4☆悲しみをこえて
その後、何年経っても少女は一人で織物を織って暮らしていました。
一度だけ、真っ白で上質な織物を織りましたが、それは決して売ることはせず、大事に大切にとっておきました。
「すいません」
ある時、亡くなった青年によく似た姿の別の青年が訪ねて来ました。面影もそっくりだったし、服装も白いシルクハットに白い燕尾服でした。
「兄が好きだった人と会ってみたくてここへ来ました」
「あの人の弟さんなのね?」
少女はその青年といるととても懐かしいようなそんな感じがしました。
少女は今では25歳くらいになっていました。
とてもきれいで質素な生活が彼女を美しい大人の女性にしていました。それまで誰とも結婚せず、一人でつつましく暮らしていました。
青年の弟は少女を一目見て好きになってしまいました。
「僕と結婚してくれませんか?」
いつか誰かがいった言葉をその青年は言いました。
思わず少女はその場に泣き崩れてしばらく動けませんでした。
「だけど、白い鳥の王国では、白い姿の者しか暮らせないのでしょう?」
その言葉に、青年はしょんぼりしましたが、どうしてもあきらめきれず、何かできないか考えました。