それからどれくらい経っただろうか……?
木陰で、少しだけ休みながらも。
私にしてくれるのと同様にいつものように癒やしの魔法を使って、ベラさんの体調を診てくれていたアルへと視線を向けたあとで。
しゃがみ込んで休憩をしていたベラさんの口から、ごぽりと血が出るのを見ながら、私はその背中をゆっくりと
逆を言えば、今の私がベラさんにしてあげられることはそれくらいの事しか無くて、本当に申し訳ない気持ちが湧いてくる。
「……っ、はぁ……、少年、君は一体……?」
――それでも、少しは楽になってくれただろうか……?
アルの方を見ながらも、驚いたような表情を浮かべるベラさんに、けれどアルの顔色はいつになく険しいままで。
「少し、楽にはなったかもしれぬが、僕のこれは、単なる“応急処置”でしか無い。
出来るなら、早く自宅に帰って休んだ方がいいだろう」
と、声を出してくれたことで、私達は再びベラさんの歩調に合わせながらも。
一先ず、彼女が住んでいるお家に一緒に引き返すことにした。
私達がベラさんと一緒に森の中にある彼女の自宅まで戻ると。
私達と別れて山菜や薬草などが自生している場所に行っていたお兄さまとヒューゴが、私達よりも先に帰ってきていた。
「……ベラっ!」
ヒューゴが、ベラさんのことをその目に入れた瞬間、思わずといったように心配した雰囲気を漂わせながら此方に向かって駆け寄ってくる。
まるで、感動の再会とでも呼べるかのような、ヒューゴのその対応に。
けれど、ベラさんが少しだけ怒ったような顔をしながら、遠慮無くヒューゴのお腹を思いっきりグーで殴ったのが見えた。
「……っ、いてっ! オイオイ、狂暴すぎるだろっ!
いきなり、何するんだよっ! 会って早々、殴ってくるなんて正気かっ!」
「会って早々、殴ってくるな、じゃないわよっ……!
アンタ、こんな幼子にアタシの事情を明け透けに説明して……っ、挙げ句、この子達にアタシの事を捜させるだなんて、一体、何を考えてんのよ……うっ……!」
突然のことに、出会ってから、ほんの数分足らずで殴られてしまったヒューゴが。
困惑したように、ベラさんに向かって一体どうしたのかと声を出してくれたあと。
30歳代で大人の雰囲気があるヒューゴよりもどう考えてもベラさんの方が、20代後半という雰囲気で。
年下っぽいのにもかかわらず……。
眉を寄せて、まるで悪いことをした子供を叱るような雰囲気でベラさんがヒューゴに対してそう言ってくれた後で。
ぼたぼた、と……。
目の前で堪えきれずに血が溢れ落ちたことに、私は慌ててベラさんの身体を心配しながら……。
「……っ、ベラさん……っ!」
と、彼女の名前を呼んで、アルと視線を交わしあい。
出来るだけ、早くベッドで休んで貰った方がいいと、判断する。
「……っ、オイ、ベラ、憎まれ口を叩いてないで、調子が悪いんなら早く言えってっ!
どうせ、また御貴族様のところにでも、行ってたんだろう……!?」
いつも私への対応をしてくれていることで。
お兄さま以外は、みんな、私が能力を使用した時の反動への対応で慣れてくれているし。
私自身も、自分が普段、能力を使用した時にどういう状況になるのか、理解している分。
その対応をするのも、問題はないけれど……。
ベラさんの体調に即座に反応して、手慣れた様子でベラさんの身体に腕を回して支えているヒューゴが、あまりにも手慣れていて、私は驚いてしまった。
【それだけ、ベラさんが普段から能力を使用している頻度が高い、ということなのだろう……】
内心で、そう思いながらも。
ヒューゴが彼女を引き連れて、家の扉を開け。
寝室にあるベッドへとその身体を運んでくれるのが確認出来て、私は一先ず安堵する。
そうして、ヒューゴの介助の元、ゆっくりと、ベッドに腰を降ろしたベラさんは、ヒューゴに言われた言葉に少しだけ不満そうな表情を浮かべながら。
「えぇ、そうよ」
という、どこか鋭いとも取れるような言葉を返していて。
その瞬間、ちょっとだけ溝があるかのようにピリッとした
「お前、また、貴族に言われて、自分の能力を使ったのかっ……!」
そうして、きっと、心配からなのだろう……。
怒るような表情を浮かべているヒューゴの気持ちは、傍から見て私にも理解出来るものだったけれど。
それで、ベラさんが心配してくれているヒューゴの言葉を。
まるで煩わしいものだというかのような態度になっている理由が、よく分からなくて首を傾げれば……。
「アンタは、心配しすぎっ。
前にも言ったけど、今のアタシを見てよ。
早くに両親を亡くしたアタシが、こんな森の奥に無償で家も建てて貰って、一般的な村人なんかよりも、こうして随分と、裕福な暮らしが出来ている。
魔女の能力が発現した時、誰がアタシのことを助けてくれたと思ってるのっ……!?
アンタは、アタシが能力を発現した時には、ソマリアに居ていなかったから分からないでしょうけど。
殆どの村人は、アタシのこと、みんな見て見ぬフリよ。
そりゃぁ、ここ何年も人として扱われることもなくて、大変な思いもしてきたけど、以前とは違って、アタシは好んで自分の能力を使ってるって、何度言えば分かる訳……?」
という言葉がベラさんの口から出た事に、私は思わず『どういうことなんだろう……?』と、頭の中で考えてしまう。
事前に、ヒューゴから聞いていた話の感じだと。
どこかの貴族に自身の待遇や生活していく為の基盤を整えて貰うかわりに……。
ベラさんが無理やり契約を交わされていたような、雰囲気だと思っていたけれど。
【ベラさんの、この口調からして。
貴族の為に能力を使用しているのは、決して無理強いされた訳ではなく“強制的な物ではない”ということなんだろうか……?】
――それどころか、家を建てて貰ったり、契約を交わしたという貴族にはどこか恩義のようなものも感じてる……?
戸惑いながらも、2人の遣り取りをどこかで止めた方が良いんじゃないかと。
私がハラハラとした気持ちで、声をかけようか悩んでいたら。
私と視線が合った、ベラさんが少しだけ気まずそうな表情を浮かべながらも。
「あぁ、心配しないで。……コイツとこの話で喧嘩をするのは、いつものことだから。
それと、折角来てくれたのに、何のお構いも出来なくて、本当にごめんね……。
少し経ったら、楽にはなると思うからさ……っ!」
と、微笑んでくれる。
その言葉に、私はふるりと首を横に振り……。
「いえ、私達の方こそ、大変な時にお邪魔して申し訳ありません。
もしかしたら、大人数で押しかけてしまったことで、ゆっくりとは休めないかもしれませんが、それでもどうか、無理はしないで下さい」
と、真剣な表情を浮かべながら、声をあげた。
未だ、ベラさんの顔色は青白いままで。
よくよく見れば、その手が力を失っているように少しだけ震えているのが見える。
さっきまでの『決して大袈裟ではない』や『僕のこれは、単なる応急処置でしかない』という、アルの言葉を
ベラさんが今までにどれだけ能力を使用してきたのかは分からないけれど。
簡単には治すことが出来ない程に、本当に体調が重い状況なのだろう……。
気丈に立って歩いていたり、私達に気を遣ってくれていたり、ヒューゴに対して怒ったり。
一体、どこからそんなパワーが湧いてくるのか、不思議なくらい……。
その身体は能力によって酷使され、ぼろぼろなんじゃないか、という嫌な予感と、懸念がどうしても頭の中を過ってしまう。
私の言葉に『ありがとう』と声を出して、口角を上げて笑みを溢してくれるベラさんを見ながら……。
「あの、私達にも何か出来ることはありませんか……?」
と、問いかければ
「そんなこと、あなたたちは、気にしなくてもいいのよ。お客様なんだから」
という、快活な笑顔が返ってくる。
ベラさんのその対応は、儚げというよりは、やっぱりどこか生気に満ちあふれていて。
こんな状況なのにも関わらず、凄いなぁ、と感心してしまうばかりだ。
そうして、アルがベラさんの方を向いて、癒やしの魔法を使ってくれている間。
ベラさんと言い合いになってしまって。
気まずそうな表情を浮かべたままのヒューゴが、ぶっきらぼうに『ベラ、台所、勝手に借りるからな』と声を出したことで。
――私も、ベラさんが少しでも楽になれるよう。
黄金の薔薇で作った薬を飲ませる為に、カップに水を入れたり、準備をしてくれようと動いてくれているヒューゴに付いて出来る限りのことをした方が良いだろうと……。
家の中にあった、汚れていなさそうなタオルを拝借してキッチンへと向かう。
そうして、深めの容器に、お水を入れながら……。
「あの、ヒューゴ……。ベラさんの事なんですけど」
ほんの少し、聞いても良い物なのか悩んだあとで、険しい表情のまま、どこか怒っているようにも見えるヒューゴに声をかければ。
「えぇ、アイツは、ああ言ってますが。
俺には能力の使用でその命を削ることを黙認している貴族が、良い奴とは到底思えねぇんです……っ!
結局、ベラの能力頼みで、そこに目を瞑りながら、その報酬としてアイツの生活を多少なりとも豊かにしているような物ですから」
と……。
ヒューゴから悔しそうに言葉が返ってきた。
確かに、私にもヒューゴのその気持ちは理解することが出来る。
【ベラさんの能力は、触れた物を凍らせる能力だけど……】
――彼女と契約している貴族は、その力を一体、何に使っているのだろう……?
「ベラさんは、貴族と契約して長いんですか……?」
お水を容器に入れ終わってから、そこにタオルをじゃぶじゃぶと
目の前で、黄金の薔薇で作った薬を……。
アルが事前に教えてくれた、1回につき、どれくらい飲ませばいいのかという量を目分量で量っているヒューゴに向かって問いかければ。
「……えぇ。ベラが能力を発症したのは丁度、
元々早くに両親を亡くしてた所為で、1人で暮らしてたんだが……。
村人達からは受け入れて貰えなくなって、今日、皇女様も会ったおばさんとか、少数の人間が手助けはしていたそうなんですが……。
結局、追い出されるような形になっちまったらしくて」
という言葉が返ってきた。
「元々、アイツの髪が赤い所為で、それを受け入れられない村人も大勢いたんです。
俺はベラの事をそもそも気にしてなかったし、ガキの頃から、大人達でも手がつけられないくらいやんちゃだったんで。
昔はベラに向かって、口さがない事を言う奴には片っ端から、手を出したり、大の大人がみっともねぇことすんなっ、って言って助けてきたんだが。
俺がいなくなった後は、アーサーが代わりにアイツの手助けを……」
そうして、苦笑しながらも、遠い過去を思い出すようにヒューゴからそう言われて。
私に話す為に、言葉を選んで、かなりマイルドにしてくれているのだろうけど。
そこから、どうしても滲み出るような苦労や大変さについては読み取れてしまう。
私自身、自分が周りから蔑まれて忌み子として育ってきたから……。
世の中には、そういう人達の方が多いということは、身に沁みて理解している。
それでも、ベラさんの今まで置かれてきた境遇を思えば。
アーサーや、ヒューゴ、そして今日会ったおば様のように、自分のことを理解して大切に想ってくれている人がいるのだということは、ベラさんにとっては心の支になっていただろう。
――私がセオドアや、アル、ローラ、お兄さまに、そう思うのと同じように
それでも、変わっていってしまう生活に……。
気付けば、いつも自分の味方として傍にいてくれた人達がいなくなってしまうということは避けられなかったんだろうな、というのは話を聞いて私にも分かった。
ヒューゴは、ブランシュ村に冒険者として戻ってくるまではソマリアに。
アーサーは、騎士になって、ブランシュ村を離れるということに。
【決して多くを望まなくてもいい……】
ただ、一般の人と同じ生活がしたいというだけの、
改めて、魔女が普通に生活する為には、本当に大変だということが、こうして、誰かから話を聞く度に浮き彫りになっていくばかりだ……。
「それで一体、どこで話を聞きつけてきたのかは、分からねぇが。
ベラは、村から追われて暫く経ったあと、どっかの偉い貴族に目をつけられたらしいんです。
“魔女”が、偉い人間にその能力を買われて囲いこまれるってのは、よくある話らしくて。
ブランシュ村の近くに、家を建てて貰って生活を保障して貰う代わりに、専属契約を。
おばさんに聞いたら、ベラは初め、その貴族とは折り合いが悪かったんだとか。
今とは比べものにならないくらい、生気がなくて、まるで死んだような目をしていたらしいんです。……それが8年ほど前の話ですかねぇ」
「……8年」
ヒューゴの話を聞いて、単純に
少なくとも8年も前から。
ベラさんは貴族との契約の元、その頻度がどうであれ、自身の能力を使い続けてしまっていることになる。
「それが、何年前の話だったか……。
俺がこの村に冒険者として戻って来たのが2年ほど前なんですが、ベラは3年くらい前から嫌々能力を使っているって感じではなくて、また、昔みたいに生き生きしたような活発さを取り戻すようになってて……。
その辺り、どういった心境の変化がアイツに起こったのかは俺には分かりません。
けど、結局は、どんなに優遇されたって、奴隷契約しているようなものに代わりはない……。」
そうして、ヒューゴから語られるベラさんの事情を全て聞いた後で、私は目を瞬かせてから、思考を巡らせる。
最初は、嫌々契約しているような雰囲気だったベラさんが。
今では、契約を交わした貴族に恩義のような物を感じる程にまでなっている。
その、
だから、これ以上の事を考えようと思っても、そこから先は手詰まりだった。
それと同時に、ふと思い出して……。
「あの……、ベラさんが“妖精ちゃん”って呼んでいる人に、ヒューゴは誰か心当たりはありますか?」
と、私はヒューゴに問いかける。
私の言葉を聞いて、ヒューゴが怪訝な表情を浮かべながら。
「妖精ちゃん……? ベラが、皇女様にそんなことを話したんですかい?
いやっ、初めて聞きましたし、俺には、そんな人物は、皆目見当もつきませんが……」
と、戸惑ったように声を出してくれる。
ヒューゴが知らないっていうことは。
ベラさんの言う妖精ちゃんに、当てはまる人は……。
【少なくともブランシュ村の人ではない、っていうことになるんじゃないかな……?】
だから、何だと言われてしまったら、結局、ベラさんに関して更に分からないような謎が増えてしまっただけで。
――ベラさんが魔女の能力を使って命を削っていることとは、特に関係のないことかもしれないけれど……。
色々と話を聞いて、その情報を整理するにはまだまだ、時間がかかりそうだった。
ヒューゴですら、その全体を掴めていないのだとしたら。
きっと、本人に聞いても、契約内容が秘密だと私達にも教えて貰えるようなことはないだろう。
それから、私は、水気を切って。
流し台にぼたぼたと絞り出したタオルと深めの容器を持って、ベラさんのいる寝室へと戻る。
いつも、ローラが私にしてくれるようなことを、見よう見まねで四苦八苦しながらも。
看病のために、ベッドで横になったベラさんの、その額にそっと、冷たいタオルを置くと……。
此方を見ながら、ベラさんが感謝をするように『気遣ってくれて、ありがとう』と声に出して、にこりと微笑んでくれた。
お兄さまとセオドアもアルの治療の邪魔になってはいけないと、病人であるベラさんの為に。
それぞれに、代えのタオルなども含めて、手分けして探して持ってきてくれて。
全員、また、この部屋に揃ったところで。
「ベラ、皇太子様たちにも協力して貰って、鉱山の洞窟内から黄金の薔薇を見つけてきた。
根本的な治療にはならないが、血を吐く頻度を抑えたり、楽にしたりする効果があるから、コイツを飲んでくれ」
と、ヒューゴがベラさんに声を出してくれると。
「……は、っ……?」
ぽかん、と……。
ベラさんが口を開けて、驚いたような表情を浮かべながら。
ヒューゴと、私達を交互に見て、目を白黒させ……。
「は、っ……はぁぁぁっ!? こ、皇太子様……っ、!? えっ、金髪っ……!?
って、まさかっ……っ! その赤色の髪、こ、皇女様だったり……っ!?
あわわわわっ! 嘘でしょっ! やだ、アタシったらっ、知らなかったとはいえ、とんだ、ご無礼をっ!!
ヒューゴ、どうしてそんな肝心なこと、もっと、早く言ってくれなかったのよっ!?」
と、もの凄く動揺したように、ガバッと頭を下げられて、ひたすら謝られてしまった。
「オイオイ……っ! 動揺しすぎて、お前、皇太子様のこと、金髪って呼んでんぞっ……!」
ヒューゴにそう言われて、顔面蒼白になりながら此方を見てくるベラさんに。
私はみんなと一瞬だけ視線を交差させたあとで、にこっと笑みを溢した。
「あの、お気になさらないで下さい。……事前に名乗っていなかった此方にも非があることですので。
お兄さまも、私も言葉遣いなどは特に気にしていませんし、さっきと同様に、普通にお話して貰えると嬉しいです」
そうして、安心して貰えるよう、そう声に出せば……。
『いやいや……、そんなの、どう考えても無理ですってば……っ!』と、ベラさんから狼狽したような表情で、そう言葉が返ってきた。
「うわーっ、そんな偉い人達がくるなんて欠片も思ってなかったからっ!
ほ、本当に何も出来ずで、申し訳ありませんっ。
こんな、掃除も碌に出来ていないような汚い家に皇族をあげるだなんて……」
そうして、ブツブツと、そんな人達が来るって分かっていたら……。
事前にもっと、綺麗にしておいたのに。
と、後悔したようにそう言い募られて、私は『いえ、本当にお構いなく』と声をあげる。
私達が家に来たという衝撃の所為か。
黄金の薔薇で薬を作ったという、割と、重要なことを言っていたヒューゴの言葉があっさりとスルーされてしまったことに。
ヒューゴに目配せして、もう一度、ベラさんに薬を飲むよう促して貰えば。
驚いたような表情を浮かべながらも。
「……これを、アタシに……?」
と、ベラさんが私達を見て、問いかけてきたので、私はその言葉に同意するようにこくりと頷いた。
「はい、ヒューゴが一生懸命、ベラさんの為に黄金の薔薇を採取して、薬を作ってくれたんです」
そうして、しっかりと声に出してそう伝えれば。
ベラさんは、ヒューゴの方をちらっと見た後で。
「いやいや、どう考えても、手先が不器用なコイツが、まともにちゃんとした薬なんて作れる訳ないんだから。
きっと、皆さんが協力してくれた賜物なんでしょう……?」
と、苦笑したようにそう言われてしまった。
だけど、その言葉には、ベラさんの嬉しいような気持ちが隠しきれずに滲み出ていて。
照れ隠しの気持ちもあって、そう言っているのかな、と。
私はヒューゴとベラさんの気が置けないような関係性に、思わずほっこりしてしまった。
そうして……。
ベラさんが、蜂蜜を入れたシロップのような黄金の薔薇から作ってくれた薬を飲んでくれている間。
「……その、それで……。
アルフレッド様、ベラの体調は診た感じ、どうなんでしょうか……?」
と言う、ヒューゴの言葉で一気に現実に引き戻された私は……。
少しだけ、言った方がいいのかどうか、迷ったような素振りを見せながらも。
この場で重々しく口を開き……。
「うむ……。
残念だが、その魂は、殆ど
恐らく、本人は自覚しているだろうが……、能力の反動で身体に、がたが来すぎてしまっている。
精神力で何とかカバーして耐えているのだろうが。
本来なら、これだけ元気に喋れてパワフルに振る舞っていることが不思議なくらい、既に危険なものだ。
寝たきりになる状態の一歩手前といったら、お前達にも分かりやすいか?」
と……。
アルが、そう言ったことで、私は思わず息を呑んでしまった……。