましょう……」

 彼女は愛おしそうに腹を撫でると、虹の柱の描く円の中心に設えられた祭壇に身を横たえた。

 儀式を執り行う男たちが唱える。

「我が蒼き女神の血に贖いの炎を――」


 女神の体は細切れになるや青い光球と化して、帝都の周囲へと飛び散った。

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