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第230話 雷の魔法



 目の前に存在する、この場を支配する絶対的な……。


 だったのか。


「……なん、だってんだよ……っ!」


 と、悪態をついた、私のほっぺたにナイフを当てるアンドリューのその手がぶれて、巻き戻す前と同じように私の頬を軽くピッとそれが掠めて皮膚が切れた感覚がする。


 自分からは見えていないけど、切り傷でほっぺたに血がじわっと滲み出てしまってるだろう。


 鋭利なもので切られたとき特有の、ほんの少し熱を持ったそこから、数秒後にジクジクとした痛みが広がってくる。


 その瞬間、この場を支配するアルの雰囲気が、更に怒りの感情をまとっているようなものになり。


 アルをおおう殺気のようなものが、“ぶわっ!” と、この場に広がっていくのを感じて私はびくりと身体を震わせた。


 恐怖からでも、驚いてびっくりしたからでもなく。


 ただ、生き物としての本能から反射的に。


【こんな風に怒っているアルのことを、初めて見たかもしれない】


 いつも明るくて、誰にだって良い意味で遠慮なんて欠片もなくて。


 怒る時は口を尖らせて、拗ねたようにほっぺたを膨らませたりするようなこともあるけれど。


 それでも普段から、何に対しても新鮮な表情を見せて楽しそうに笑っていることが大半の、アルが。


 今は、明確に……。


 ともすれば、人を一人、射殺してしまいそうなほどの、そんな雰囲気を纏っている。


 同じ鋭い瞳でも、セオドアとはまた違う……。


 アルの纏う冷淡な雰囲気はどこまでも厳かで、天使みたいなアルの顔つきも相まって。


 この場所自体に、まるで、この世のものとは思えないような、かのように神聖で不思議な雰囲気が漂っている。


「……嗚呼。

 もう一度言わぬと、その足りない頭では理解出来ないのだな?

 今すぐその汚い手を、僕の契約者唯一から離せ、と言っているんだ」


 アルの視線はずっと、私を捕まえたままのアンドリューの方へと向けられていて。


 見もしていない熊から、自分がかざしていたその手をふわっと退けると。


 熊はそのままぶるぶると震えながらも、その頭をゆっくりと下げて、まるで降伏するかのようにその場に伏せたような状態になる。


 瞬間、アルの手のひらから、何もない筈の空間に淡いオレンジ色の魔方陣のような紋様が浮き出てきて。


 アルの指先から、バチバチとした小さな雷のような物が発せられるのが見えた。


 そうして、アルが、その手を……。


 、私ごしにアンドリューへと向けてかざすと……。


 それだけで。


「……ひっ、っ!」


 という、誰かの怯えたような声が私の耳を通り過ぎた。


 それがサムの声だったのか、怪我をしている冒険者の声だったのか、咄嗟に私からは判断が出来ず。


 未だ、その腕の中に私をらえたままのアンドリューから


「……んだよ、……なんなんだよ……っ、コイツはっ……!

 ば、ばけものっ、じゃねぇ、か……っ! あぁ、っ、あ、あり得ねぇだろう、がよ……っ! ほっ、ほんとうにっ、人間かっ……!?」


 という焦りともとれるような声色が聞こえてくる。


 その際、私に向けられるナイフを持つ手に更に力が籠もったのが分かった。


 多分、ここで人質でもある私を逃がしてしまったら、自分に後はないと、本能的に察知したのかもしれない。


 でも、その対応は、きっと何から何まで。


 だった。


 アンドリューの方を見るアルの視線に、燃えるような熱が灯り。


 冷え切った視線から切り替わり、怒りの沸点を超えてしまったようなそんな危うさを私が感じた……。


 ――その刹那


 アルの手元、指先で遊ぶようにバチバチと空に浮かんでいた雷が、鋭い稲妻となって明確に此方へと向かって飛んでくるのが見えた。


「……ぐあッッ!」


 瞬間、それは私にナイフを向けていたアンドリューの腕だけを的確に貫いて。


 突然自身の身体を襲って流れた電流に痺れ、咄嗟のことで対応出来なかったアンドリューのその手から……。


 カランと、音を立てて、サバイバルナイフが下へと落ちていく。


 その際、アンドリューの腕を伝って、流れてきたのだろう、バチバチっとした電流が。


 プス、プスっ、と音を鳴らして……。

 鉄製てつせいのナイフを焦がしながら、落ちた地面の上で不規則な跳ね方をしていた。


「僕は今、と言った筈だぞ」


 そうして、アンドリューがアルの魔法で稲妻を浴びて耐えきれずに、その場にうずくまったことで。


 さっきまで、図らずも、能力の反動で使えなくなってしまった自分の身体を支えていたアンドリューの手から解放され……。


 稲妻が此方に向かってやってきた風圧で、自分の被っていたフードが脱げ、前髪がはらりと、風になびいて揺れるのを感じながら。


 その場でよろけたあと、転けそうになるのを必死で堪えつつ、なんとかその場に自分の足で立ってから、私はアルに視線を向けた。


 その表情は、さっき上がった熱気を今は失っているかのように。


 どこまでも無表情になりながらも、ただ冷酷さを帯びながら……。


 蹲ったアンドリューに向けて、更に追撃の手を緩めることなく、立て続けに雷撃をその身体へと浴びせていく。


「……っう゛……ぐぅっ!」


「あ、アルフレッド様……っ……?」


 ――ごくり、とその場で息を呑んだのは誰だったのだろう……?


 ヒューゴがまるで信じられない物を見るかのように、アルのことを見ていて、呆然としたように呼びかけるその声を聞きながら。


 私は、アルを真っ直ぐ見た上で。


 能力の反動で、思うように動かない身体に鞭を打って、アルの方へと進んだあとで。


 そっと、アンドリューに向けていたアルの手のひらを、上からぎゅっと握りしめた。


 ……瞬間、バチっとした静電気よりも何倍も強い電流が自分の手のひらを通して身体を伝ってくる。


 能力の反動で息切れが酷くて『ハァっ、……ハァ……っ』と、荒い呼吸を繰り返しながらも。


 今は私のことで怒ってくれて、冷静さを失っているアルをこの場に引き戻そうと必死になりながら。


「あ……、るっ! あり、がと……っ、!

 もう、だいじょ、ぶっ! ……もう、やめて、いいよ……っ!

 私な、ら、だいじょう、! ……だ、から、……ほらっ、……ね?」


 と、アルと、しっかりと目を合わせたあとで


 ――どこも、問題ないでしょう?


 と、自分の胸を押さえつつ、なるべく穏やかな口調で、言い聞かせるようにアルへと、なんとかそう伝えれば。


 此方を見たアルの……。


 私と目が合ったアルの……。


 冷たいその視線が、急速に、いつも通りに温かな色あいを取り戻していくのが私からも確認出来た。


 そのことに一先ず、ホッとする。


「……っ、アリスっ! すまないっ、大丈夫かっ!」


 そうして、落ち着きを取り戻したアルの方から、心配したように私に向かって声を出してくれて。


 ふらっとよろけた私を、私よりも少し背の高いアルが自分の身体も使って全身で受け止めてくれれば。


 その手のひらにはもう、さっきまでの雷のようなバチバチとした魔法はどこにもなくて安心する。


 その代わり、以前、私が能力の練習をしたあとでアルが癒やしの魔法を使ってくれた時のように、何か暖かい波動のようなものをかけてくれたのが体感で分かった。


 胸の辺りからじんわりと広がったその優しい魔法に、能力の反動で襲ってきた頭痛と吐き気もマシになり、重たかった身体が少しだけ、ふわっと軽くなるような感覚がする。


 それから、アルの癒やしの魔法のお蔭で、口から、またこぽりと、溢れ落ちる血を受け止めたあとで、顔をあげ。


 サムに気を取られてしまって、私がアンドリューに捕まらなかったら、こんなことには、なっていなかったかもしれないと……。


「……うんっ、だいじょ、うぶ……私の、せいで……ごめっ、ね」


 アルに、申し訳なくなりながら、謝罪すれば。


「……っ! いやっ。

 こんなことになるくらいなら、“”に合わせて僕の力を出し惜しみするんじゃなかったっ!

 一瞬の判断が命取りになるというのに、全ての対応が後手に回ってしまった」


 と、アルからも謝られてしまった。


 その言葉に、私はふるりと首を横に振ってそれを否定する。


 アルが魔法を極力使わないでいてくれたのは、周囲に自分が人間ではないとバレてしまったときに、人が営む生活では“”大問題に発展する可能性があったからだし。


 寧ろ、ここまで人間の勝手な都合に合わせて。

 自分の魔法が人に見られては拙いことになるかもしれないと、私達のことも含めて考えて動いてくれていたアルに……。


 感謝の気持ちはあれど、その行動を非難するなんてことはとんでもない話だった。


「ううん、アルの所為じゃない、よ……っ、ありがとう」


 ふわっと笑みを溢したあとで、アルの表情を見ながらも、そう伝えれば。


「……お二方、とも、お話中っ、本当に申し訳ないんですけど。

 えーっとぉ、そのぉっ……こ、この状況、一体、ど、どうしましょうかねぇ?」


 と、ヒューゴから声がかかって、私達は揃ってお互いを見ていたその視線をこの場に向けた。


 サムは、あまりのことに驚いて、その場で腰を抜かしていて……。


 怪我をしていた冒険者は洞窟内の壁に寄りかかったまま、信じられない物を見るような目つきでアルのことを見ていて。


 それからアンドリューが、アルに雷撃を受けて、地面に倒れたまま、ひゅぅ、ひゅぅと荒い呼吸を繰り返しながらも。


 ぎりっと唇を噛みしめたあとで、此方のことを睨み付けているのが見えた。


「……く、しょうっ! その、赤色の髪っ、て、めぇっ……この国のっ、皇女、かっ?」


 そうして、憎々しげに放たれたその言葉に、私は思わず、きょとんとしてしまう。


 そこで、そういえば、今さっき自分のフードが脱げて。


 暗い洞窟内の中でも、ヒューゴが持ってくれている懐中電灯の灯りで私自身の髪色が確認出来るようになっていたんだという事に気付く。


 でも、ここに来るまでにも、セオドアには“姫さん”って呼ばれていたし。


 ヒューゴにも、“皇女様”って呼ばれていた気がするんだけど……。


 今さら、気付いたんだろうか……?


 この人は一体、私のことを、何だと思ってたんだろう……?


「……っ、あなたには、シュタインベルク、の法にっ、基づきっ、きちんとした裁きが……これから、待っている筈、です。

 しっかり、と……っ、その、罪を、償って……くださいっ」


 未だ、私も能力の反動で本調子じゃないながらも“キッ……”と。


 自分の中で、今できるだけ、可能な限り視線を鋭くして、アンドリューの方へと声をかける。


 私がそう言えば


「あぁっ、洞窟内で故意に人間に向けて罠を使っただけじゃねぇっ!

 この国のお姫様にナイフを向けたんだからなっ! その罪が免れることは無いと思えよっ!」


 と、ヒューゴが声を出してくれた。


 それを聞いたアンドリューが、苛立った様子を抑えきれない様子で。


「クソやろうがっ! 初めっから皇女だって、分かってたらっ!

 そもそもっ、手なんか出してねぇよっ! せっかく、お綺麗な顔してやがるから、っ……俺がっ、有効活用してやろうと……思っただけ、でっ!」


 と、此方に向かって吠えるような声を出してくる。


 その言葉の意味が直ぐには察することが出来なくて困惑する私とは反対に。

 ヒューゴはアンドリューの言葉だけで、それが何を意味するものなのか、直ぐに理解出来たみたいで。


 その顔色をサッと変えたのが分かった。


「有効活用って、お前っ、まさかっ、皇女様のことを誘拐して他国にでも売りつけようと思ったんじゃねぇよなっ!」


 そうして、怒ったように、アンドリューに向かってそう言ってくれるヒューゴに。


【わっ、私っ、危うく、売られてしまいそうだったの……?】


 と、内心で思っていたら……。


 図星だったのかアンドリューがその口を閉じるのが見えた。


 “目は口ほどにものを言う”という、ことわざがあるけれど、本当にその通りで。


 そこで、アンドリューの目的が私だったのだと、明確に理解出来たけれど。


 ここで自白しないところが、いやらしいな、と思う。


 私を誘拐する目的だったと、素直に認めてしまえば……。


 当然、今自分が犯した罪である危険物の取り扱いについての罪と、私をナイフで攻撃してきた罪に加えて、誘拐未遂の罪に対する罰を受けなければいけなくなってしまうから、黙秘することにしたのだろう。


「……んなもん、テメェ等の勝手な想像だろうがっ」


 そうして、此方に向かって悪態をついてくるアンドリューのその姿を見て。


 アルが私に『アリス、一人で立てそうか?』と優しく声をかけてくれたあとで。


 こくりと頷いた私から、そっと手を離したあとで……。


 アンドリューの近くにあったナイフを拾い上げ、地面にうつ伏せになって倒れているアンドリューのほっぺた擦れ擦れの所にザクっと、そのナイフを突き立てたのが見えた。


「うむ、まだこのように、喋れる元気があったとはな。

 今度はお前のその口ごと、地面と縫い付けて喋れぬようにしてやろうか?」


 そうして、アルの冷たい一言で、荒い息を溢しながらも此方を睨み付けてくることしか出来ないアンドリューを見つつ。


 ヒューゴが口笛を鳴らしながら『……ひえー、おっかねぇっ』と声を上げる。


 その言葉とは裏腹に、まるで『よくやった』と褒め称えんばかりの声色を出すヒューゴに意識を向けるよりも前に……。


 アルのその行動が、まるでアルらしく無くて、私は首を傾げる。


「……アル……?」


 そうして、名前を呼んで問いかければ……。


「うむ、セオドアが、言っても聞かない奴に対する幾つかのパターン別に分かれた“対処法”を僕に教えてくれたのでなっ!」


 ――こういう時は、こうするのが正解なのであろう?


 と、にこやかに此方に向かって純粋な笑顔を向けてくる、アルに。


【……あぁ、なるほどっ。セオドアの直伝だったんだ……っ】


 と、納得しながら。


「そうだったんだね……!

 私もこんど、セオドアに護身術、とか。……ちゃんとしたものっ、習おうと思ってるよ……っ」


 と、声をかける。


 以前から、セオドアに簡単に武術というか、戦う術を習おうとは私自身思っていて。


 魔女の能力を使用した後に反動で動けなくなるのは、かなりのデメリットだし。


 セオドアに簡単な護身術とかを習っておけば、今回みたいにアンドリューに腕を掴まれて拘束されてしまうようなことが、もし、万が一別の機会で訪れた時には、対処出来るかもしれない。


 私達のそんな、ふわふわとした遣り取りに。


「いや、なんつぅかっ! お二人ともっ! 何かが決定的に間違ってますってっ!

 皇女様っ、そこは護衛の兄さんに自分も護身術を習いたいと思っているとかじゃなくて、アルフレッド様の言動に突っ込みを入れるところでしょっ!」


 と、ヒューゴから呆れたような否定が入ってしまった。


 そこで、セオドアの名前がアルの口からから出たからという訳じゃなかったのだけど。


 セオドアとお兄さまが、今も熊たちと戦っていることを思えば、いつまでもこの場所でこうしている訳にはいかない、と。


 私はアルとヒューゴに、“どうしよう?”と窺うように視線を向ける。


「うむ、今は戻ってセオドア達に物資を届けることの方が先決だ。

 やむを得ぬな、この男は此処に置いていこう。……ヒューゴ、怪我人を抱えてくれ」


 そうして、私の問いかけるような視線を直ぐに察知して、アルがこの場で的確な状況判断をしてくれた。


 ヒューゴは、怪我人を抱えてくれているし、私では誰も運べない。


 アルが何か魔法を使ってくれれば、アンドリューを運ぶことも出来るかもしれないけど。


 さっきまでの遣り取りで『到底、助けてあげよう』と思うような気分にはなれない、というのは恐らく此処にいるアンドリュー以外の人間の総意だったと思う。


「おおうっ、アルフレッド様、そっ、そのお歳で、その判断は正気ですかい……?

 いやっ、コイツの今までの事を考えたら、俺もその案には正直言って大賛成ですがっ!」


「うむ、どちらにせよ、6つ目の洞窟小屋まではそこまで遠くない。

 事情を話して、人を呼び、この男のことはどこかに捕まえて貰っていた方がいいだろう」


 アルとヒューゴの遣り取りを聞きながら、私はアルのお蔭で一人で歩けるくらいには何とか回復した自分の身体に鞭を打ちつつ。


「……サム、立てますか?」


 と、未だ腰を抜かしている様子のサムの方へと声をかける。


「……はっ、はいっ……! な、なんとか……」


「うわっ……! 生まれたての子鹿みたいになってやがる」


 茫然自失という感じで、ぼーっとしていたサムが。


 私の声かけでブルブルと震えつつも、必死でその場に立ったのを見ながら、ヒューゴが冗談ともとれるような言葉を投げかけたあとで。


「うむ、熊よっ、驚かせてすまなかったな。

 僕の“気”にやられて怖がらせてしまったみたいだ。……お前にそのような手荒な真似をするつもりはなかったのだ、許してくれ。

 お前の母も仲間も、無事だ、安心するがい」


 と、アルが熊さんに向かって声をかけているのが聞こえてきた。


 すっかり、アルの雰囲気にあてられて大人しくなってしまった熊に、人間の勝手で本当に申し訳ないことをしたな、と思いながら……。


 ごめんね、という気持ちを込めて、せめてものお詫びにと、私はリュックの中からアルが作ってくれた特製の団子をそっと手のひらにのせて熊さんの目の前に差し出した。


 少し悩んだような素振りを見せたものの、私の手からそれを受け取って食べてくれた熊さんは……。


 暫くして、私の身体にその頭を甘えるように擦りつけたあとで、私達に付いてきてくれるみたいだった。


「……もしかして、一緒に来てくれるの?」


 急遽、仲間に加わった熊さんに、驚きながらそう聞くと。


「うむ、アリス、どうやら懐かれたみたいだなっ!

 どっちみち、僕達の行き先は6つ目の洞窟小屋に戻ったあとは、またセオドア達の方へ行くつもりだし、この子も一緒に連れて行こう」


 と、アルが声をかけてくれた。


 それから、ヒューゴが怪我人である冒険者の人を担ぎ直してくれたあとで。


「こ、皇女様……! そのっ、お身体は大丈夫、ですかいっ!?」


 と、此方に向かって声を出してくれたことに。


 もしかして、私がいきなり血を吐いたから心配してくれているのかな……?


 それとも、ほっぺたをヒューゴに切られてちょっと血が出てしまったことを言ってくれているのかな?


 などと、頭の中で色々と考えてから……。


「はい、大丈夫っ、です。……心配して声をかけてくれて、ありがとうございます」


 と、私はこくりと頷いて、ヒューゴに安心して貰えるよう、ふわっと笑いかけた。


 そうして、私達は……。


 動けなくなったアンドリューと、何かあった時に危険だからという理由で、温情としてサバイバルナイフだけをその場に残して。


 一先ず6つ目の洞窟小屋に戻るために前に進むことにした。


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