「結婚してください! 今すぐ!」
高校の元同級生女子が、大学の卒業式から矢絣に袴姿そのままで実家の寿司店に直行して来た。そしてまさかのプロポーズ。全く身に覚えがない。
「いやいや、俺ら付き合うどころか高校でも全く口きいたことなかったよねえ?」
両親を睨み付けるが、彼等も自らの関与を態度で否定していた。
「結婚してくれないと困るんです!」
「困るって、罰ゲームかよ、帰れ」
「頼むから!」
「もう四年も会ってない女が、いきなり結婚しろとか、ぶっちゃけホラーだろ」
「おねがい! もう時間がないの! 結婚するって言って!」
「だから何でだよ!!」
「貴方とこの星を護るためには、これしか方法が」
ふと頭上から『地鳴り』のような重低音&振動波が降ってきた。
「まずい! もう嗅ぎつけられた!」
「どーゆーことなんだよ、だから!」
時間を追う毎に地鳴りはどんどん強くなっていく。
「逃げ場はないわ。さあ、私と結婚すると言って。さもないと、全員死ぬ」
「だから何で!!」
「貴方があいつらの子供を、寿司ネタにしてしまったからよ!」
――――え。
「時間がないって言ってるでしょ! 早くこのデバイスに向かって、結婚するって言いなさい!」
もうわけがわからない。
だが、テメエの不始末らしいことは、うっすら分かった。
俺は叫んだ。
「俺は、お前と結婚する!!」
端末は電子音声でしゃべりはじめた。
『貴方と第三王女との婚姻を承認しました。ただいまよりこの星は、ピスケシア王家の直轄となり、星間安全条約の保護下に入りました』
「……はい?」
「よっしゃああああ!! 間に合った!!」
彼女はガラっと威勢良く店の戸を開けると、頭上を黒く覆った巨大な何かに向かって腕を突き上げた。
「聞こえるか! 不良魚介類ども! この星は我々の管轄下となった! 速やかに退去しなければ、貴様の母星を破壊するぞ!」
彼女の怒号が空に響き渡り、次の瞬間、黒い影と地鳴りがすっと消えた。
俺、これからどうなっちゃうの?