それから、順調に黄金の薔薇からの薬作りは進み。
黄金の薔薇2本分から、小瓶に移した薬が無事に4本分出来て。
ヒューゴもホッと安堵した様子だった。
私達が薬を作り終えたタイミングで、丁度、この家の家主だったおば様がお
聞けば、近くの畑で農業を営んでいるらしく、ヒューゴが薬を作る間は邪魔になってもいけないからと、作物を育てるための日課として、お水を与えに行っていたみたいだった。
「この辺は、まだ大丈夫ですが。
最近、お水に問題があるような事が近くの村でも起き始めているので、心配しているんです」
目尻を下げて朗らかな笑みを溢しながらも、少しだけ困ったようにそう言ってくる彼女に。
そう言えば、私のデビュタントで環境問題の官僚であるブライスさんが、そういう話をしていたなぁ、と思い出した私は。
「……あの、きっと、大丈夫ですよ。
今、
と、安心して貰えるように、にこっと笑みを溢しながら声を出した。
私の言葉を聞いて
「あら、そうだったんですねっ! それなら良かったわぁ……っ!
詳しい情報などは、私達、村人には入ってこないので、不安が煽られてしまうようなことばかりで……」
と、言葉を出しながら、そう言ってくる彼女に私も同意するようにこくりと頷く。
皇宮でも立場が上の官僚が対処するために奮闘しているといっても、実際には庶民の人達にそう言ったことが伝わるまでには、かなりのタイムロスが発生してしまうということは私にも分かる。
ましてや、地方のこういった村に住んでいる人は、前にヒューゴも言っていたけれど。
王都にいる人達なら直ぐに知れ渡るような情報でも、大分遅れて入ってくるそうだし……。
どうしても距離がある以上、その辺りは、凄く難しい問題だなぁ、と私も思っている。
今の自分に出来ることは、それらの問題が、これ以上拡大するようなことにはならず、もうすぐ解決するだろう、と。
私にも分かる範囲で、こうやって、教えてあげるくらいしか出来ないけれど。
それでも『ありがとうございます』と、本当に嬉しそうに感謝されたことに、思わず微笑み返すと。
「そうだわ……っ! 良かったら、皆さんでクッキーを食べて行かれませんか……?
私の手作りなんですけど」
と、誘われて……。
薬を作り終わったら、直ぐにお兄さまやセオドアと合流するつもりでいた私とアルは顔を見合わせたあとで、ヒューゴの
「そりゃぁ、いい。
お二人とも、どうか、遠慮しないでください。
ちょっと形は悪いが、おばさんの作るクッキーは絶品ですぜっ!」
という言葉に、ほんの少し迷いながらも、厚意で出して貰えるのに食べないのも失礼かな、と。
有り難く、甘えさせて貰うことにした。
「あなたは、少しは遠慮しなさい……!」
そうして、ヒューゴに向かって眉を寄せて。
本気で怒ったような感じではなく、冗談交じりになりつつも、ぴしゃりと、ヒューゴに向かって声を出してくる彼女の様子を見ながら。
2人のその距離感に……。
「……お二人は、随分、親しい間柄なんですね」
と、私は、気になっていたことを問いかける。
「えぇ。……ブランシュ村なんて、本当に、こんなにも
私の言葉に、口元を緩めて、にこやかに笑みを浮かべながら。
お皿の上にクッキーを並べて、居間にある机の上に置いてくれたあと。
私達を椅子に座るよう、促してくれてから……。
「そこまで大きな村ではありませんし、長く村に住んでいると、知り合いしかいなくなりますから。
こういった村で、小さい時からその成長を見ながら育った子供達に対しては、特にあまり垣根が無く、みんな私の家族みたいな物なんです」
と、にこやかな対応でそう言われて。
私自身、どちらかというと、王都にいるとどこか殺伐としているというか。
貴族同士で交流するようなことは勿論あるけれど、家柄などに左右されることも大きく。
近くに住んでいる人との交流や、横の繋がりなどはあまり無くて……。
どうしても、人との関係性は希薄になりがちだけど。
こういった村の中だと、確かに周囲の人達はみんな顔見知りな分……。
横の繋がりも増えるものなのかな、と言うことに、なんとなくだけど、彼女のその説明で納得してしまった。
私が『……そうなんですね』と、声を出して同意すれば。
ことり、とカップに入れたお水を、人数分、出してくれながら。
「アーサーのこと、地方で騎士になるだけでも凄いのに、この村から王都で騎士になるような人間が出たって。
……村人達はみんな、自分のことのように喜んで、本当に英雄みたいに思っていたんですよ。
昔は、この辺りでアーサーも含めた子供たちが、わいわい、楽しそうにはしゃいで駆け回っていましてね。
ベラも、ヒューゴも仲が良かったのに、みんな、いつしか離ればなれになってしまって、こんなことに……」
と……。
ほんの少しだけ遠い過去の記憶を懐かしむような声を出してきた彼女に。
それが、あまり良いニュアンスで言われたものではないような感じを受けて、私は首を傾げた。
【アーサーが行方不明になっているから、心配して、こんなにも
それに、アーサーと、ヒューゴのことは、私にも分かるけど……。
ベラっていうのは、一体誰なんだろう……?】
内心で、そう思いながら……。
「あの、ベラっていうのは、どなたですか……?」
と、聞いてもいいものなのかどうか、ちょっとだけ迷いながらも問いかければ。
それまで楽しげに会話に相づちを打っていたヒューゴの顔色が、一瞬だけ、さっと曇ったような気がして、私はびっくりしてしまう。
「おばさん、この村じゃ、ベラの話は禁句の筈でしょう……?」
そうして、
だけど、少しだけ鋭いような声色になったヒューゴがそう言うと。
もの悲しいような雰囲気を漂わせながら『……えぇ、そうだったわね』と、少しだけ唇を噛んだ後で。
「ごめんなさい、皇女様。今のお話は、どうか忘れて下さい」
と、困ったように微笑まれてしまった……。
「……あ、はい。
そのっ……。私の方こそ、ごめんなさい。言いづらい様な事を聞いてしまって」
思わず、二人のその態度に。
聞いてはいけない内容だったのかな、と内心で思いながら謝罪すれば。
「いえ、皇女様は何も悪くないんです。……私がその名前を出したから。
ここの家では、別にその名前を出すこと自体、悪いことじゃないんですけど、村の中で、その名前は決して出さないようにお願いします」
と、彼女に逆に謝られてしまった上で、懇願するようにそう言われて……。
私はその言葉に、こくりと同意するように頷き、二人の顔色を窺ったあとで。
「アーサーとヒューゴは、小さい時からの幼なじみなんですよね?」
と、明るく声を出すことで、話題を変えた。
今、セオドアとお兄さまが村の人達にアーサーの手がかりについてなんかも聞いてくれているけれど。
もしかしたら、ヒューゴとも親しい様子で、アーサーのことを小さい頃から見て来た彼女も詳しいことを知っているかもしれないし。
何らかの手がかりになるような情報が得られる可能性だってある。
机の上に用意してくれた手作りだというクッキーを一枚、ご馳走になりながら。
私は彼女に向かって、普段のアーサーがどんな感じだったのかなど、掘り下げて聞くことにした。
「えぇ。皇女様たちも、昔、ヒューゴの坊ちゃんがこの村に住んでいた事はご存知なんですね?
アーサーとは本当に、性格は正反対でしたけど……。
不思議と馬が合ったのか、2人とも、少しだけ歳の離れた兄弟みたいな感じで育っていたんですよ」
私の問いかけに、嬉しそうな表情を浮かべながら『……ねぇ、そうだったわよね?』と、彼女はヒューゴの方へと視線を向ける。
「あぁ、まぁ、確かに、そうなんですよね……。
もう随分と昔の話ですが、俺が兄貴分みたいな感じで、アーサーが弟分みたいなものでしたかねっ。
結構、悪ガキでやんちゃだった俺を、いつも正義感の強かったアーサーが窘めてくるような……」
そうして、話を振られたヒューゴがどこか照れくさそうに、苦笑しながらも。
アーサーとの過去を思い出しながらなのか、柔らかな表情になって私とアルの方へと視線を向けてくれる。
「ふむ、アーサーとやらは、昔から騎士を目指していたのか?」
それから、私達の遣り取りを聞いていたアルが。
おば様の作ってくれたクッキーを口の中に一枚入れながら、ヒューゴに向かって問いかけてくれると。
「えぇ、まぁ。
アイツは、割と小さい頃から、地方の憲兵や騎士みたいな職業には憧れを持ってましたし。
木の棒なんかで素振りの練習をしたりとか。……そういうのは、やってましたかねぇ」
と、ヒューゴから質問に対する答えが返ってくる。
――確かに
アーサーが、幼い頃から正義感が強くて、やんちゃだったヒューゴを窘めたりしていたのなら……。
そういった職業に強い憧れのような物を抱いていても可笑しくないなぁ、と私は、ヒューゴの言葉を聞きながら頭の中で、アーサーの情報をしっかりと整理する。
アーサーの家で見つけた、アーサーが母親に送ったと思われるような手紙を見ても、彼が母親を大事にする真面目な人柄であることは窺えたし……。
村人達が、アーサーのことを、英雄のようだと思っていたという話も、きっと本当にそうだったのだろう。
この村の人達からしても、王都で騎士になったアーサーという存在は誇りだったんだと思う。
「あのっ、アーサーが行きそうな場所などに、心当たりはありませんか……?」
お兄さまやセオドアも聞いてくれているだろうけど。
改めて、目の前に座って私達と話してくれている彼女にも問いかければ。
「えぇ、そうですね。
病気で教会預かりになっている母親のところにいないんだとしたら、頼れる所は母方の親戚のところかしらねぇ……」
と、言う言葉が返ってくる。
確か、昨日、ヒューゴも似たようなことを言っていたと思うんだけど……。
アーサーが本当に頼れる存在は、母親以外なら、母方の親戚しかいないんだろうか?
「昨日、ヒューゴからも聞きましたが、アーサーが頼れるのは母方の人達しかいないんでしょうか……?
あのっ、聞いてもいいのか、分からないんですけど……。アーサーの、お父様の方は……?」
アーサーの母親のことは、話によく出てくるけれど。
ここまで、アーサーの父親については全く話にも出てこないなぁ、と思いながら。
そのことを尋ねれば。
「えぇ、アーサーの父親はアーサーが幼い頃に亡くなっています。
父方の親戚とは、殆ど関わりもなく過ごしていた筈ですし。
アーサーの母親からも、今までにも関係があるだとか……。
そういった事情を聞くことは一切ありませんでしたから、仮に、父方の親戚がどこかにいるとしても、アーサーはきっと頼ったりも出来ないでしょう」
という言葉が返ってきた。
お兄さまやセオドアがアーサーについて、村人達から情報を持って帰ってきてくれたものとも照らし合わせる必要があるけれど。
そうなると、やっぱり、アーサーがもしもまだ、生きているのだとしたら。
母方の親戚が住んでいるところに、身を寄せているという可能性が一番高いんじゃないだろうか。
頭の中で、整理するように、あれこれと、考えながら、その後も、色々と質問を投げかけて聞いてはみたものの。
アーサーのことで、分かった情報と言えば……。
アーサーが、大人になっても母方の親戚とは、親しい付き合いをしていたということ。
アーサーの母親の病気は、日に日に悪くなる一方で、恐らくもう完治するということは厳しい状態になってしまっていること。
アーサーが村人から、英雄として扱われ、慕われるような真面目な好青年だったという……。
その人柄を感じられるようなエピソードが増えたことくらいで。
既に私達が知り得ているような物ばかりで。
ヒューゴとおば様の2人からの返答で聞いたアーサーの情報には、それ以上の成果は得られなかった。
アルが、出して貰ったクッキーを、私の隣で、満足そうに全部平らげているのを確認しながら。
もう、殆ど思いつく限りの質問をして、アーサーの情報を聞いてしまったことで。
とうとう、これ以上、何も聞くことが無くなった私は……。
「……あのっ、ヒューゴ。
さっき、魔女の話になったと思うんですけど、ヒューゴは魔女の知り合いがいるんですか……?」
と、話題を変えて、ヒューゴに問いかけてみた。
刹那……。
本当に、一瞬だけ、さっきと一緒で『ベラさん』が2人の会話に出た時と同じように。
ピリッと、したような緊張感がその場を支配して、私は思わずびっくりしてしまう。
【もしかして、この言葉も聞いてはいけない事だったのだろうか……?】
突然のその雰囲気に……。
内心で、どうすれば良いのかと、1人でおろおろしていると。
「あっ、……あぁ、皇女様……えっと、……そのぉ……っ……」
と、どこかヒューゴが困ったような表情を浮かべながら、自分の頬をぽりっと人差し指で一度掻いたあと……。
「ヒューゴの坊ちゃん、皇女様に、ベラの事、説明していたのっ……!?」
と、驚いたような表情のおば様から問いかけられたことで……。
図らずも、私の中で、ベラという人こそが“魔女”なのではないか、ということが頭の中で繋がってしまった。
だとしたら、村の中で
段々とブランシュ村にいる人達と、ベラの現在の関わりや、状況なども読めてくる。
子供の頃のベラは、赤髪を持っていながらも、魔女の能力は発症していなかったのかもしれない。
だから、ある程度は受け入れられながらヒューゴやアーサー達と一緒にこのブランシュ村で一緒に育っていた。
――でも、今は違う。
魔女の能力を持ってしまったベラは、世間一般の価値観でもある
それなら、先ほど、私の目の前でおば様が……。
【昔は、この辺りでアーサーも含めた子供たちが、わいわい、楽しそうにはしゃいで駆け回っていてね。
ベラも、ヒューゴも仲が良かったのに、みんな、
と、物憂げな表情で言っていた意味も……。
ベラのことについて。
【村の中で、その名前は決して出さないようにお願いします】
と、言っていた意味も、朧気ながら色々と見えてきて、理解することが出来る。
そんな私を見て、ヒューゴが『あぁ、やっぱ……。これだけ情報が揃ったら、皇女様にも、分かっちまいますよねぇ』と、困惑したように顔をくしゃりと、歪ませたあとで……。
「ベラは今、ブランシュ村から少し離れた森の中に住んでるんです。
俺たちみたいに、アイツのことを大切に思ってる人間もいない訳じゃないが、やっぱり、大多数の村人達が、魔女に対して嫌悪感を持っちまって。
頭の中では昔馴染みの人間だって、分かっていても、拒絶反応が出てしまうのは
と、ヒューゴから、私が知りたかったベラさんの情報が詳しく返ってきて、そのことに息を呑んだあとで……。
「ヒューゴ、ベラさんは普通に生活することが出来ているんですか……?
もしも、そんな状況だったのなら、何か、不便に感じているようなことや、困ったこととか、あるんじゃ……?」
と、思わず、ベラさんについて、あれこれと心配してしまった。
魔女や赤を持っているというだけで、
偏見の目で見られてしまうようなことも、例えば、誰かから明確に差別されてしまって……。
満足に職業に就くようなことも、誰かから物を買ったりするようなことも、出来ない現状があるんじゃないかと、気にかけていると……。
「あぁ、どっかのお偉い人が、
ただ、ベラは、その能力を文字通り“買われて”るんでね。
頼まれりゃ、断ることも出来ずに、その命を削っていくしかないっ……!」
そうして、ほんの少し唇を震わせながら……。
憎々しげに、そう声に出すヒューゴの言葉が信じられなくて、私は思わず、ヒューゴの方を見つめながら……。
「……っ、ちょ、ちょっと待ってください……。
ヒューゴ、一体、それは、どういうことなんでしょうか……?
シュタインベルクで奴隷制度は、撤廃されている筈ですよね……?」
と、戸惑ったような声になるのを抑えきれずに口に出す。
もしかしたら、シュタインベルクで魔女を奴隷にしているようなことが横行しているのかと、問いかける私に。
「あぁ……。……っ、皇女様、コイツは、奴隷とかっていう話じゃないんです……っ!
あくまで、ベラが交わしてるのは“主従契約”。
書類を交わして、金銭や生きて行く為の物資を受け取る為に、能力を使うっていうことを“ただ”双方の合意の元、約束してる、だけなんで……。
“法”には、何ら抵触しないんです……っ!」
と……。
悔しそうな表情を浮かべた、ヒューゴが。
ぎりっと、唇を噛みしめた後で、そう教えてくれて、私は目を大きく開いたあとで……。
「……そんな……っ、!」
と、震えた声を出す。
法に抵触しないからといって。
魔女の命を極限まで削るように能力を使ってもらうという契約を交わすのは有りなんだろうか……?
周囲から差別されて、満足に物を買うことも出来ない立場も弱い魔女が、
確かに、以前、お父様からは上の立場に立つような人間ほど。
魔女の能力の有用性については理解していて、魔女のことを囲うようなこともある、と聞いてはいたけれど。
もしも、それが非人道的な扱いで魔女であるベラさんのことを利用しているのだとしたら、到底、見過ごせるような話じゃない。
ヒューゴの口ぶりだと、魔女であるベラさんと契約しているのは、この国の貴族であるのだけは間違いなくて……。
シュタインベルク国内で、法律の穴を掻い潜り、そんなことをしている人がいるということに、私は動揺を隠しきれなかった。
そうして、そこまで聞いて、私は一つの可能性に思い至る。
「……っ、ヒューゴ。もしかして、ベラさんの為に、黄金の薔薇から作った薬を……?」
私もそうだけど、能力で命が削られてしまっている魔女は、血を吐く頻度も必然的に多くなる。
ほんの少しでも、ベラさんの身体が楽になるように、ヒューゴが黄金の薔薇から薬を作ろうとしたのだとしたら、あれだけ一生懸命に頑張っていたのも……。
酒場で、どこか、切羽詰まったように、セオドアや私達に黄金の薔薇を探して欲しいと頼んできたことにも、納得することが出来る。
私の問いかけに、ヒューゴは悔しそうな表情を浮かべたまま、無言で押し黙ってしまった。
――それが、きっと、何よりの答えで……。
私は、咄嗟にアルの方へと視線を向ける。
「ねぇ、アル……」
何も言わないけれど、一瞬だけ交差したその視線で、アルとはお互いに言いたいことが通じ合って分かり合う。
「うむ……」
と、小さく言葉を出してくれたアルのその声は、いつもと違い、かなり真剣なもので。
私にアルが付いてくれているように、もしも、魔女であるベラさんと唯一の契約者となれる精霊さんがいるのだとしたら……。
一度、古の森にベラさんに付いて来て貰い、精霊さんと契約して貰った方が良いんじゃ無いか、という私の意図を正確に汲み取ってくれたのだろう。
「……その魔女の魂の具合がどういった状況なのか、一度、確認してみないと分からぬが、僕もお前の意見に賛成だ、アリス」
と、声に出してくれて、ホッとする。
私達のそんな様子を見ながら、話について行けなくてヒューゴは少し困惑した様子だったけれど……。
アルだけじゃなくて、必要な物資やお金を届ける方法など、どういう風にするのが一番良いのか考えることは私にも出来るし……。
魔女として、ベラさんが貴族の人と契約せずとも、何か役に立てるようなことがあるかもしれない。
だから……。
「ヒューゴ。……アルは、そういった方面の知識にもかなり詳しいんです。
それだけじゃなくて、生きるために必要な物資なども、貴族の人と契約しなくても手に入れるための方法とか。
きっと、何かお役に立てるようなことが、私にもあるかもしれません。
良かったら、一度、ベラさんに私達を会わせて貰えませんか?」
と、顔を上げて。
真っ直ぐにヒューゴの方へと視線を向けた後で、私は真剣に声を出した。